【インタビュー】DJ HASEBE×TOKYO HEALTH CLUB 意外な組み合わせの2組がコラボできた理由とは? interview160809_djhasebethc_10

――HASEBEさんもTHCも、ヒップホップに軸足を置きながらもジャンル越えた音楽性を感じます。

SIKK-O 今までヒップホップを聴いてなかったからかなぁ……(笑)。

TSUBAME そうだね(笑)。僕はYMOとか電気グルーヴとか、ちょっと最近で言うとEd Banger周りとかのエレクトロとかの四つ打ちばっかり聴いていたし。

DULLBOY 僕は大学2年の時にスチャダラパーの『偶然のアルバム』を聴くまでは、そこまで音楽に対して意識的ではなかったです。そこから90年代のヒップホップを掘ったりしていた時期もあったんですけど、すぐに飽きちゃって。それからTHCでラップを始めるぞってなるまでは、特に何も聴いてなかったな。

JYAJIE 友達の部屋に遊びに行くと多かれ少なかれCDって置いてありますけど、DULLBOYの部屋には一切ないですからね(笑)。

DULLBOY 自分達と、自分達の友達のCDしかない……。

SIKK-O それだって、もらえるからあるだけでしょ(笑)。

JYAJIE 僕はもともとバンドをやったりDJをやったりしていて、和洋問わず色んな音楽を聴くんで、特別ヒップホップだけが好きというよりも、今たまたまラップグループをやっているという感覚に近いんですよ(笑)。

SIKK-O 僕は学生の頃はバンドのライブばかり行っていて、ヒップホップはダサいと思っていたんです。ただYouTubeを通して改めてラップを聴くようになってからは、歌詞の面白さも含めて興味を持つようになりました。で、それから自分でもラップをやるようになるんですけど、DULLBOYじゃないけど自分でやったらやったで飽きてきちゃったりもして(笑)。純粋に音楽として良いものを考えた時に、どうしてもSMAPや宇多田ヒカル、西野カナが圧倒的にすごいと感じてしまうんです。宇多田ヒカルの“Kiss & Cry”とかを聴いちゃうと、自分にはこんなヤバいリリックは書けないし、『ラップとか聴いてる場合じゃねーな・・・』とか思っちゃうんですよ(笑)。

DJ HASEBE でも僕も数あるDJの中で一番飽き症だと言えるくらい、すぐに飽きちゃうタイプなんだよ。まずディグってことを全くしないし(笑)。一つ好きなものを見つけると瞬発的に調べたりはするんだけど、すぐに飽きてしばらく何も聴かなくなる。1~2年に一度くらいはしっかり音楽を聴きたいモードになるだけどね。

JYAJIE でもDJという仕事上、音楽は毎日耳にするんですよね?

DJ HASEBE もちろん聴くことは聴くんだけどね。でも最近はレギュラーイベントをやっていなくて、呼んでくれた人達に求められていることに忠実なプレイをするから、DJをするために新しく音楽を聴くという感じではないんだよ。作る方としても、自分の手法にすぐ飽きちゃうから新しい方法を試してみたりするんだけど、大抵なんの注目も浴びずに終わる(笑)。ただ最近は割と自分のスタイルがしっくりきているので、今のうちにできることは色々やっておこうと思っているんだけど。僕はもともとダンサーで、黒人になりたかったのね。でもやっぱり黒人にはなれないということに気づいて(笑)、それからDJとして頑張ってきたんだけど、自分の意識の中ではラップシーンとは距離を置いているつもりなの。ジャンルとかシーンどうこうよりも、まずDJとしてどう目立つかということを考えているから。

――“DJ HASEBEと言えばヒップホップやR&B”という見られ方をすることも多いと思うのですが、HASEBEさん自身はそれが本意ではない部分もあるのですね。

DJ HASEBE 2000年ぐらいから、そこの評価だけで見られるのが嫌な時期はありましたね。自分名義でアルバムをリリースするときはそこに反発するように、ダンスミュージックではない音楽誌の取材を取ってもらうようにしたりしていました。とはいえ結果的に掲載されるのはヒップホップ誌が多かったりして、自分がイメージしているリスナーがいる方向にアプローチできていなかったんですけど(笑)。でもその気持ちは今でもあって、自分が好きなもの、表現したいものがヒップホップだけにあるわけではないので、今国内で進んでいるヒップホップシーンやラップシーンといったものの中に特化していたくないと思っています。現行のアメリカのメインストリームヒップホップとかは全然聴いていないですしね。

SIKK-O ここにいる人みんなヒップホップを知らないんですね……(笑)。

JYAJIE 今回HASEBEさんバージョンの“Last Summer”ができると聞いたとき、どんなものに仕上がるのか全く想像もつかなかったんです。でもあがったものを聴いてすごくハマったというか、リリースされる7インチも両A面といえるような強度があるものを作っていただいたと感じました。それはヒップホップに固執しない、音楽性豊かなHASEBEさんのスタイルがあったからだと思います。

――この『SUNSET BREEZE』の収録曲を見渡すと、細分化された各ジャンルというよりも“インディーミュージック”としての一つの潮流が表現されているように思いますが、THCはそこの流れを意識することはありますか?

TSUBAME 僕らは天の邪鬼なので、常に“今っぽいものは嫌だ”という気持ちで、あえて今っぽくない90年代のヒップホップを意識して『VIBRATION』を作ったところはありますね。

JYAJIE メインストリームの“今”としてはトラップとかだと思うけど、結果としてその90年代っぽい流れも、もう一つの“今”になりつつある感はあるよね。

SIKK-O 確かに、両軸感はあるね。

TSUBAME “サブ”ってものが無くなってきているのが今なのかもね。こっちはこっちでメイン、あっちはあっちでメインというような、人によって捉え方が全然違う感じ。

DJ HASEBE 今そこまで大きく幅を利かせているものがないからというのもあるよ。

TSUBAME そうなんですよ。どれもメインと言えるし、逆に言えば本当の意味でのメインがないとも言えますよね。USならカニエ・ウェストなんかがメインと言えるんでしょうけど、今の日本にはそれがないかも。

SIKK-O 何をやってもどこかにはハマる状況とも言えるよね。だから皆、変に意識し過ぎず自分たちがやりたいことを普通にやればいいんですよ(笑)。

DULLBOY でも聴いてくれている人のことを全く意識しないというのは嫌だという気持ちもあるよね。HASEBEさんもさっき、DJとして呼ばれる時は求められているものに忠実にやるとおっしゃっていましたけど、その気持ちは多かれ少なかれ僕らにもあります。やりたいことはやりながらも、リスナーのことを置いてけぼりにするようなことはしたくないんです。

DJ HASEBE 受け手側が求めているものが見えているんだったら、それを出発点としてどう新鮮さを加えていくかを考えることはクリエイティヴだと思うよ。それがないなら家で自分で聴くためだけにやっていればいいんだから。自分の好きなこと、その時やりたいことと、リスナーの求めるものの距離感を意識することはこれから先も絶対に大切なことだと思うな。

JYAJIE それがちょうどよく大衆にハマるといいんですけどね(笑)。

DJ HASEBE THCはヒップホップ好きはもちろん、このMIXに入っているようなバンドのファンも好きになる要素が充分にあると思うし、これからどんどんフェスなんかにも呼ばれて、シーンを越えてたくさんのファンを獲得していくんじゃないかな?

TSUBAME 僕らはまだヒップホップシーンに認められたいという気持ちがあるので、まずはそこからですね(笑)。
DJ HASEBE でもどうせ、いざそのシーンに入っちゃったら飽きちゃうんでしょ(笑)。

SIKKO-O まだ全然入れていないので、とりあえず一回ヤらせてほしいです(笑)。

DULLBOY そうだね、まずは先っぽだけでいいから(笑)。

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RELEASE INFORMATION

Sunset Breeze -with Soothing Guitar Songs- mixed by DJ HASEBE

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2016.08.10(水)
¥2,376(+tax)
Manhattan Recordings

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TOKYO HEALTH CLUB/LAST SUMMER(7INCH)

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2016.08.12(金)
¥2,000(+tax)
LEXINGTON

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