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――お芝居をすることにおいて、映像と舞台とでの違いはありますか?

磯村 そこは、映像も舞台も同じだと思っています。大事なのは、演出なさる方や脚本家の方と一緒につくって感じてきたものを演じて、それを観る方がどう感じるかっていうところなので。芝居中は自分を客観視できないので、そういうところは全部演出家さんに任せてやっていればいいと思っていて。どう見えているのか自分で客観視することも必要なのかもしれないですけど、セコくなるのがイヤなんです。「今の良かったでしょ?」とか(笑)。今回もそういうのはナシで、濱田さんや共演者の方々とディスカッションしながらつくっています。濱田さんの脚本は、不思議と役者が役そのものに見えてくるんですよね。稽古帰りに話しながら「この人、こんなふうに笑うんだ」って思ったり。そういう役者同士の空気感みたいなものも感じてもらえたらいいなって思います。

濱田 作品づくりって、演出家や役者同士でのセッションだったりするので、そういうのが楽しいんですよね。昨日、磯村さんがやっとわがままに芝居をするようになってくれたんです。役者は「台本に書かれているからやらなきゃ」「芝居の流れを止めちゃいけない」って思いがちなんですけど、僕はそういうのは求めていなくて。「わからない」って言ってもらったほうがいい。そこを磯村さんが先陣を切ってくれたのは、この作品にとってすごく大きな一歩でした。作品をつくるうえで「わからない」「足りない」ってことは絶対にあるんですよ。でも、脚本があって、それを読んだうえでキャストも参加していれば、「わからない」はあっても「出来ない」「やれない」は絶対ないので。

――ちなみに、磯村さんご自身は観客として舞台を観ることはありますか? 芝居をする人が観る側として感じる舞台の魅力って何でしょう?

磯村 最近はなかなか観に行けないですけれど、たまに観たときには舞台ならではの楽しさを感じますね。映像だとこまかいものまですべて揃っているけれど、最小限のセットと芝居でつくる舞台は、実際に眼に見えないものを想像させてくれる。役者が見ているものを「この人は一体なにを見ているんだろう」って、目の前にある情報から想像するのも楽しいし、ナマならではのヒヤヒヤ感も好きです。そういうのを共有できる素敵な場所ですね。ここにいられて幸せだなって感じる瞬間があります。

【インタビュー】俳優・磯村勇斗、5年ぶりの舞台へ。『hammer & hummingbird』で魅せる、痛みとの併走の物語。 interview0180226_hammerhammingbird_02-1200x1792
市野美空

――同じ空間で同じ物語を観ているのに、一人一人見えているもの、感じることが違うというのは、改めてとても特殊な体験だと思います。そういった点で重要になってくるのが、音楽と照明による効果。音楽は、前々作『blue , blew , bloom』で主演を務め、前作『monster & moonstar』では劇半を担当した古舘佑太郎さんのバンド「2」。照明は、濱田さんのプロデュース作品に欠かせない渡辺敬之氏(仕立て屋のサーカス/tremolo)がご担当されるそうですね。

濱田 今回、’50年代のビートジェネレーションから着想を得て“放浪”というキーワードで脚本を書き始めたんですけど、「2」のオルタナティブなロックサウンドは、物語の世界観にすごく合っているなと思うし、渡辺さんの照明は抽象的なのに影まで美しくて、僕の世界を具現化してくれる力を持っている。舞台は一瞬で終わる儚いものですけど、それをお客さんのなかにちゃんと残るクラシックなものにするためには、おもしろくて感動するのはあたりまえ。それ以上のムーブメントになるような作品にしたいし、キャスティングも音楽も照明も全部を観る方へ衝撃としてぶつけられるものにしたいなって思っています。

磯村 倉のような劇場だと舞台から来る波のような衝撃がより大きく鮮明に感じられるかもしれないですね。だから、余計に濁ったものは渡せないなって思います。「希望だ」「死だ」とか単純なものではなくて、どのシーンにも伝えたいことがあるし、ひとつの言葉だけでは表せられないんです。そういう姿を観て感じたものをしっかり持って帰ってもらえたら、それだけで演じる側としては「ちゃんとやれたのかな」って思える気がします。

濱田 僕は、俳優っていう仕事は目の動きひとつでお客さんを感動させられる可能性があると思うし、今回はそれをより味わえるんじゃないかと。テクニカルなことでいえば、舞台ではお客さんの眼がカメラになるし、そのために首を動かすような演出をしなくちゃならないんですけど、それ以前に有無を言わせず観る方の脳を刺激する、それが舞台=LIVEの持ち味なんだと思います。一生のうちで心に残る言葉なんか限られているので、すごいものを観たっていう感覚だけでも持ち帰ってもらえるといいですね。あとは、悩んでいる役者の顔を観てもらいたいです。

磯村 それは、そうかもしれないなあ。

濱田 ヨガや縄跳び、筋トレ、バスケのフットワークとか(笑)、身体を酷使して、頭では芝居やキャラクターと向き合って……。本来は役者の裏側なんて作品にもお客さんにも関係ない、必要ないものだけど、身体的にも精神的にも追い込んで、悩んで悩んで大きくなったものをぶつけるっていうのがこの作品には必要だと思っていて。今回だけはそんな姿を観ていただきたいなと。本当にみんな、悩みながらも向き合ってくれています。

――そこも舞台ならでは、ですね。

磯村 そうですね。ドラマとかだと日によって撮るシーンが違ったりするけれど、舞台は最初から最後まで通すから、蓄積されたものが最後にバーッ! と噴き出したり。もしかしたら、僕がこの世にいない可能性だってあるし。って言うと極端ですけど、しっかりそこまで感じられないと泳とは向き合えないんで。

【インタビュー】俳優・磯村勇斗、5年ぶりの舞台へ。『hammer & hummingbird』で魅せる、痛みとの併走の物語。 interview0180226_hammerhammingbird_04-1200x803
市野美空

――私も稽古を拝見しましたが、冒頭シーンから心身を削るように何度も何度も感情を昂らせる姿が印象的でした。舞台上でどう結実するのか楽しみです。さて、磯村さんは2015年頃のとあるインタビューで当時の自分を本に例えて「やっと本文の1ページを開いたあたり」とおっしゃっていました。その後、ドラマ、映画、そして朝ドラへの出演という大きな経験を経て、5年ぶりに舞台へ向かう今、どのあたりにいらっしゃいますか?

磯村 ……いろいろそのようなことを言い過ぎていて、自分が今どのページにいるのかわかんないです。

濱田 違う本かもしれないし(笑)。

磯村 そうそう(笑)。2017年の末も「やっと1ページ進んだ」って言っていましたし。無意識にずっと「やっと1ページ進んだ」って言っているということは、結局ずっと進んでいないんですよ。もちろん、観てくださる人や知ってくださる人は増えたし環境は変わったかもしれないですけれど、周りが思ってくださるほど「進んできた」という感じではないんです。精神面とか芝居のうえでは変わってきたかもしれないですけど、まだまだ全然進歩してないなって。

――言い換えるなら、自分にまだまだ満足していない?

磯村 そうですね、きっとこの先も満足することはないです。今が最高って思っちゃったら多分この仕事を辞めるし、続かないです。だから、「やらなきゃいけないんだ」っていう環境を常につくって、自分にそう思わせ続けているのかもしれないですね。もしかしたら、永遠に「やっと1ページ」って言い続けるかもしれません。

濱田 この舞台が終わった頃には、せめて2ページ目に差し掛かったと言ってもらえるように、僕はがんばらなくちゃ(笑)。

磯村 もしかしたら公演後は「一章進んだ」って言ってるかも(笑)。

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嶌村吉祥丸

EVENT INFORMATION

LIVE “scene04” 「hammer & hummingbird」

2018.02.28(水)〜2018.3.4(日)
すみだパークスタジオ 倉(THEATER-SOU)
〈脚本・演出〉濱田真和 ()
〈音楽〉2
〈照明作家〉渡辺敬之(仕立て屋のサーカス/tremolo)
〈CAST〉 高山璃子 新井郁 小林英樹 島田惇平 石川瑠華 光根恭平 山田真由子 市場紗蓮 白磯大知 田中沙季 舩木勇佑 李佳 濱田真和

詳細はこちら

text by野中ミサキNaNo.works
ヘアメイク():佐藤友勝
衣装(磯村勇斗):齋藤良介
撮影:市野美空
ビジュアル撮影:嶌村吉祥丸
ビジュアルヘアメイク:橋本雄大(PELLS)

野中ミサキ

野中ミサキ

ライター

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