――個人的な好みを抜きにしてフラットに考えても、堂島さんとA.C.E.の皆さんの音楽は、人に安心して勧められる音楽なんですよね。
堂島:あぁ、それは嬉しい! それがすごく大事でA.C.E.のライブ自体もそういう空気が漂ってるんですよ。お客さんが安心しているというか。それはたぶん、僕がエンターテイメントというものであろうとしているから、ということもあって。そこに3人がすごく力を貸してくれているという部分があってですね。だから、おそらく10年、15年前では僕自身もA.C.E.を出来ていない。自分のことで精いっぱいだし、どちらかというと「俺はやれている!」という風に見せたがるというか。今はやれてないことも面白いという感じになっちゃっていて(笑)。
一同:爆笑
堂島:歌えないって言ってるのに歌わせたり。
小松:ボクシングだと、相手に比較的パンチを打たせて、倒れないから大丈夫みたいなね(笑)。今はガードを下げて、このぐらい大丈夫だろうと。
堂島:そうそう。打たれ強くなってるよね、ノーガード戦法でいくから。そういうものがいいんですよね。僕が精神性として反面教師というか、デビューした95年は、かなりポップス自体もサブカルだったものがスタンダードになっていった時代なんですよ。僕らはロックだと思って音楽をやってますけど、フェスとかを含めてロックシーンと呼ばれる人たちに、歌もののいい音楽が食われていくというか。そういうものをずっと見てきているので、歌ものでいいメロでいい歌詞を書く人たちが、ライブが出来ないって思われるのはすごくしゃくっていうか、そういうフラストレーションみたいなものがすごくあったんですよね。でも、今のこの編成は最新型だし、真骨頂だと思ってますから。
奥田:僕らもそうだけど、ポップなものって基本的に損をするものなんですよね。一見ロックなものの方が、若い人たちには手っ取り早く見つけやすかったりして。その損する感じをこのバンドでは出したくないなというのが僕はすごくありますね。堂島くんが持ってくる曲も、日記とかメモ書きみたいな感じに僕は見えるというか。すごく吟味して持ってくるという感じではなくて、わりとざっくりしていて。それで勢いで録ってしまって、その後にめちゃくちゃ構築するみたいな。そのスピード感で作る部分と熟考する部分が絶妙なんですよ。
――そこでいうと、今作『A.C.E.2』は『A.C.E.』と異なって、コーラスのバリエーションが増えたり、管楽器が鳴っていたり、よりポップでキャッチーな作品に仕上がったと印象がありますね。
堂島:トランペットを入れようという話は皆にしていましたね。でもセクションで入れるのではなく一管で入ってるみたいな。敢えて隙間があることでセンチメンタルにも華やかにもなるんですよ。
奥田:ニューウェーブ感だよね。
堂島:うん。あと僕は歌詞を書く人間として、A.C.E.をやったことで変わったことがあって、コピーライター的になったと思うんですよね。それも断捨離なんですけど、歌を作るとなるといいことを言わなきゃいけないというか。理想論を歌うことで世界観を広げようとするみたいなところがあって、自分もいいことを言った方がいい歌のような気がするという感覚がずっとあったんですけど、そういう作り手の甘えみたいなものが最近のすぐ前向きみたいな歌に繋がっていると思っていて。自分が元々好きな音楽って、もっととんでもないことやどうでもいいことを歌っていたりして、今の時代に置き換えていうと、Twitterがあるじゃないですか。自分がツイートするようなことを歌にすればいいんじゃないかなと思ったんですよ。僕のツイートは別にいいことを言わないんですけど、ちょっとユーモアとか切れ味がある、くだらないことばかりを言っていて。
――音楽に置き換えると、140字以下で伝わるぐらいの歌詞ということですか?
堂島:もっといえば、5文字ぐらいでも歌になっちゃう。自分が10年音楽をやっていくということを含めて、そういうところがより人間として歌とリンクしているように見えれば、オッケンがさっき日記っぽいって言ってくれたけど、その人が本当にそういうことを歌っているという風に、ちゃんと感じられるものになると思っていて。それでダイナミクスも付いたし、ダイレクトに色んなことが伝わると自分の中では計算してたんですけど、ライブで僕たちは1曲1曲で音数が少ないとかハイパーなことをやってるんで、僕たちの初速にお客さんがまだ付いて来れていないなと思うところがあったんです。かっこよくて面白いことをやってるんだけど、聴いた時に「あ、これ最高だな」とかなんか歌えてしまうものを次は作ろうと思ったんですね。『A.C.E.』の時は、せっかくかっこいいことやっているのに、もう一歩踏み込まないと伝わらないなという思いがあって。
――『A.C.E.2』は“ないてんのわらってんの”、“き、ぜ、つ、し、ちゃ、う”をはじめ、鼻歌で歌いたくなるようなインパクトのある曲が印象的ですね。
堂島:”ないてんのわらってんの”なんて、完全に客寄せの歌ですからね。フェスで「ないてんのわらってんの」って15分ぐらい言って、お客さんが来るまで待つような歌だったし(笑)、”き、ぜ、つ、し、ちゃ、う”なんて気絶しちゃうということしか歌ってなくて、何の歌なのかよく分からないけど、気絶しちゃうということをあんなに歌われると、人々はトランス状態に陥るというか(笑)。
奥田:「気絶ってなんだっけ?」みたいにね。
堂島:そうそう。センテンスみたいなものも文章じゃなくて、ワンワードでインパクトがガンガンあるものを歌うことで、より僕たちがやってることをエンターテイメントにしていくっていう。今の2曲に関しては、特にそれを心掛けましたね。
――はじめに触れましたけど、去年の3月に『A.C.E.』がリリースされて、その後のリリース・ライブ出演ラッシュを挟んで、前作から1年未満で『A.C.E.2』がリリースに至りますよね。このペースを考えると、3作目も速いスピード感で出来上がるんじゃないかなと思うんです。
堂島:やろうと思ったらすぐに出来るんですけど、この2枚をやって『A.C.E.2』のツアーがあるので、それが終わったら、次のために仕込みをするための時間がほしいなとは思いますね。皆は料理人として腕がいいし、メニューを開発することはすぐ出来ると思うんですけど、それをやる上で僕たちが楽しくなるような新しい食材を仕込んでみたいですね。
奥田:僕は去年1年間で密に接してきた中で、堂島くんは反射神経の人だと思っていて。絶対にトークでもむやみやたらに散らかさないんですけど、曲作りについては一度バーッと散らかすスピード感を持っていて、それを改修するのも反射神経でやっている感じがしていて。すごくそこに影響を受けるというか、カードゲーム的というか、「これが出たから、こっちはこれを出そう」みたいなところを感じたんですよね。いま本人も言ってましたけど、また新たなカードを仕込むみたいだから、僕もそれに対抗出来るものがあったらいいなって。だから次を作るとしたら、この2作とは違うカードを出したいなと思いますね。レコーディングでもライブでも。
小松:ライブで思い出したんだけど、去年のライブで特に印象に残ったのが、フェスでの堂島くんのウケの良さをいきなり感じるようになったというか。本当に結果が出ている感じがしましたね。それもノーガードじゃないですけど、本人が強いからそれが出来るというか、そうやって堂島くんみたいに飛び込んでいく人を僕はサポートを含めて知らなくて、「あぁ、お客さんに伝わっているな」と後ろから見ていてもすごく分かったんですよね。だったら、そうやって活動していけば、どんどんお客さんがこっちに向いてくれるんじゃないかと思っていて。
鹿島:そうだね。次のツアーでは、もう1人トランペットの女の子が入るんですけど、自然な流れの中でA.C.E.はちょっとずつ変わっていくんですよね。それがどう流れていくのかすごく興味津々ですね。あとはツアーをやって終わると必ず何かが変わってるので、クセ球かもしれない堂島くんのボールを見事に打ち返してみたいですね。
堂島:『A.C.E.2』に関しては自転車操業的な感じでやって、リハで試した曲でアルバムに入れると言いながら、結局入れなかったものが4曲ぐらいあるので、次はそれの反動というか、実は録る時に1曲目から11曲目まで曲順が決まっていて、そこから何が出来るかみたいなことをやると面白いのかも。
――堂島さんが大変そうですね(笑)。
堂島:ほんとにね(笑)。あとはSMALL BOYS(西寺郷太[NONA REEVES]とのシンガソングライティングアイドル)というユニットもやってるんですけど、SMALL BOYSもA.C.E.を始めていなかったら無かったのかもしれない。V6の仕事を郷太がやっていて、イノッチとか三宅くんとかはSMALL BOYSをすごく喜んでくれてるらしいんですけど、80年代から活躍している長野くんとかは「あ、こういう風にアイドルを見てるんだね」みたいな感じの反応らしくて(笑)。それが面白いですよね。
奥田:逆に、「バンドってこんな感じでしょ」みたいな?
堂島:そう。SMALL BOYSこそノーガードの極みだよ(笑)。でも、デフォルメしたぐらいが丁度いいってことも実はあるんですよね。もはやCDってプレゼンみたいなところが少しあって、ライブが多いミュージシャンは「CDはグッズだ」ってよく言うんですよ。ライブをやった時にCDが1番売れるというか、店だと動機として買いに来たという人しか買わないから。だから、音源上のプレゼンテーションで誇張するのと同じで、相手の胸ぐらを掴むみたいなことをやらないといけないとは思うな。
小松:SMALL BOYSを見て、何も思わないということはないよね。必ず何かを思う(笑)。
堂島:嫌悪感を含めた何かをね(笑)。世代的にも、僕やノーナ(NONA REEVES)を含め、鹿島さんはまさにそうですけど、いいプレイ、いい音楽をやるということが当たり前なので、それをやってるところでは甘んじていたくはないんですよね。それをやるために一生懸命になっていた時代が僕らにしたら10年前ぐらいなんですけど、いい音楽をやれるようになってきて、あとは如何にエンターテイメントであるかとか、サービスであるかとか、もしくは本当にかっこつけるかとか。そういうことを真剣に遊ぶ感覚で今年もやっていけたらと思います。
interview & text by Shota Kato[CONTRAST]
photo by Naoki Shimoda
最新作『A.C.E.2』収録“き、ぜ、つ、し、ちゃ、う”
SMALL BOYS トレーラー
Event Information
堂島孝平×A.C.E. 2013ツアー
「シンクロナイズド・きぜつ・SHOW」-PRIMAL!-
2013.02.07(水)@SHIBUYA O-WEST
OPEN 19:00/START 19:30
堂島孝平×A.C.E. 2013ツアー
「シンクロナイズド・きぜつ・SHOW」A Crazy Entertainment SHOW 2013
2013.02.10(日)@宮城 仙台 HooK
OPEN 16:30/START 17:00
2013.02.16(土)@福岡 BEAT STATION
OPEN 17:30/START 18:00
2013.02.17(日)@岡山 MO:GLA
OPEN 16:30/START 17:00
2013.02.24(日)@愛知 名古屋 ell. FITS ALL
OPEN 17:30/START 18:00
2013.03.02(土)@東京 日本橋三井ホール
OPEN 16:30/START 17:00
2013.03.03(日)@大阪 梅田 CLUB QUATTRO
OPEN 16:30/START 17:00
2013.4.26(金)@北海道 札幌KRAPS HALL
OPEN 18:00/START 18:30
Release Information
2013.01.23 on sale! Artist:堂島孝平 Title:A.C.E.2(DVD付初回盤/通常盤) Imperial Records TECI-1355/TECI-1356 ¥3,000/¥2,800(tax incl.) Track List |
Now on sale! Artist:SMALL BOYS Title:ABCDEFGHIJKLMNOPQRSTUVWXYZ(初回限定版/通常盤) CRYSTAL CITY CITIZEN-013/CITIZEN-012 ¥3,675/¥3,150(tax incl.) Track List |