――次に3人それぞれ自分が好きな曲を挙げて、その理由を教えてもらえますか?

P このアルバムから?

――そうです。

F それは難しいなあ。

P 常に変わるからね。

――じゃあ、今日の時点でのお気に入りを。

F 今現在の僕のお気に入りは、“Pseudologia Fantastica”だね。この数カ月間アルバムを聴いていて、好きな曲がどんどん変わるんだけど、どういうわけか、この曲が訴えていることに、この曲が今の僕に訴えていることに共感できるんだ。今こうして地元のLAにいて、僕はここから1ブロック離れたダウンタウンに住んでいるんだけど、この曲はLAの夜空みたいに感じられる。僕らは今まさに、再びLAを離れて旅に出ようとしているから、この曲に惹かれるのかもしれない。僕はLAを胸いっぱいに吸い込もうとしているのさ。

C 僕の今のお気に入りは、多分“The Truth”だね。実はアルバムの中で一番エレクトロニックな曲だから、『Torches』からセカンド・アルバムへの橋渡しとしてうまく機能していると思うんだ。でもそれ以上に、この曲が醸すエモーションは本当にパワフルで、非常にシネマティックな曲でもあり、 輪を描いているようなメロディに圧倒されてしまう。そして、すごく面白いエレクトロニック・サウンドが鳴っていて、その上に本当に美しいヴォーカル・メロディが乗っている。それが、パワフルでエモ ーショナルな魅力を曲に与えているんだ。

P 僕の場合は、アルバムのレコーディングを始めて以来度々、朝目を覚ました時に頭の中で鳴っている曲っていうのが“Goat in Trees”なんだ。ドラムが理由で好きとかってわけじゃない。バラードに近いし、なぜ好きなのかうまく説明できないんだけど、とにかくメロディが印象深くて、曲が伝えるエモーションも素晴らしいと思う。

F 知らなかったよ。それはクールだね。

Foster The People “Pseudologia Fantastica”(VEVO Presents: Live At The Mural)

――先行シングル“Coming of Age”について教えて下さい。どんな風に生まれたんですか?

F “Coming of Age”は、一番最後に生まれた曲なんだ。スタジオで、ほかの曲の仕上げ作業をしていた数週間に書いた。曲の形が見え始めた時、何を物語っている曲なのかというコンセプトを僕は見出せなくて、ポールを呼び出して、「この曲にはノスタルジックな気分がある。まるでジョン・ヒューズの映画みたいな感じがして、聴いていると(ジョン・ヒューズ作品の常連だった)モリー・リングウォルドを思い出しちゃってしょうがないんだ。でも何を歌うべきなのか分からない。大人になることを描いているように感じられるんだけどね」と相談したのさ。そうしたら彼が「まさにそれだよ、 大人になるってことなんだ」と言ってくれて、「ポール、君は天才だよ!」って感謝した。そんなわけで一番最後に書いた曲で、ファーストではどの曲もシングルになり得る気がしたんだけど、今回は実はラジオのことなんか全然考えていなかった。だから“Coming of Age”が生まれるまでシングル曲がなかったんだよ。どこからともなく降ってきた恵みのようだったね。

――ビデオクリップはもう撮影しました?

F ああ。ちゃんとしたクリップを撮った。ほら、壁にジャケットを描く作業を記録した映像にこの曲を使ったんだけど、数週間前に正式なクリップを撮影して間もなくお披露目する予定だよ。

――今話せる範囲内で、どんなクリップなのか教えて下さい。

F 別に話しちゃって構わないと思うよ。

C この曲のビデオクリップのコンセプトを練るにあたって、僕らは、ひとつのエモーションを醸し出 すクリップを作りたいと考えていた。12〜14歳くらいの時期に、若い子が誰でも抱くエモーションをね。10 代特有の苛立ちだったり、大人になる上で人間ならみんな体験することさ。そしてやっぱり、 曲と同じノスタルジックなフィーリングを持つクリップを作りたかった。だからそういう方向性でアプローチしたんだけど、そんな時に思いがけなく、若い新進監督デュオと出会ったんだ。“BRTHR”と 名乗っていて、彼らが天才的なアイデアを提案してくれた。そこでは複数のストーリーが同時に進行していて、色んな若者がティーンエイジャー特有の様々な問題と向き合っている。それを16ミリ のフィルムで撮影したから、本当に古風でノスタルジックな感触が得られたし、監督のふたりは最高の仕事をしてくれて、僕らが思い描いていたイメージをずばり形にしてくれたよ。

Foster The People “Coming of Age”

――アルバムの話に戻りますが、あるインタヴューでマーク・F が、「“Nevermind”はアルバムの ハート」というような発言をしていました。その真意を説明してもらえますか?

F 僕にとってこのアルバムの歌詞には、カっとした激しさが大いにある。でもその一方ではリアルな感情もたっぷり含んでいて、“Nevermind”の歌詞はその、アルバムの“ハート”の部分を語っていると思うんだ。“Nevermind”と“A Beginner’s Guide to Destroying the Moon”はアルバムの核にあたる2曲なんだよ。ふたつは対極にあって、言わば陰陽であり、共生している。お互いと相乗的な関係にあって、“Nevermind”はハートを象徴し、『A Beginner’s~』は刃を象徴しているんだと思う。そしてほかの曲はどれも、何らかの形で 2曲のどちらかにつながっているんだ。

――今回マーク・Fが綴った歌詞を読んでどんな印象を持ったか、どこに惹かれたか、マーク・Pとカビーのふたりで話してもらえませんか?

P 僕は全人生を通じて音楽を聴いて、音楽を愛してきたんだけど、決して歌詞に興味を抱くタイプじゃなかった。こうしてバンドに属して音楽を仕事にしている人間がそんなことを言うのは、おかしな話かもしれないけどね。僕はまだマークの歌詞を消化し終えていないんだ。どんな音楽に関してもそうなんだよ。子供時代に大好きだった曲でも、未だに歌詞に発見があったりする。僕はまず音楽が含むエモーションに、音楽が醸すエモーションに惹かれて、どっちかっていうとそっちに関心が向く。歌詞は二次的なんだ。だから僕は今も歌詞と向き合っている最中なのさ。

C 今回の歌詞に関して僕が一番素晴らしいと思うのは、彼の誠実さと勇気だね。真実の側に立って書かれた曲は、殊に無防備になりかねないし、作詞の作業でマーク・F がとったアプローチの誠実さを、僕は讃えたい。過去数年間は僕ら全員にとって、それぞれ違う意味で辛い時期でもあったわけだけど、自分が学んだことや新たに身に付けた世界観、そして自分が向き合った試練を、彼は実に正確に歌詞に映し出していると思うよ。

――『Supermodel』というタイトルを説明してもらえますか?

F 僕はアルバム制作のプロセスの終わりに、全ての詞を書いたんだ。だから音楽はほぼ完成していた。ある意味ひとつの実験として、最後の1カ月間にまとめて書いたのさ。その後ヴォーカルを録音し終えて、アルバムをひとつの作品として通して聴いた時に初めて、歌詞の中に周期的に繰り返し現れるテーマが見えてきたんだ。必ずしも意図したわけじゃなくて、あくまで潜在的にね。というのも、詞を書いている時の僕はいたって近視眼的で、その曲しか見えていない。ひとつ曲を仕上げたら、次の曲に取り掛かるっていう具合に。でも一歩引いて全体を眺めた時に色んなテーマ が見えてきて、それらの中でも主要なテーマとして浮かび上がったのが、消費主義であり、消費であり、もしくは唯物主義といった、今のカルチャーが価値を置いていることだった。だからそういったアイデアの数々を1〜2語で割り出し、僕らが作り上げた1枚の作品を象徴するタイトルを探していた。“スーパーモデル”は、今の僕らを取り巻くカルチャーを象徴する言葉だと思うし、「未来では、誰でも15 分間だけ有名人になれるだろう」というアンディ・ウォーホルの予言は正しかったんじゃないかな。インスタグラムやツイッターやフェイスブックといったソーシャル・メディアを通じて、誰もが何らかの形で有名になれるし、誰もがある意味でスーパーモデルなんだよ。インスタグラムで写真を撮れば、みんな自分をカッコ良く見せられるし、自分がどんな生活をしているか他人に披露できる。全ては、自分がどれだけ賢いかっていう話で、僕らは自分自身の“製品”であり、自分自身の販売員であり、経営者であり、社長であり、商品なのさ。そういうアイデアに基いているんだ。

――だから、真実と欺瞞に関する曲が多いんですね。

F (頷く)

――ジャケットに綴られている詩もマーク・F が書いたんですか? 

F ああ。この詩も、アルバムを通して聴いて客観的に受け止めてから書いたのさ。歌詞のテーマ からインスピレーションを得て書いた詩だよ。アルバムの主要なテーマを表しているような気がす る。

――究極的に、このアルバムからどんなことを感じて欲しいですか?

F 僕が思うにファーストでの僕らは、人々をリアリティから逃避させてあげたかった。今回はもしかしたら、どっちかって言うと、自分たちのリアリティとしっかりと向き合うよう促しているんじゃないかな。

interview by 新谷洋子


Event Information

FUJI ROCK FESTIVAL’14
2014.07.26(金)、27(土)、28(日)@新潟県 湯沢町 苗場スキー場

Release Information

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