――ええ、まさに。そうやってあなたたちが活動を続けてきたからなのか、現在ではバーミンガムのピースなどを筆頭に、あなたたちやブリットポップに大きく影響を受けた若手世代が続々と登場しつつあります。彼らの音楽は聴きますか?
ああ、もちろん。ピースの曲も聴いてるし、他の若いバンドの音楽も沢山聴くよ。ブラーのシングルも聴く一方で、グラス・アニマルズの音楽も聴くという感じでね。若いバンドの音楽だからって学ぶべきことがないわけでは決してないし、むしろ俺は、若い人たちから学ぶものがいっぱいあると思うんだ。彼らの音楽を聴いて、刺激を受けたりすることもよくあるしね。
――その中でも特に好きなバンドというと?
まず挙げたいのはザ・タペストリー。彼らはめちゃくちゃいいバンドだ。それからグラス・アニマルズも。あとは誰だろうな……? 日々色々な音楽を聴いているから、「あれが誰なのか」ということが分からなくなったりするんだ(笑)。俺は車でも、いつも(BBCラジオの)6ミュージックを聴いてる。まだ有名じゃないバンドの音楽もかかるし、最高だよね。
今のバンドとブリットポップ時代のバンドの違いを挙げるなら、今のバンドはデビューした時点で既に完成されていると思う。俺たちが若い頃はボロボロのライヴをいくらでもやったし、そうやって失敗しながら成長していくような感じだった。そこは決定的に違うし、自分たちだったら不可能なことだと思うね。ただ、同時に――これはみんながみんなそうじゃないと思うんだけど――ロックンロール教習所のようなところに通って完成された状態で出てきていることで、時々、ロックンロールに大切な危うさのようなものが欠けているように感じられることもある。今ってそうじゃないとすぐに評価を落とされたりしてしまうから、彼らはそういうプレッシャーと戦っているということだと思うんだけどね。
――今のバンドは大変そうだということですか。
まぁ、俺たちはオックスフォード拠点で、ロンドンにいなかったからそう思ったのかもしれないけどね。自分たちの場合は、とんでもなく酷いライヴをやっても大目に見てくれるような感じだった。でも今は、ちょっと売れないと「次のバンドはこれだ!」って感じで、彼らの芽を摘んでしまうような雰囲気がある。すぐ売れなきゃいけないとか、すぐアリーナ・クラスにならなきゃいけないとかね。俺たちの頃は、1枚目、2枚目とやっていって、それで売れなかったとしても「こいつらはいいバンドだから、いつかヒットを出してくれるんじゃないか」って、ゆっくり成長することが許されていた。そういう長い目で見てもらえた時代で、その辺りは今とは少し違ったのかもしれないな。
――歳を重ねた今だからこそ気付いたことはありますか? 新作を聴かせてもらってもそうなのですが、あなたはとてもいい歳の重ね方をしているように思えます。
(日本語で)アリガトウ。まぁ、別に楽器とかは全然上手くなってないけどね(笑)。ドラムはちょっと上手くなったかな……。歳を重ねたからと言って頭でっかちになるんじゃなくて、「無邪気さ」とか、ある意味での「無知さ」のようなものを大事にしていきたいんだ。音楽的に言うとね。もちろん、歌詞はより上手く書けるようになったし、そういう部分では確実に成長してる。でも真面目過ぎたり、誠実過ぎたりすることや、真剣なことを題材にすることにドップリ浸かったりはしたくないと思ってやってる部分がある。俺の音楽に昔からあったシュールな面白さを持ち続けるっていうのかな。そういうことは考えているかもね。
Gaz Coombes – “Detroit”
――では、これからの目標ってありますか? それは音楽を作り始めた頃と比べて変化しているのでしょうか、それとも全く変わっていないのでしょうか。
俺のゴールって、基本的に長期的なものじゃなくて短期的なものなんだ。言ってしまえば、「前よりもいいレコードを作ろう」という、ただそれだけ。でも、今回の作品でも“バッファロー”や“ザ・イングリッシュ・ルース”みたいな曲が出来た時の達成感はこの上ないんだけど、それが出来た時に「次はこれ以上のものを作れるのか」というプレッシャーが生まれる。「どうしよう、次はもっといい曲を書かなきゃいけない。でもそれが自分に出来るのか」って。その狭間で、つねに戦っているような感じなんだ。どっちも勝つことはないし、ずっとそれを続けていかなきゃいけないんだと思う。だけど、それがあるからこそ前進し続けていけるんだよ。
――最後に、音楽以外でもいいのですが、あなたが最近ハマっているものを教えてください。
映画を観るのが好きなんだ。クリストファー・ノーランの『インターステラー』は素晴らしい作品だったね。あと『バードマン』もクールだった。あとはサッカー。マンチェスター・ユナイテッドのファンなんだ。日本に向かう前にも試合を観に行ったんだけど、負けてしまったよ。でも、シャウトして発散できるからね。カラオケ代わりみたいな感じで、しょっちゅう審判の悪口を言って発散してるな(笑)。
Gaz Coombes – Live at 229 London
interview & text by Jin Sugiyama
photo by Masanori Naruse
Release Information
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