――そもそも古川さんは、1枚目からカヒミ・カリィをフィーチャリングするなど、『ニコニコ動画』な視点から早いタイミングから脱却されてましたよね。そして本作は、キクチさんという新しい才能とのコラボレーションによってさらなる可能性を広げてくれています。さらに今回面白いなと思ったのがアルバムのリリース前にタワレコ、HMV、TSUTAYAで先行シングルを3枚出されて、しかもカップリングの曲はアルバムに収録されない作品もあったり。このへんのアプローチというのは?
自分がやっている音楽をきちんとプレゼンテーションする必要性を感じたんですね。そのためにはリスナーとの接点である各ショップに対して「こんな作品をつくっているアーティストがいるんです」ということを、もっと明確にプレゼンしないといけないなって思ったんですよ。
――なるほど。古川さんは、サウンドだけでなく、アートワークや映像作品にもクリエイティブとして参加されているじゃないですか? もともとトータルで作品世界はイメージされるものなのですか?
そうですね。結局自分の中で映像にしてもアートワークにしてもこうしたいという理想があるんです。形にしてくれるパートナーへ、こういう作品が作りたいというプレゼン資料を提案するために自分で出来る限りのことをやりたいなって思ってるんですよ。
――そして本作では、3曲目“HOME”のミュージックビデオにて、岩井俊二さんとコラボレーションされていて驚かされました。しかも、すごい両者の世界観がハマりあっている美しい映像美で。
例えば1stアルバムだったら、ヴォーカリストでカヒミ・カリィさんっぽい人を探すくらいだったら本人に直接お願いするのが一番いいという考えがありました。今回もそれと同じ発想で、岩井俊二的な世界観が好きだったので、真似て作るのであったら本人にやってもらった方がいいなって思ったんですよ。大胆にも(苦笑)。
“HOME”
――それは大胆ですけど、とっても正しい考え方ですよね。実現してしまうのが凄いと思いますけど。
ダメもとでお願いしてみたら会ってくださったんです。会ってその日の夜に岩井さんご本人から直接「良いミュージックビデオになるよう頑張ります!」と連絡がきて、「えぇ!やってくれんの!」って感動でした。でもたとえ相手が岩井さんであっても、自分のイメージをまず伝えないとってことで、どういう気持ちでどういうストーリーで作った曲なんですって長文をメールで送って、そこから岩井さんがコンテを書いてくださったんですね。
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