——ところでこのライヴ・アルバムの選曲はどのように考えられたんですか?

上原 普段ライヴをやっている中でオープニングにふさわしい曲とか、ストーリー、流れを感じながらプロローグからエピローグまで組みました。

——今回のために作曲された四楽章からなる“ジ・エレメンツ”ですが、最後の『FIRE』はすごいエネルギーで。

エドマール 四章あるので、それが波のように少しずつ少しずつ積み重なって最後に大爆発をする。ほんとに素晴らしいと思います。

——自然界のタイトルがついてますけど、最初からそういうイメージでしたか?

上原 エドマールのハープをイメージしながら曲を書いていったら、例えばハープが水の滴る音、つむじ風とか情熱的な炎、あとは大地の力強さ、そういったものがすごく自然に曲に表れて来たのでいつのまにか四楽章になっていました。

——エドマールさんはそういうふうに解釈されていかがですか?

エドマール 自分のハープのための演奏ができるというのがものすごくうれしいことですし、自分のメロディやグルーヴを自分の楽器を通して自由に表現できることがすごくうれしいです。

——そしてお客さんの笑い声や歓声が特に“FOR JACO”ではすごく聴こえてきて。その場に居合わせたいです(笑)。

上原 ほんとライヴってナマモノで、その日どういうお客さんが来ているかで変わります。ちょっとシャイな人が今日集まってるな、とか、今日は結構ノリノリなお客さんだなとか、そういうので毎日、千差万別のライヴになるので、そういった変化も楽しみながらいつもやっています。

——この“FOR JACO”のライヴ演奏がすごく好きなんですけど、エドマールさんはもともとどういうインスピレーションから作った曲なんですか?

エドマール もちろんジャコ・パストリアスのあのグルーヴをハープで再現しようとしたものです。4つの弦で彼が作り上げたハーモニーを再現しようと思いました。彼の演奏も人生も僕に影響を与えてくれました。どうやって楽器にとって新しいものを作っていくかとか。

——二人の抜き差しにお客さんも乗っかって来て面白いです。

上原 デュオっていうのはそういう意味ですごく観てて面白いんじゃないかなと思います。お客さんがこっちがこう来たから、次はこっちはどうくるんだろう? というのが手に取るようにわかるので。例えばエドマールがやったことを聴いて、「さぁ次、ヒロミはどう出る?」、「あ、今度はこう返して来た」、というふうに、お客さんも一緒にパスを楽しんでる感じがするのがいいですね。

時々だから私がうわーって止まらなくなって(笑)、エドマールがお手上げみたいな顔をすると、同じタイミングでお客さんもお手上げみたいな笑い声が出ることがあって(笑)。それで私がカーン! てやると、お客さんも「行け!エドマール!」みたいになって(笑)。

——テニスのラリーのようでもあるし将棋みたいでもあるし。

上原 そういう1対1っていうシングルスみたいに見えるときもあれば、今度は急に二人がダブルスになってお客さんに向かってくる感じもあって、そのコンビネーションは面白いですね(笑)。

エドマール 来てくださる方を楽しませたいし、人生の希望を持ってもらいたいし、人生を闘っていく人たちにインスピレーションを与えたいと思っています。

——お客さんも参加してるような印象があります。

上原 そう、だからよく言われるのは「演奏したように疲れた」と。まるで自分もプレイしたような気持ちになったって。すごく参加をしてる気持ちが強いんだと思うんですね。会場に様々なエモーションが渦巻いてるのがわかるんです。すごい歓喜だったり泣いてる人もいて、ほんと喜怒哀楽っていうものを恥ずかしがることなく、音楽に任せて出すっていうような会場の雰囲気です。

エドマール やっぱり全てに置いてインプロヴィゼーションがあるということは、毎回新しいことがそこにあるっていうことだと思います。

上原 人生って即興なので、すごく自分自身を投影しやすいんだと思うんです。即興演奏っていうと、「インプロヴィゼーションってどうやるんですか?」って左脳で考えがちなんだけど、みんなやってること、普段会話をすることもインプロヴィゼーションだし、毎日生きること自体がインプロヴィゼーションだから、音楽を聴いてるとそれを右脳で感じられるんじゃないかな?っていうふうに思います。

——なんのために生きるのかとか、勇気をもらいますね、お二人の音楽からは。そして目下ワールド・ツアー中だと思うんですが、各地の反応で印象的なことはありますか?

エドマール 興味深い思い出は多すぎます(笑)。美しい出来事と面白い出来事とどっちもあります。

上原 一番近々のライヴはブエノスアイレスだったのですが、“リベルタンゴ”という曲はピアソラの曲で、アルゼンチンの人にとってはとてもスペシャルな曲なんです。それを弾きだした時にお客さんの反応というのが、私たちがアルゼンチンという国に対して敬意を払っている、それに対して「ありがとう」みたいな拍手と歓声で、この土地ならではだなという感情が伝わって来て、とても感慨深かったです。

——ツアーはいつ頃まで予定されているんですか?

上原 12月までですね。ヨーロッパはパリを皮切りに始まって、いろんな国に行くんですけど、でアメリカ、カナダを回って日本と中国ですね。

——スタジオレコーディング盤は作らないんですか?

上原 今のところ予定はないんですけども、基本、スタジオで録ってもやることが変わらないかもしれないんですよ、私たちの場合は(笑)。

[Trailer] Hiromi Duet featuring Edmar Castaneda

RELEASE INFORMATION

『ライヴ・イン・モントリオール』

【対談】上原ひろみ×エドマール・カスタネーダ  2人のエネルギーが凝縮されたライヴ・アルバム『ライヴ・イン・モントリオール』 UCCO11888018-700x700

2017.09.20
上原ひろみ:piano
エドマール・カスタネーダ:harp

SHM-CD+DVD 初回限定盤
UCCO-8018
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SHM-CD 通常盤
UCCO-1188
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EVENT INFORMATION

上原ひろみ×エドマール・カスタネーダ
LIVE IN JAPAN TOUR 2017

11月22日(水) 神戸国際会館こくさいホール
11月24日(金)~26日(日) ビルボードライブ大阪
11月28日(火)~30日(木) コットンクラブ
12月1日(金)~3日(日) ブルーノート東京
12月5日(火) 名古屋・三井住友海上しらかわホール
12月6日(水) 福岡国際会議場 メインホール
12月7日(木) 静岡市民文化会館 中ホール
12月8日(金) 東京・すみだトリフォニーホール

上原ひろみ×熊谷和徳 TOUR 2017

12月16日(土) NHK大阪ホール
12月20日(水)、21日(木) 東京・Bunkamuraオーチャードホール
12月23日(土) 名古屋・日本特殊陶業市民会館ビレッジホール
12月26日(火) 仙台電力ホール
12月28日(木) 倉敷市芸文館

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text & interview by 石角友香