3年前の『第五作品集』での復活によって、いかにdownyにシンパシーを寄せているバンド、アーティストが多いかが顕在化した感があった。が、それもそのはず00年代初期にすでに変拍子や複雑な構成を人力のみで構築し、しかも日本語でありながら何事も取れる発語で歌うボーカル、しかもライブは照明ではなく、演奏とシンクロする映像が用いられるなど、今でこそ認知された表現を行っていたのだから、今、その後、日本のオルタナティヴやポストロックを牽引する存在となったバンドマンも当時はまだティーンエイジャーだったはずだ。
復活後のdownyはむしろ活動休止前以上に様々なバンドやシーンからラブコールを受け、2014年には初の<FUJIROCK FESTIVAL>出演、クラムボンのトリビュートアルバムへの参加、そして同世代であり近い価値観で活動してきたenvy、MONOとともにキュレーションを行うイベント<SYNCHRONICITY ’16 –After Hours>も成功裡に終えた。
そんな彼らのニューアルバム『第六作品集』は、さらに生身の人間の演奏を研ぎ澄まし、パワフルさを増した仕上がりに。青木ロビンのボーカルも繊細さに加え、エモーショナルで時にインディR&Bなどと呼応するようなニュアンスも散見できる。細切れのトレンドではなく、時代や人間の深層心理とシンクロするもっとディープな部分で「新しい」と感じる具体的なプロダクツなのだ。生活の拠点である沖縄と音楽活動のギアを入れるための東京での生活を往来しながら得た感覚を反映した最新作について、そして<After Hours>で起こそうとしている少なからぬ変革について、穏やかさも柔らかなユーモアも蓄えた今の青木ロビンに聞いた。
第六作品集 『無題』 trailer movie
Interview:青木ロビン(downy[Vo&Gt])
——9年ぶりとなった前作当時のリアクションって、若い音楽リスナーからのものが多かった印象があるのですが、今振り返ってみていかがですか?
毎回言っていたんだけど、「なんであの時(活動休止前)言ってくれなかったんだろう」って感じですね。言ってくれたたらもうちょっと頑張ったかも(笑)。ま、当時、リスナーが高校生だったとか大学生だったとかなんでしょうね。
——当時リスナーだった人たちが今バンドをやっているんだなという実感はありますか?
そうですね。僕の好きな子たちも言ってくれるんで、「そうなんだ」って感じになるし、愛を感じます。「あの時代にこんなことやっていたんだ」「びっくりしましたよ」とか。
——具体的にはロビンさんがプロデュースも担当したTHE NOVEMBERSとか……。
上の年代も下の年代もライブに誘ってくれたりだとか。
——新作の『第六作品集「無題」』までの間に大きな出来事がいくつかあったと思うんです。例えば2014年の<フジロック>出演や、envyとMONOと共同主催した<SYNCHRONICITY ’16-After Hours>だったり、クラムボンのトリビュートアルバムへの参加となどいろいろありましたね。
どれも初めての話だったので、粛々とやるって感じでした。<フジロック>に関してはシンプルに楽しかった。僕はあんまりライブに行くこともなかったんで、「やっぱ見なきゃだめだな」と強く思いましたし、足運ばなきゃなと思わせてくれるきっかけになりました。クラムボンのもミトとは元々仲が良かったんですが、ちゃんと続けている彼等が思ってくれてるんだなっていうのが嬉しかった。<After Hours>の本チャンは来年なんですけど、その中での出会いでenvyの皆さんとか、MONOの後藤さんは元々仲が良かったんですが、「俺らの世代が暴れないと、ちょっとみんないい子すぎるよね。」みたいな話から「暴れようぜ」ってことで始まったんですね。新たな気づきもいっぱいありましたし、ミュージシャンとして濃い3年でしたね。
——その中で必然的に今回のアルバムにつながっていったと。
ずっと音楽のこと考えて生きていましたし。メンバー全員が各々の音楽人生の中での次作のアイデアも溜まって来ていた事もあると思います。で、まぁさっきの話でも出た出会いもありましたし、その中でさらに肉を削いで行こう、やっぱりそれが求められていることな気がして。それはライブを重ねつつなんです。というのも前作を作った時ってライブしてないんですよ。でも今回は新曲も昔の曲も含めてライブで育てて行って、「ああ、今、僕らができること、もっとこれがあるな、あれがあるな。」っていう発見があって割と必然的な3年だったような気がします。
第六作品集『無題』
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