――曲自体は昔から録り溜めていたものから選んでいったんですか?
そう、今回のアルバムはほとんどがそうだったんだ。(プロデューサーとして参加した)アンドリュー“ポップ”ワンゼル(ニッキー・ミナージュ“ユア・ラヴ”など)とやった曲だけが新しいものだね。アルバムの中で一番古くからあった曲は“ストロング”で、これなんて5年ぐらい前に作った曲なんだ。
Dornik – Strong
――では、それをアルバムに仕上げていく時に、どんなことを考えていたんでしょう。沢山ある中から収録曲を選んでいく時に、大切にしていた基準や、共通するテーマのようなものはあったと思いますか。
それがもう、テーマなんて全然なかったんだよ。さっきも言ったように、デビュー・アルバムの曲は昔から録り溜めていたものがほとんどで、「さぁアルバムを作ろう」という時には、「アルバムのことなんて何も考えていない状態で作った曲が沢山ある」という感じだった(笑)。ジェシーのバンドのツアーが終わって、途中までやっていた曲を前にして、「どんな感じにしたかったんだろう」って思い出すような作業を繰り返していて。自分としては本当になんの意図もなく作った曲を揃えて、揃ったからアルバムになった、という感じなんだ。沢山ある曲の中から、お互いにフィーリングが合うようなタイプの曲を選んでいった。雰囲気にはまらなかったものは、後で使おうと考えてね。結局選んだ曲はどれも……80’sっぽい感じだよね。あの辺りの音楽に共通するような雰囲気の曲を選んでいた部分はあると思う。
――それこそ最初に話してもらった音楽の原体験ともリンクしているような音ですよね。デビュー・アルバムだからこそ、そういう音楽の影響が感じられる曲を選んだ、という部分もあったと思いますか。
それはあると思う。僕は80年代の音楽の大ファンだからね。でも、正確に言うと、「あの時はそうだった」ということかもしれないな。何しろ、僕は70年代も90年代も大好きだし、色んな音楽を聴いているからね。あの時がそういう気分だったんだ(笑)。
――収録曲の中で特に気に入っている曲と、制作時のエピソードを教えてください。
まずは“サムシング・アバウト・ユー”。“スタンド・イン・ユア・ライン”や“マウンテン”、“ブラッシュ”あたりは僕のお気に入りだね。“ドライヴ”も好き。新しめの曲の方が新鮮味があるから、僕のお気に入りというとその辺り。この辺の曲にアンドリュー“ポップ”ワンゼルが絡んでいるよ。アルバムの大方がほとんど出来ている状態で彼にお願いすることになったから、「元々ある曲に沿うように」というガイドラインはあったんだけど、彼との作業では新鮮味を感じられたんだ。まず、自分が1人でやることに慣れ過ぎていたから、同じ部屋に誰かがいることだけでも大きな変化だった。そして、その人のエネルギーを感じられるのはいいもんだな、って思ったんだ。1人でやっているとどうしても行き詰ってしまうことがあるからね。
Dornik – Drive
――あなたがライヴを生バンド編成でやっているのも、同じような理由からですか?
まさにそうだと思うよ。新鮮味が保たれるし、他の人のエネルギーを感じながら常に新しいものが出来ていくという雰囲気が、僕にとってはとても重要なことだから。僕はやっぱり、ライヴ・ミュージックが好きな人間なんだよね。
――<HCW>でのライヴでも、スムースな音が印象的だった音源とはまた違う、よりエネルギッシュなステージになっていていい意味で驚きました。
そう、ライヴをライヴ(=生きているもの)にする、ということが僕にとっては本当に大切なんだ。毎回違うことが起きる、何が起きるかわからない。それが最大の魅力だと思うからね。<HCW>でのライヴも素晴らしかったよ。前から日本に来たかったから、本当に大はしゃぎだったんだけど、お客さんもすごくラブリーで、僕の音楽に敬意を払ってくれる人たちだと思った。日本では「音楽で繋がれるな」という感覚を覚えたんだ。だから、もうちょっと長くいたかったよ。ひとりひとりがしっかり聴いてくれていて、すごく嬉しかった。
――アルバムを出して、日本にも来て、活動としてもどんどん広がりつつあるところだと思いますが、これからどんなことをしてみたいか教えてください。
続けること、一歩一歩先に進んでいくことだよね。ミュージシャンとしてもソングライターとしてもまだまだ上達していきたいし、常により上手くなっていきたいと思う。あと……昔は「音楽がしたい。大好きだ」という気持ちだけだったけど、今はそれが仕事にもなったわけで……昔と同じように音楽に対する飢えや愛情のようなものをなくしたくないと思う。だから、今はツアーですごく忙しいけど、スタジオに戻ったら、まずは音楽を聴いて楽しむことから始めようと思うよ。そして、色々なものから影響を受けて新しい作品を作り始めることになるんじゃないかな。
――じゃあ、今の気分で大丈夫なんですが、スタジオに戻った時に最初に聴く曲は?(笑)。
えー、なんだろう(笑)。何かオススメはある?
――アルバムが80年代風だったので、もっとクラシックなソウルとか……もしくはまた違ったグルーヴを加えるという意味でヒップホップとか……。
ああ、ヒップホップはいいよね! 実は次の作品は、グルーヴの面ではもっとヒップホップに寄せたものになるかもしれない、と思っているんだ。だから、いいヒップホップを探してみるよ。でもまだまだ、自分でも何を聴くことになるのか本当に楽しみなんだ。
Dornik and Shura – Launched at Red Bull Studios London – Series 4 Ep 2