——前作は非常に開かれた印象がありました。

うん。隠す必要もないなと思ったんで。10年、僕は割とのんびり温かい生活していたんで。それにメンバー全員がいろいろ揉まれて、丸くなったりとか、人づきあいが上手になったのが素直に出たのが5枚目だと思います。素直であれだからどうかと思いますけど(笑)、一番、僕たちの温かいアルバムができたって感じ。その後3年、東京に来るようになっていろいろ考えるようになったり、感じたりしたことが今回逆にすごく閉じたアルバムというか冷たいアルバムになっていったのかなぁって感じがしますね。

——より研ぎ澄まされたというか。

そうですね。テーマが今回はエモーショナルで熱量はあるけど、外は氷で覆われているみたいなイメージでしたね。

——そのテーマにたどり着いた背景はどういうものですか?

まだまだオリジナリティは存在するっていうのがあるんですよね。いろんなバンドをやらしてもらって、もちろん、僕がオリジナリティがあると思って尊敬しているミュージシャン含めて、さっきも言ったんですけど「ただ良い奴にならないように」とかも含めて、攻めなくなったら終わっちゃうなと思って。今って結局、みんな仲良くなっちゃっているから。それが悪いこととは言わないけど。昨夜もバンドマンと飲んでいたんですけど、僕ら当時対バンしても一言も喋ったこと無かったんですよ。

——(笑)。

昔は対バンってそういう緊張感のあるものだった。いい意味でみんなライバルですし。今は誰も文句言わなくなっちゃっているじゃないですか? 「お前の曲良くねえな」なんて。それは人と人の関係においては良いことんなんでしょうけど、音ではやっぱり嘘付きたくないっていう、そういうのをこの3年は思っていますね。逆に言われすぎちゃったんですよ、「好きだったんです」ってことを。例えばいきなり「聴いてください」ってSoundCloudのURL渡されても「誰?」ってなるし。僕らはもっとせっせテープとか作って、人に聴かせる段階の時には物凄くエネルギーの詰まった物になっているって世代なので(笑)。そういう意味でミュージシャン増えすぎていると思うんですよ。「昨日始めました」って人がなんでもクラウドにあげていきなり僕らと同じ線に立たれても、「俺は違うと思っているし」って、ちゃんと突きつけてあげたいなっていうのは僕は強く思いますね。勿論中にはとんでもなく格好良い奴もいますが、ミュージシャンとリスナーの間みたいのが増えすぎちゃって、「そりゃ音楽売れないよな」って。

——よく言えばこだわりがない、悪く言えば最初から退路がある。

そうそう。そういうのも全部含めて俺らはもっと緊張感を持ってやりたいなっていうのが、今回の『第六作品集』だと思います。

——「それをミュージシャンと言わないでくれよ」っていう気持ちで作ったということですね。

ほんとにそれだと思います。ダメとは言わないですけど、俺らは線引いているよっていう。これぐらいやらないとダメじゃない? みたいなものをこっちがやらないと続かなくなっちゃいますよね。どうしてもね、お金もかかるじゃないですか、レコーディングって。どうしてもコンパクトにしていこうとしますし、パソコンでも誰でも作れるようになったし、それでもできることはもっとあるし、魂の1曲を聴かせて欲しいですよね。

——ロビンさんのボーカルもどんどん前に出てきた感じがします。

3年の間で弾き語りをやらせてもらう機会があって、初めて自分の歌と向き合うきっかけをもらって。最初は波多野くん(People In The Box)に呼んでもらって、「やるやる」って言ったものの一人じゃないですか? 人生であんな緊張したことないぐらい緊張しちゃって、「ヤバい。」と思って、それでちゃんとやろうと思ったんです。歌を歌う人って恥ずかしいんですよ、自分の声、毎回聴くじゃないですか。飽きるし、恥ずかしいし、ちっちゃくしたいなと思うんですけど、今回はもういい歳だしテクニックをもっと駆使しようみたいな気持ちでした。曲がりなりにも18ぐらいから歌っているわけだし。それで今回、自分の気分が乗った時に録るために自宅で全部録らせてもらって。割とつるっと録ったのが多いんですよ。

downy – 凍る花

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