——<FUTURE MIXTURE FESTIVAL>は、そう感じてきたことの集約でもあるんですね。もちろん今回出演する面々は、心言くんのやりたいことや心持ちを共有してくれているんだろうと思います。

そうですね。みんなカルチャーから親しんでいる人たちばかりだし、大好きなバンドやアーティストなんですけど、大好きだからこそ盛り上げたいという気持ちも強くて。せっかくなので、一組ずつ紹介してもいいですか?

Alaska Jam

僕がラップを本格的に音楽活動に取り入れたきっかけのバンドです。それぞれメンバーが色んなカルチャーに携わり音楽活動をしていて、自然発生的に新しいミクスチャーが生まれたんだと思います。この企画自体、まずAlaska Jam参加が大前提でした。

Alaska Jam / FASHION【Official Music Video】

DALLJUB STEP CLUB

世界的に見ても新しいかたちのミクスチャー・ミュージックを発信できるバンドだと思います。意外に他のメンバーも自分達の音楽に対してミクスチャーという意識があるし、ルーツもミクスチャーが共通項だったりします。ミックスCD/Remix収録等、ロックバンドに珍しいアプローチも意識してやってます。

【MV】DALLJUB STEP CLUB 『Pizza Pizza』

音の旅crew

彼らは、レゲエ×ロックサウンドですけど、それもひとつのミクスチャー・ミュージックのかたちだと思うし、彼ら自身ヒップホップにもリスペクトがあって。初ワンマンにゲスト出演させてもらったりタッグツアーを周ったり、これからもシーンを共に盛り上げたい盟友です。

音の旅crew / CROSS ROAD -MUSIC VIDEO-

SABANNAMAN

王道のミクスチャー・ロックで、今どきここまで王道を誇示しているなんて、その時点で最高だなって思って、誘わせてもらいました。デビューの時から一方的にずっと気になっていて、直接初めて会ったのは今年に入ってなんですけど、すぐフィーリングも合って意気投合できました。

SABANNAMAN【MV】Mutant Walk

memento森

彼らとは結構前から「こういうイベントやりたいね」っていう話をしていて。ボーカルのMiya-zさん・ベースの木原くんとはバンドの生セッション×フリースタイルラップだけのイベントに一緒に出演したり、昔からカルチャーを意識した活動を共有できた仲間です。

memento森「sick hack」live at M.E.P.Y vol.5

No Gimmick Classics

だいぶ昔に出会ったときからラップがすごく上手だなって思っていて。ヒップホップのレーベルからCDを出したり、新しいかたちを切り開こうとしているところに僕自身ワクワクしたし、また一緒にやる為には自分からオファーするしかないと思って声をかけさせてもらいました。

No Gimmick Classics / BadraBBit (Official Music Video)

パブリック娘。

彼らは、もともと大学の後輩でもあるんですけど、曲によって参加させてもらっていて。個人的には天然ヒップホップ集団というか、純粋にヒップホップって本来こうあるべきだなっていうグループで、僕がヒップホップを意識してラップするきっかけでした。

パブリック娘。 – おつかれサマー(Official Video)

JABBA DA HUTT FOOTBALL CLUB

JBHFCとは、「STEREO RIOT」という曲で一緒にやらせてもらって。ラップグループだけどロックバンドのボーカルを呼んで一曲作るっていうアプローチをしてくれたのがすごく嬉しかったし、オーバーグラウンドにコミットできるスキルのあるグループとしてリスペクトしています。

JABBA DA HUTT FOOTBALL CLUB「STAY GOLD,LIFE GOES ON」

MC MIRI

MIRIちゃんは、アイドルラップユニット・ライムベリーの子なんですけど、フリースタイルバトルに出たりヒップホップシーンの人たちからの信頼とリスペクトもちゃんと受けていて、それはすごく尊敬したいなって。僕がロックシーンでやりたいことを、彼女はやっているのかもしれないなって思っています。

MC MIRI / hip hopト名乗ッテモイイデスカ – SAMPLE –

KMC

KMCさんとは、僕の中学・高校の後輩でもあるSTUTS君がトラックを作ってることがきっかけで知り合って。ラッパーだけど、パンク・アティチュードが感じられるラップをする方なので、カルチャーの交わりが一方通行にならないためにも欠かせないアーティストでした。

KMC『HIPHOPが好き』(MV) pro.by STUTS

SPARK!!SOUND!!SHOW!!

スサシとは、4年くらい前に打ち上げでボーカルの勇気君とフリースタイルバトルの話で意気投合して。どんどんラップやクラブミュージックの要素を取り入れながら独特のハードコア・ミクスチャーに進化してて、遊び心の中にしっかりとした勇気君のヒップホップ愛が見え隠れするのが大好きです。

SPARK!!SOUND!!SHOW!! “かいじゅうのうた” MV

ただ単純に好きなバンドを集める企画だったら少し違ったジャンルのアーティストにも声をかけていたかもしれないですけど、今回の企画は自分がこういうジャンルの音楽をやっていることの使命みたいなものを果たしたいし、使命を探したいっていう気持ちもあって。出演者にリスペクトを持ってやりたいし、これだけのメンツが揃うので、なにかスペシャルなことができればいいなって考えています。

——Alaska Jam、DALLJUB STEP CLUB、パブリック娘。での客演等々、心言くん自身かなり多忙な一日になりそうですね。そうやって多角的に活動することで、たくさんのつながりが生まれているんだと思いますが、それと同時に活動を掛け持つことへの罪悪感みたいなものも生まれてくるんじゃないのかなって思ったりもして。

それはね、正直少しだけあります。でも、もっと自由に音楽をできるようになればいいなっていう夢があって。バンドが大きくなることで出てくる制約なんかを目の当たりにすることもあるけど、そういうのって本当にくだらないと思うんです。どの立場であっても音楽に関わる仕事をしている人は音楽が好きなはずだから、もっと音楽が自由になるっていうこと自体は、アーティストが求めてもいいんじゃないかなって。

もちろん「これ一本でいく!」っていう人もすごく素敵だけど、僕はもっと自由でもいいのになって思っていて。人から「なにがメインなの?」って聴かれることがあるんですけど、その質問自体がイヤだし、自分が誰となにをどうすればいいものが残せるかっていうことだけ考えていればいい話で。自分とは違うことをやっている人と一緒にやるほど新しいことが生まれるのに、そこを制約してしまうのはもったいないし、一度きりの人生だからもっといろんな人と音楽を作りたいなって単純に思うんです。

——私、このインタビューのタイトルを「平成30年 ミクスチャー・ミュージックの夜は明けるのか?」ってつけたんです。でも、こうやって話をしていると、そもそも夜だったのかどうかわからなくなってきました。少なくとも音楽をやっている側は、そんなふうに感じていないんじゃないかって。

いや、夜……なんだと思います。じゃなければ、僕もイベントをやろうと思っていなかったし、もっとオーバーグラウンドなところでシーンが交わるのは、まだ難しいのかなって。それはアーティスト同士の意識ではなくて、聴く側の意識というか。ロックバンドが好きな人からすると、ロックとヒップホップのあいだには、まだ壁みたいなものがあると感じているんじゃないかなっていう気がしていて。そういう意味で、まだ明るくはないのかもしれないです。

——ロックとヒップホップは成り立ちもスタイルもひと続きではないので、両者のあいだに境界線はあると思うんです。ロックバンドが好きであればあるほど、その線が高い壁のように感じられるのかも。ただ、あくまでそれは線だから簡単に飛び越えられる。<FUTURE MIXTURE FESTIVAL>は、それを体感できるようなイベントになりそうですね。

やっている側からすれば、面白くて光があるものだし、ヒップホップシーンにも面白いことをしようって考えている人はたくさんいるんですよね。第一線で活躍していらっしゃる世代にも新しいかたちで盛り上がってほしいって思っている人がたくさんいると思うんです。ジャンルの垣根を越えてカルチャーレベルで密接に交わっていこうとしているバンドやアーティストにはその時点でリスペクトを贈りたいし、僕自身もそういう気持ちでやっています。

ただ、やっぱりここ1、2年で届くほど簡単なことではない。だから、結構長いスパンで考えているし、回を重ねるごとにもっと面白いことができればいいなって思っていて。そのうち自分とは全然関係ないところで同じようなイベントが起これば、それはそれでうれしいですね。どんなかたちにせよ、やることに意味があるので、これをゴールではなくきっかけにして、新しいミクスチャームーブメントの幕開けの一翼を担うことができれば、本望です。そして、そうなるように間違いないアーティストを集めたので、2017年12月2日(土)渋谷にて、ぜひその貴重な瞬間を目撃しに来てほしいです。

【インタビュー】平成30年 ミクスチャー・ミュージックの夜は明けるか?<FUTURE MIXTURE FESTIVAL>主宰・森心言(Alaska Jam/DALLJUB STEP CLUB) mori-D-700x525
photo by 野中ミサキ

PLOFILE

森心言

福岡出身。2010年よりAlaska Jamのボーカリストとして活動開始。2013年にはDALLJUB STEP CLUBにシンセ/ラップとして加入。また、パブリック娘。/JABBA DA HUTT FOOTBALL CLUB/Omoinotake等、さまざまなアーティストの作品に客演で参加する他、ソロやDJとしての活動も行なっている。

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EVENT INFORMATION

森心言 pre.<FUTURE MIXTURE FESTIVAL>

2017.12.02(土)
OPEN 12:30/START 13:00
TSUTAYA O-nest
ADV ¥3,000/DOOR ¥3,500(1ドリンク別)
Alaska Jam/DALLJUB STEP CLUB/音の旅crew/SABANNAMAN/memento森
/No Gimmick Classics/パブリック娘。/JABBA DA HUTT FOOTBALL CLUB/MC MIRI/KMC/SPARK!!SOUND!!SHOW!!

詳細はこちら

Alaska JamDALLJUB STEP CLUB

interview & text by 野中ミサキ(NaNo.works)
photo by 大田原拓海、野中ミサキ