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ここ数年、フリースタイルブームが後押ししたヒップホップ界隈の盛り上がりと相乗して、楽曲の共作や異種混合的なイベントなど、目に見えるかたちでロックシーンとヒップホップシーンの距離感が近くなったと感じる機会が増えたように思う。00年前後の驚異的ブーム〜鬱屈とした数十年を経た邦楽ラップシーンは円熟し、その間ロックはもっと自由になった。そんなふたつのシーンが掛け合わさることで、耳新しいサウンドが次々と生み出されている。それは、20年ほど前に日本で生まれた「ミクスチャー」という言葉を想起させる動きだ。

12月2日(土)に渋谷で開催される<FUTURE MIXTURE FESTIVAL>は、今まさに再認識されようとしている「ミクスチャー・ミュージック」に焦点を当てたイベントだ。森心言Alaska JamDALLJUB STEP CLUB等々での活動において、ロックシバンドの人間でありながら多方面でラップをするなかで、シーンの動向や温度変化を肌で感じていたのだろう。2017年現在、「ミクスチャー」という言葉自体は耳にする機会がめっきり減ったが、同イベントの告知コメントで森は「日本のロックもヒップホップも目まぐるしく現状を変化させている今、“ミクスチャー・ミュージック”は一番面白い音楽です。そしてこれからもっと進化していくと思います」と、宣言している。

今回は<FUTURE MIXTURE FESTIVAL>を軸に、出演アーティストや異ジャンルとの交流から見える音楽シーンの現状、森自身の活動スタイルなどから「ミクスチャー・ミュージック」の今と未来について語ってもらった。が、いくら語っても先のことなどわからない。今このときがミクスチャー・ミュージックの再興前夜となるか期待をしつつ、数年後、本記事と2017年12月2日の渋谷O-nestでの記憶をもとに答え合わせをしたい。

Interview:森心言(Alaska Jam/

【インタビュー】平成30年 ミクスチャー・ミュージックの夜は明けるか?<FUTURE MIXTURE FESTIVAL>主宰・森心言(Alaska Jam/DALLJUB STEP CLUB) mori-D-700x466
photo by 大田原拓海

——いよいよ開催が間近に迫ってきましたね(取材は11月中旬)。告知コメントからもイベントにかける熱意がとても伝わってくるし、“森心言 presents.”と自分の名前をしっかり出しているところに覚悟めいたものを感じました。

自分の名前を出したのは、正直なところ自分がやっているバンドに貢献したい気持ちもあるけど、それ以上にバンドの企画でもイベンターさんのイベントでもないんだから責任を背負いたいっていう気持ちもあって。誰の企画なのかハッキリさせることで、知らないアーティストにも興味を持つキッカケになるんじゃないかな、と。農家の方が野菜に名前を記す、じゃないですけど(笑)。

——今回は、「新しいミクスチャー・ミュージック」に焦点を当てた本イベント開催の経緯や心言くんの目に映っているシーンの現状などについて伺えればと思っています。そこで、いきなりこんなこと言うのもアレですけど、「ミクスチャー」っていう言葉自体は、すっかり使われなくなっちゃいましたね。

そうですよね。だからすごく面白いなって思うところもあるし、ミクスチャー・ミュージックそのものが消えることはないのに、それを表す言葉だけが廃れるというのも、なんだか変な話だなっていうか。

——たしかに。実際、それらしい音楽は今もそこかしこにあるけど、大半の人はそれをわざわざミクスチャーとカテゴライズして聴いてはいないですよね。音楽そのものが言葉の域を出たことで、意味がマッチしなくなっちゃったからだと思うんですけど、裏を返せばミクスチャー・ミュージックは片時もシーンから消えていない。

うん、そうだと思います。「ミクスチャー」っていう言葉が連想させるものが、いわゆるラップメタルで止まっちゃっているんじゃないかって。だから、その言葉のイメージが広がればいいなと思っていて。30歳前後だとミクスチャーと聴いて抵抗感を覚える人もいるかもしれないし、もっと若い10代くらいの人だとミクスチャーっていう言葉自体を知らないかもしれないけど、それが逆に面白いところでもあるし、だからこそ「やってやりたい」と思うし。なので、イベント名もあえてやりたいことが一目で伝わるようなものにしました。

——<FUTURE MIXTURE FESTIVAL>、どストレートでいいタイトルだと思います。イベントの構想自体は、数年前から考えていたそうですね。

3年くらい前から漠然と考えてはいました。ただ正直、いろんな人に「こういうことをやりたい」っていう話をするなかで、Alaska JamとかDALLJUB STEP CLUBで共鳴できたバンドは「やりたいね!」って言ってくれるんですけど、周りでサポートしてくれている人から「そんなことやっても意味ない」「もっと自分たちが売れてから」っていうような声を聴くことも結構あって。その人たちにしてみればバンドの成長が第一なので、そういう意見が出てくるのも当然だと思うんです。それに踏み出せないのは完全に自分の勇気の問題で。

【インタビュー】平成30年 ミクスチャー・ミュージックの夜は明けるか?<FUTURE MIXTURE FESTIVAL>主宰・森心言(Alaska Jam/DALLJUB STEP CLUB) mori-A--700x524
photo by 野中ミサキ

——そこから一歩踏み出せた原動力は、なんだったんですか?

考えているうちに「自分がもっと売れたらこうしよう」なんて、くだらないなって思っちゃって。結局、自分のバンドの成功ばっかり考えていても面白くないし、イベントに誘ったアーティストやバンドとは一緒に上にあがっていきたいっていう気持ちがすごく強くて。それは、自分がいい音楽をやるためにも必要なことだと思うんです。だから、僕自身の状況がどうであれ、始めないと始まらないし、誰になにを言われてもやろうって腹をくくりました。

——その「みんなで上にいく」っていうのは、ヒップホップでいうところのクルー意識やフックアップの精神だし、ロックシーンにおけるミクスチャー・ミュージックのモチベーションでもあるんじゃないかと思います。

そこを意識するようになったキッカケがひとつあって。僕が中学生のときはRIP SLYMEやKICK THE CAN CREWが持ち上がった、邦楽ヒップホップ的にかなりセンセーショナルな時代だったんですけど、そのなかでもDragon Ash とZEEBRAさんが一緒にやった『Grateful Days』はすごく新しかったし、そこから各アーティストだけが売れたわけじゃなくて、TMC ALLSTARS(Dragon Ash企画・主催イベント『TMC(Total Music Communication)』出演アーティストによるプロジェクト。RIP SLYME・スケボーキング・ラッパ我リヤ・PENPALS・Missile Girl Scootが参加)を立ち上げたり、どんどんフィーチャリング曲を出したり、派生的にグループを組んだりして「みんなで上にいく」っていう空気感がすごくあったんです。

その感覚自体はヒップホップカルチャーからの影響だし、ロックシーンにはないグルーヴなのかもしれないなって。まったく同じことをしたいとは思わないけど、つながりがつながりを呼んでシーンが盛り上がるっていうのは、在るべき姿だと思うんですよね。

——それは、90年代終盤から00年代にかけてのシーンの移り変わりや劇的な盛り上がりをリアルタイムで体験しているから得られた感覚なのかもしれないですね。心言くんが自分でラップをするようになったのはAlaska Jamから?

バンドのボーカルっていうことでいえばAlaska Jamが初めてです。ただ、中学生の頃に友達と遊びでリリックを書いて見せ合ったりしていたし、高校生になってからは、それまで遊びでやっていたラップをちゃんと自分がやりたい音楽に混ぜてもいいんじゃないかって思うようになって、そのとき僕がギターをやっていたバンドのボーカル用にリリックを書いていたりしていましたね。上京してしばらくは一人で活動していたんですけど、今回のイベントにも出演してもらうパブリック娘。が「一緒に1曲やろうよ」って誘ってくれて。自分で書いたものを聴いてもらうためにラップしたのは、それが初めてだったかな。

【インタビュー】平成30年 ミクスチャー・ミュージックの夜は明けるか?<FUTURE MIXTURE FESTIVAL>主宰・森心言(Alaska Jam/DALLJUB STEP CLUB) mori-B-700x525
photo by 野中ミサキ

——心言くんは、自分のことをラッパーだと思っていますか?

僕は、ラッパーじゃないです。

——極端な話、ヒップホップカルチャーをまったく通っていなくてもラップはできると思うんです。歌唱法としてのラップ。はたして、ミクスチャー・ミュージックの根底にカルチャーレベルの理解や親和は必要なのか、と。

まさに、そこがこのイベントの核となる部分というか。実際、ラップっぽくて売れているバンドもいると思うんです。でも僕は、カルチャーレベルでミックスするものを目指したいし、ヒップホップシーンと密接に繋がっていたいんです。ひとつ簡単な例を挙げるなら、フリースタイルラップってラップという表現のなかでもカルチャー寄りですよね。僕は、ロックバンドの人間だけどフリースタイルを振られたら断りたくないっていう気持ちがあって。

自分のことをラッパーって言わないのは、ロックバンドのプライドでもあるし、ヒップホップカルチャーへのリスペクトでもあるんです。自分はラッパーではないっていう意識は常にあるんだけど、ヒップホップシーンに飛び込めるような存在になりたいし、そういう心持ちでいたいなって。
 
——その心持ちを歓迎する人もたくさんいると思います。とはいえ、全員がそうではない。そこへ飛び込んでいくことの怖さみたいなものはないですか?

怖……くないです。というか、怖くないように、そこで絶対有無を言わさず交われるだけのスキルを鍛えたいって思っています。もちろん、同じイベントに出た人のなかには「バンドなんか興味ねえ」っていう姿勢の人もいるんですけど、「ラップやってんだね」ってコミットしてくれる方もいらっしゃって。今回出てくださるKMCさんもそうだし、レーベルメイトのDOTAMAさんも仲良くしてくれていたり。8月にDJ BAKUさんのイベント(<ROAD TO KAIKOO FES 20XX>)に誘ってもらったときには、漢a.k.a GAMIさんとのセッションに参加させてもらって、その瞬間はロックバンドのボーカルだけどちゃんと公の場でヒップホップの場に飛び込んでいけた実感がありました。

——それは、今の音楽シーンにとってもっと注目するべき出来事だと思います。フリースタイルラップブームを経て、ここ1、2年でヒップホップシーンのアーティストをロックシーンで見かけることも増えた気がします。DOTAMAさんのFINAL FRASHやCreepy Nuts×andropなども話題になりましたよね。

Mummy-Dさんが少し前のインタビューで「ヒップホップの人間はもっと別ジャンルの音楽にコミットしていかなくちゃ」って仰っていて、実際RHYMESTERもずっといろんなジャンルのアーティストやバンドと一緒にやっているし、そういうことを意識しているって知れたのが、すごく嬉しくて。

イベントでラッパーの方と一緒になったときに「セッションするんで一緒にフリースタイルやりませんか?」って声を掛けたり、空きっ腹に酒とはバンド同士でフリースタイルバトルをやったり。僕が「カルチャー的に交わりたいっていう気持ちがヒップホップシーンの人たちにも伝わっていたらいいなって」と思ってやっていた行動が、やっとつながってきたと感じることも多くなってきました。やっぱり音楽をやっている人は、ジャンル関係なくいろんな音楽が好きで、いろんなところとつながりたい意識があると思うんです。

野中ミサキ

野中ミサキ

ライター

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