「DJ MAG」の人気投票でハードウェルやデヴィッド・ゲッタを抑えて、今年も1位を獲得。2016年、当時二十歳と言う史上最年少で初めて首位を獲得して以来、なんと3年連続の栄冠に輝いた。今世界中のダンスミュージック・ファンが熱狂するDJ、それがマーティン・ギャリックスだ。

そんな彼が今年11月1日にニューヨーク出身58歳のストリート・ミュージシャン、マイク・ヤングをフィーチャリング・ボーカルに迎えた新曲“ドリーマー”を発表。無名かつ、マーティンにとっては祖父ほど年齢の離れたボーカリストとのコラボが大いに話題になった。

Martin Garrix feat. Mike Yung – Dreamer (Official Video)

マイク・ヤングはニューヨークの地下鉄構内でストリート・パフォーマーとして38年間生計を立ててきたというソウルシンガー。80年代にはソウル系レコード会社〈T Electric〉エタ・ジェームスやルーサー・ヴァンドロスも在籍)との契約もあったが、その後、レーベルをたらい回しにされるなど成功には結びつかなかった。その後はギャングからの襲撃、9度にわたる傷害事件に遇うなど苦難が続く。それでもいつかデビュー・アルバムをリリースするという夢を追いかけて歌い続けてきた。

その活動をネットを通じて知り、感銘を受けたマーティン。今年の夏、マイクを地元アムステルダムに招待し、マーティンにとっても新境地であるソウルフルなアンセム“ドリーマー”を共作した。「信じることがある限り、夢を諦めずに進もう」というメッセージは、マイクの人生とその歌声から滲み出たもの。加えて、今年、マイクは最愛の妻を亡くしたそうで、亡き妻へのトリビュート・ソングであることも明かしている。

普遍的でポジティヴなポップソングとして感動を与えるこのナンバーで新境地を開いたマーティン・ギャリックス。数々のビッグヒットを放ってきた若きセレブリティだが、マーティンの名前と曲が一致していない人も、ダンスミュージック・ファン以外には案外いるのでは? というわけで、改めて彼の凄さを検証してみたい。

そもそもマーティン・ギャリックスってどう凄いの?
タダモノではない5つの理由

POINT1
世界No.1DJ人気投票3年連続1位

世界最大級のダンスミュージック・メディア「DJ MAG」が毎年開催する「世界の人気DJランキング」。このメディアは1991年から毎月発行されているイギリスの人気クラブ・DJ専門誌。世界10カ国以上で翻訳・出版され、WEBサイトもダンスミュージック・ファンには高い評価と信頼を得ている。この「世界の人気DJランキング」はリスナーの投票、実績、活動を元に算出され、選出されることは世界中のDJにとってもっとも名誉なアワードだ。このランキングでマーティンは2016年に当時二十歳という若さで史上最年少首位を獲得し、翌年、そして今年も1位を獲得、3年連続No.1の地位を堅持している。

その人気の理由の一つは真骨頂であるライブプロダクションのオリジナリティと豪華さだろう。この秋、話題になったマイク・シノダ(リンキン・パーク)との異色コラボを果たした“ウェイティング・フォー・トゥモロー”リリース直後の週末には、地元アムステルダムでビッグな凱旋ライブを開催。LEDスクリーンや花火、炎などの特効、天井に吊るされたLEDパネルや可動式ライティングなどを駆使したショーは巨大アミューズメントパークに引けを取らないスケール感なのだから。

POINT2
平昌オリンピックでパフォーマンスした世界的DJ

オリンピックの開会式や閉会式でパフォーマンスするアーティストには、世界的な認知度や時代性が求められるが、マーティンは今年2月に韓国・平昌で開催された第23回冬季五輪平昌大会閉会式でフィナーレを飾るDJに大抜擢。彼が尊敬し、DJを志したきっかけになったティエストをはじめ、二人目はカイゴ、そしてマーティンと、オリンピックでパフォーマンスしたDJはまだ3人しかいない。

POINT3
デュア・リパからストリートシンガーまで、多岐にわたるアーティストとのコラボレーション

17歳で発表し、全英チャート&米ビルボード・ダンス・クラブ・ソングスチャートで1位を獲得した“アニマルズ”やティエストと共作した“ジ・オンリー・ウェイ・イズ・アップ”、代表曲“ピザ”や今年リリースした“グリッチ”などコア向けのダンス・トラックと、ボーカリストをフィーチャーしたポップ・トラックをバランス良く作り出すのもマーティンの魅力だ。

Martin Garrix – Animals [Official Video]

Martin Garrix – Pizza (Official Video)

多岐にわたるコラボレーションは著名なところで言うとアッシャーに始まり、ビービー・レクサ、デュア・リパ、トロイ・シヴァン、デヴィッド・ゲッタ、そしてジャンルの垣根をこえ、ロックシーンからリンキン・パークのマイク・シノダを迎えている。いずれもボーカリストの魅力を前面に出しつつ、エレクトロダンスミュージックのサウンドやアレンジと見事に融合させ、中毒性の高いポップチューンに昇華。ドラマティックな“イン・ザ・ネーム・オブ・ラブwith ビービー・レクサ”や“スケアード・トゥ・ビー・ロンリー with デュア・リパ”、“ゼア・フォー・ユー with トロイ・シヴァン”など、EDM以降のポップスへのヒントも多大だ。

Martin Garrix & Bebe Rexha – In The Name Of Love (Official Video)

Martin Garrix & Troye Sivan – There For You (Official Video)

POINT4
レーベル〈STMPD RCRDS〉を主宰。若い才能をフックアップ

2016年には19歳の若さで自身のレーベル〈STMPD RCRDS〉も設立。マーティン含むスタッフがストリーミング・サービスやインターネットで無名アーティストを発掘し、フックアップしているのは、何よりアーティストが自由な表現を試す場を作りたいからだとか。マティッス&サドコやルーパーズなど、マーティンと実際にコラボしているアーティストや、フューチャーベースやダブステップを組み合わせたアムステルダムの若手トッド・ヘルダーら、EDMにこだわらず、ユニークな存在を続々輩出している。自身がアーティストであること、ジャンルを超えてフレッシュな音楽を発信したいという意思、そしてどこよりもDJ大国であるオランダという出自も関係しているのだろう。早い時期から自分以外にも視野を向けてきたマーティンの音楽愛が感じられる。

POINT5
アルマーニ・エクスチェンジのモデルにも抜擢されるイケメンぶり

ライブや普段の写真を見ると自然体のカジュアルで、そこも好感を持たれる一因か?と思われるマーティン。セレブっぽさのないところが逆に新鮮なのか、A|Xアルマーニ エクスチェンジの2017秋冬キャンペーンモデルにブランドのスピリッツである「新しいエネルギー」を表現する3名のうちの一人として、カーラ・デルヴィーニュ、リー・イーフォンとともに抜擢。2018年の春夏キャンペーンでも継続起用された。

そんなマーティンに独占インタビュー! “ドリーマー”制作の経緯とマイクとのレコーディングについて、またマーティンにとっての2018年についてお伺いをしました。

Interview:マーティン・ギャリックス

独占インタビュー|世界No.1DJ、マーティン・ギャリックスが凄い5つのワケを検証 dj-martin-garrix_01-1200x1799

——マイク・ヤングの動画は何をきっかけに発見したんですか?

実はInstagramで見つけたんだ。動画を見て瞬時に、彼の素晴らしい歌声に圧倒されたよ。

——ニューヨークの地下鉄構内で歌う彼のレパートリーは往年のソウルでしたが、マイクの歌の何に「恋に落ちた」のでしょう?

とにかくピュアで、ソウルフルな歌声だと感じたんだ。最近の音楽では、そんな歌声にはなかなか出会えないよ。それに加え、彼は自分の音楽を通して、物語を伝える方法も知っている。

——フィーチャリング・ボーカリストとして、60間近で無名のマイクと新曲を作ろうと思った最大の理由は?

僕にとって、アーティストが有名かどうかは全く関係ないんだ。マイクは本当に素晴らしい声の持ち主で、彼ともとても息が合った。それが何よりも大切だと感じるんだ。

——マイクへオファーした際の彼の反応はどんなものだったのでしょう?あなたの音楽のことは知っていましたか?

彼は僕が誰だかも知らなかったよ(笑)。

——“ドリーマー”の歌詞はマイクの亡きパートナーと夢を追い続ける人へ捧げる内容とのことですが、実際にはどうのように書いて行ったのでしょうか。

マイクがアムステルダムに来てくれて、一緒にボートをレンタルした。僕はギターを持っていて、とりあえず一緒にセッションを始めたんだ。その日、一緒に5曲書いたんだけど、そのうちの一曲が“ドリーマー”だったんだ。

——あなたの作るボーカル曲の系譜にある曲だと思いますが、マイクのボーカルを意識した上で、作曲、アレンジにおいてこの曲がスペシャルなものになるように気を配ったところは?

この曲においてはマイクのボーカルが一番大事な要素だったから、それが最も前面に出る必要があった。それに加えて、ゴスペルのコーラス隊を入れて、曲をさらに立体的に仕上げていったよ。

——静謐なストリングス、ゴスペル的なコーラス、ソウルフルなマイクのボーカルを前面に押し出した全体像はすぐあなたの中で生まれたイメージ?

もちろん曲を作り始めた時にはイメージはある程度あったけど、時間と共にそのイメージも成長していくんだよね。やりながら新しいことを試してみたり、少し変化を加えてみたりしたかな。

——曲作りや歌詞を書く上で、マイクとどんな話をしましたか?

本当に自然とセッションを始めて、曲を書いて、話していったよ。

——一週間一緒に過ごして曲を作るというのは、データのやり取りが主流の時代にあって、密な作り方です。この方法をとった理由は?

誰かと一緒に面と向かって曲を作るというのは本当に素晴らしい体験だから。ただ一人でスタジオに籠りっきりなのとは、まったく違う体験だよ。レコーディングは、僕のスタジオ、「STMPD レコーディング・スタジオ」でレコーディングを行ったんだ。ボートで曲を書いて、コーラスにゴスペルを入れたよ。

——マイクの話や人柄で印象的だったこと、影響されたことは?

マイクは本当にスペシャルな人間で、美しい心の持ち主だと感じた。彼と一緒に曲を作って、彼のストーリーをどんどん知っていくこと自体が、僕にとって最大のインスピレーションになっているよ。

——この曲に込めたメッセージをお願いします。

信念を持っている限り、前に進める、そのまま続けられるんだよ、というメッセージだね。この曲はマイク自身の物語を語っている楽曲なんだ。マイクは、常に自分の夢を信じてきたからこそ、ずっとそれに向かって進んできたという人の、完璧な例だよ。

——“ドリーマー”でもしあなたの音楽家としての新境地が開けたとしたら、どんな面だと思いますか?

確実に新しい一面が開けたと思うよ。僕にとっては新しいサウンドだから、最初は皆それに慣れるのに時間かかったかもしれないね。

——今後、ライブでマイクとの共演の予定はありますか?

曲は幾つか書いたから、いつかもしかするとあるかもね!

——今も無名の素晴らしいボーカリストを探していますか?

常に探しているよ!

——「DJ MAG」にて3年連続世界No.1DJに選出された感想は?

本当に光栄なことだと思う。僕は、ランクインしている他のアーティストと同等だなんて、絶対思わないからね。ファンからのサポートに本当に感謝しているよ。

——あなたのレーベル〈STMPD〉では、新人アーティストを盛んにフックアップしていますが、その理由は?

音楽に興味があると、新しい才能に偶然に出会うことが多くなるよね。そして、STMPDの僕のチームは本当に素晴らしくて、デモ音源を聴いたりしているよ。

——今年10月には5日連続新曲リリースで、各々異なるカラーの曲を届けてくれましたが、次の一手はアルバムという形態になるのでしょうか?

アルバムは絶対リリースしたいと思うね。でも、リリースするなら完璧にしたいな。

——エレクトロニック・ダンスミュージックは今やあらゆるジャンルの中で時代のスタンダードとして取り入れられていますが、次にくるダンスミュージックの傾向をあなたはどう予測していますか?

音楽は常に予想がつかなくて、それが音楽の良いところでもあるよね。今日トレンドとされているものが、来月はそれがもう消えているかもしれない。

——楽曲のポピュラリティはもちろん最先端の演出を行い、大観衆を盛り上げるあなたですが、今年チャレンジしたショート言えば?

僕たちは常にライヴのプロダクションで新しい技術を取り入れたり、更に拡大させたりしているんだ。今年の<Amsterdam Dance Event>では、僕の新しいショー<アニマ>のプレミアを行った。これは僕のキャリア史上最も規模の大きいライヴ・プロダクションで、ショー自体にも完成されたストーリーがあるんだ。

——10代でデビューして約7年。どんな時間を経験してきていると思いますか?

初めて楽曲をリリースした時から、目まぐるしく色々なことが起きたよ。世界中を旅して、様々な文化を体験して、各地で新しい人にたくさん出会うことができて、本当に恵まれていると思う。

——最後に日本のファンにメッセージをお願いします。

日本の皆さんいつもサポートをしてくれてありがとう! また近々会えることを願っているよ!

音楽や人に対するピュアでフラットなスタンスが伺える、マーティンの言葉。彼がこれから創造するダンスミュージックに、新たな表現を期待せずにいられない。いや、もしくは大きな意味でそれはエレクトロダンスミュージックという形容すら越える現代のスタンダードと言うべきものなのかも。

オフィシャルサイト

Dreamer(Remix vol.2)