Interview:OUTFIT(アウトフィット)[ニック・ハント(Gui.)]
――デビュー・アルバム『Performance』で鳴らされるサウンドには、”Spraypaint”や”Two Islands”などの楽曲で顕著なようにどこかメランコリックでありながら、この世のものとは思えないほど無国籍で開放的なフィーリングが凝縮されています。作曲やソングライティングにおいて、リアルとフィクションのどちらにインスパイアされますか? 本作の直接的なインスピレーション・ソースとなった映画・文学作品などもあれば教えてください。
常に現実から影響を受けるソングライティングの作業にも、一定量のフィクションは存在するし、クリエイティブなことをしているときは、どちらの要素も片方に流れ込むものだ。たとえフィクションといえども、芸術を身近に感じさせるため、多少のリアリティに基づく必要があるだろう。若い頃によくSFを読んでいたメンバーもいる。とりわけカート・ヴォネガットは、終末を思わせる出来事との感情的であたたかい関わりにぼくは影響を受けていると思う。死と結びつけて使われる「so it goes(そんなものだ)」というフレーズは、『パフォーマンス』のオープニング“Nothing Big”に通じるものがある。“Two Islands”のニックのギターは、デヴィッド・リンチの『イレイザーヘッド』に出てくる工場街や、登場人物のヘンリーが奇妙な赤子を育てるための道具を思い起こさせる。また“Spraypaint”は『ブルーベルベット』を彷彿とさせる。邪悪でありながらも美しい。
OUTFIT(アウトフィット) “Two Islands”
――きめ細かいビートやトラックメイキングは〈Warp〉のエイフェックス・ツイン~フライング・ロータスを思わせますし、サイケデリックなギターはまるでピンク・フロイドのようですし、シンセやヴォーカル・ハーモニーが生み出す恍惚感はホット・チップをも彷彿とさせました。アウトフィットは英国リヴァプールで結成されたそうですが、メンバーはそれぞれどのような音楽を聴いて育ってきたのでしょうか。
ニックとアンディの兄弟は、クラシック・ロックやサイケデリック音楽をたくさん聴いていた。ピンク・フロイドやキング・クリムゾンなんかだね。ニックはNeurosisとかDeath Spell Amigaなどのヘヴィなバンドの大ファンで、アンディは最近ではScritti Polittiに夢中になってるけど心の中はいつもビーチ・ボーイズ。デヴィッドはずっとスプリングスティーンの大ファンで、クリスはブラー。ぼくはエイフェックスやスクエアプッシャーなど〈Warp〉Records系のものを聴いてきたけど、トーキング・ヘッズとジョイ・ディヴィジョンに十代のころは夢中になってた。今はRaimeというドローンのデュオをよく聴いている。アリス・コルトレーンはヴォーカルとシンセのサウンドが最高だし、一番最近買ったレコードはPercのWicker & Steel。abrasive industrialなどのテクノ・アーティストだ。
――バンド結成前は英国マージーサイド州の「The Lodge」と呼ばれる邸宅で共同生活を送っていたそうですね。メンバーの現在の居住地はNY、ロンドン、リヴァプール、そしてスイス・・・と見事にバラバラですが、レコーディング・プロセスはどのように進められたのですか?
このアルバムはぼくらが建てたリヴァプールのスタジオで制作した。ドラマーのデヴィッドはいろんな才能があるドラマー/プロデューサーで、スタジオの建設でも大いに活躍してくれた。今はみんな離れた場所で暮らしてはいないよ。みんな大抵リヴァプールにいて、ぼくだけロンドンで過ごしている。アルバムの製作期間中は全員リヴァプールをベースにしていて、スタジオの上に住んでいた。アルバムはデヴィッドとアンドリューがプロデュースして6ヶ月くらいかかった。ロンドンで書かれた楽曲もあるし(デモの形だけど)、リヴァプールで書かれたものもある。サウンドのキーとなる音は、生のドラムを録音する代わりにサンプルを使うことに決定したことで出てきた。それで自分たちを他のインディー・バンドたちとは、音的に切り離せると思ったんだ。