シンガーソングライターであり、ビートメイカー、そしてDJとしても活動を展開しているG.RINAが、10月に約5年ぶりとなるニューアルバム『Lotta Love』をリリース。
本作は80年代、90年代のダンスクラシックス、ブギーファンクやヒップホップなど、彼女が影響を受けてきたジャンルを現在の自分モード昇華させ、架空のソウルバンド、ミッドナイトサンというビジョンを通して、様々な愛の形についての風景を日本語歌詞の世界で表現している。またtofubeats、やけのはら、PUNPEE、LUVRAW、KASHIFなどインディペンデントな活動かつ、先進的な楽曲を作り続けている、ゆかりのある豪華ゲストたちとの楽曲も聴きどころのひとつ。
今回は、『Lotta Love』のリリースを記念して、収録曲”黄昏メモリーレーン”にゲストとして参加している、やけのはらさんとG.RINAさんから、インディペンデントな活動や現在の音楽シーン、日本語歌詞への想い入れや考え方。そしてシンガー、ラッパーでありDJとしての二面性と、多角的な視点をもつふたりのスペシャル対談をお届けします!
G.RINA 『Lotta Love』Medley Music Video
Interview:G.RINA × やけのはら
——改めて『Lotta Love』は5年ぶりのアルバムリリースとなりますが、コンセプトやテーマを教えてください。
G.RINA 80年代、90年代の好きだった音楽の影響を今の自分のモード、日本語で表現するということ。架空のソウルバンド、ミッドナイトサンが演奏しているというビジョンで作りました。全体の流れとして、いろいろな愛についての風景を歌っています。その愛というのも普通の男女の恋愛だけじゃなくて、音楽愛や郷土愛、性愛とか。いろいろな角度から愛について一曲一曲を作っています。豪華なゲストの方々に参加していただいたのですが、今日はそのなかのお一人、やけのはらくんと作品や音楽活動にまつわる話などできればと思っています。
『Lotta Love』ジャケット
——G.RINAさんもやけのはらさんもインディペンデントな活動展開をしており、動きやすさや、フレキシブさなどの利点もあると思いますが、思惑や意図あっての活動なのでしょうか。
やけのはら 僕は事務所に所属したことはないんですよ。レーベルの人に手伝ってもらったりすることもありますが。G.RINAさんは前にメジャーレーベルにいましたよね?
G.RINA 一度リリースしましたが、それ以前から仕事を受けたりすることはずっと一人でやってきていました。これまでの活動の中で事務所の話も何度かいただきましたが、なんとなくピンと来なかったんです。自分にはもう少しストリート感覚っていうか、そういうやり方の方が合う気がして。でもまあずっと模索している感じです。
——おふたりは多種多様なクリエイターやアーティスト、イベンターさんたちと幅広いシーンで活動をしているイメージが強いですが、どのように出会いは繋がっていくものなのでしょうか。
やけのはら 順序としては、自分がもともと音楽好きだから今でも作り続けていて、出来ることをやっている中で、友達や知り合いとやっていくことが自然と楽しいからやっている。これが普通というか。なので、自分が知らないところにいきなり放りこまれて、芸能人のようにやっていこうとか、そうゆう感覚が元からないんですよ。
G.RINA 私も同じようなテンションですね。
やけのはら 今は世の中も音楽業界も不況じゃないですか。それでも僕が若い時に大人から、「ビッグ・プロジェクトをするぞ!」と誘われたとして、もしその時にそのプロジェクトをやっても自分に合うようなことはなかったかな。そうゆう気はしますね。今が自然でよかったし、なるようになった感じです。
G.RINA 今がベストだとは思わないですけど……でも、自分の実力が伴っていなければ、なにか良い話に誘われたとしてもやっぱり身の丈に合わなかったでしょうし、ゆっくりしていると思われるかもしれないですが、今のように活動できているのは良かったかなと思いますね。
——今は曲を作りたくないな。今はすごく曲が作りたい。自分のペースが意図しない方向へと進んでいくのは嫌だな。という感じでしょうか。
G.RINA 曲はいつでも作っていたいですよ。活動の仕方について自分で考えられる範囲、自分の足で進んでいきたいって気持ちが強いのかな。それがあっての今だからこそ、模索したり悩みながらも、続けられている気がしています。
——音楽業界が不況との話が出ましたが、CDの販売やプレス縮小、ジャンルの多様化。移り変わりが激しい今の音楽シーンに感じることはありますか。
やけのはら 僕は最初にCDを出したのが2003年なんです。もうCDが既に売れてなかった時代だったから、売れている時代を体感してないんですよね。
G.RINA そうそう(笑)。
やけのはら ただ難しいのは、自分が10代の頃にリスナーだった時代は、CDを出せる人たちは売れていたんですよね。そうゆう人たちを見てきたけれども、自分が出す時にはもうこの時代に入っていた(笑)。
G.RINA 本当にそんな感じですよね。
やけのはら 物質としてのレコードが出来てから100年ちょっとだし、それまではもちろんコンサートしかなかったわけですし、音楽自体は変わらなくても、テクノロジーの進歩によって、社会の中での音楽の立ち位置が移り変わっていくのは当然なのかなとは思います。その時々のベスト、さらにその先のことも考えて、例えば今なら、自分がレコード好きというのもあるけど、データだけじゃなくてレコードも出しておいたら、20年、30年後にも、聞き返されやすいかもしれないなとか、今だけで終わらない先にあることも考えつつ、今自分が楽しい、いいなと思ったことをセレクトしていくだけかなと。
G.RINA たしかにわたし自身もたくさんデータ音源を買うようにはなりました。とはいえレコード、CD、データ問わず音源自体をよく買っている側の人間だと思うので、もともと買わなかった人たちがさらにどのくらい買わなくなったのかについては、数字でしかわからない。気持ちを理解することまではできないんです。
やけのはら 音楽よりも、情報として消費して、「はい次!」っていう風に情報の流れが速すぎると、ひとつひとつが軽くなって、音楽としてより情報としての部分のみクローズアップされるのは怖いですけどね。そういう流れからは、音楽が凄く大事なものとして心に残る人の数も減ってしまいそうですし。
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