——デビュー作の『Warm On A Cold Night』は素晴らしいアルバムだけど、ホンネの音楽からは沢山の影響が聴き取れると思うんだ。70-80年代のソウル、R&BからAOR、時にはマイケル・ジャクソンとかの80年代のポップスまで幅広いよね。実際のところ、ふたりはどんな音楽を聴いて育ったの?
ジェームス 君の推測通り、僕にとってマイケル・ジャクソンは大きいね。僕が初めてライブを観たアーティストでもあるんだ。8歳の時にウェンブリー・アリーナで観たんだよ。そのときは完璧にブッ飛ばされたね。今でも僕はマイケルがベスト・パフォーマーだと思う。クインシー・ジョーンズのプロダクションも大好きだしね! ハーモニーの作り方とか。
アンディ ハーモニーもそうだし、ドラムサウンドもだよね。あと、僕らはシモンズのスネアの音も好き。80年代的スネアサウンドだよね。
ジェームス ドラム・マシーンの808も大好きだよ。
アンディ 僕は家族の影響が大きいかな。二人の姉がいるから。マイケル・ジャクソンもだし、レッド・ツェッペリンとかも聴いていたし。あとは、デスティニーズ・チャイルドとかの、R&Bもね。
ジェームス デスチャは最高だよね。今回のアルバムを作ったときにはライとか、inc.とか、ジェイムス・ブレイクとかの影響もあるかな。
——アルバムを作るのにはどれくらいの時間が掛かったのかな?
アンディ 2日だよ。ごめん、嘘(笑)! スタートからは2年だね。やろうと思ったら2日で出来るんだけど……(笑)! 実際は2年掛けてサウンドをビルド・アップしていったよ。
——作る前から完成品のイメージはあった? それとも1曲ずつ作りながら積み上げていったの?
ジェームス それが2年かかった理由でもあるかな。いろんなプロダクションを探りながら作っていったから。はじめに僕らが書いた曲も書いた当時とアルバムでは結構違うんだ。作っている過程で沢山学んだこともあるからね。それにアルバムのために30曲くらい書いて、そこから選んでいったんだ。EPも含めて書いた曲はリリースしているから、次のアルバムのためにまた曲を書くことに集中するのが今から楽しみだよ。
——ところでロンドンからはこの数年次々と素晴らしい才能が現れているよね。ジェイムス・ブレイクに始まり、ジェシー・ウェア、サンファにソーン、トム・ミッシュからラプスリー、そしてオー・ワンダーまで。でも彼らの大半はソロ・アーティストか、もしくはデュオでバンドが全くいない。これってなんでなんだろう?
アンディ あー、なるほどね。うーん、ちょっとバカっぽく聞こえるかもしれないけど、僕が思うのは単に複数の人間を巻き込みながら一つのものを作り上げるのってすごく難しいんだよね。僕のアイデアをジェームスが気に入って、それをまた別の人も気に入って……ってプロセスを得るのは凄いタフに感じる……。
ジェームス 誰か一人でも気に入らなかったらそのアイデアが止まっちゃうからね。
——僕が思うのは、DTMの進化によるプロダクション環境の進化とストリーミング・サービスというアーキテクチャは、バンドではなくて、ソロとか少人数での活動を促しているんじゃないかって思うんだよね。バンドっていうのは、レコーディング・スタジオとレコード/CD、そしてマス・メディアの産物だったのかなって。
ジェームス まさにそれを言おうと思ってた!
アンディ そうだね、今日曲を書いたら、明日リリースできちゃうからね。これってかなり違う。
ジェームス レコーディング・スタジオって高いしね。今なら素晴らしいソフトウェアでアナログみたいなセットアップも出来ちゃうし、さっき、君が挙げたトム・ミッシュなんかも全てを自分でやってしまえるアーティストが目立ってきているよね。
——ちなみに二人はDTMのソフトは何を使っているの?
アンディ ライブではAbleton Liveで、レコーディングではLogicだよ。でも時々、使うソフトウェアは変えてきたんだ。使い慣れ過ぎたコンフォート・ゾーンから敢えて出るようにしているんだ。
ジェームス ライブでは僕らは実際にキーボードもギターも弾くし、それを大事にしているけどね。
——ジェームスのお気に入りのキーボードはプロフェットだよね?
ジェームス その通り!
——二人はデュオとして音楽を作ってきたわけだけど、バンドに夢中になったことはなかったの?
アンディ 僕らが出会った頃(大学生のとき)は、ふたりともレディオヘッドにハマっていたよ。
——どのアルバムだろう? 『KID A』?
アンディ エレクトロニックになってからだね。 ハマったのは『In Rainbows』の頃かな。素晴らしいアルバムで夢中になったよ。
ジェームス アークティック・モンンキーズとかも好きだったじゃん?
アンディ そうだね、アークティックとか、ザ・ストロークスとか。
ジェームス ブラーもね。
アンディ いわゆるブリット・ポップと呼ばれるバンドとか、インディー・ロックも好きだったよ。
——でも、バンドを組もうと思ったことはなかったの?
アンディ 昔はあったんだけどね!
ジェームス でもさっきも言った通りバンドはいつも難しいんだよ(笑)。
——なるほど(笑)。今回のアルバムの雰囲気って「都市の中でのロマンス/愛」をすごく想起させるから、僕は、君たちの音楽を「シティR&B/シティ・ソウル」って呼びたいんだけど、これはホンネの音楽を表すのに適していると思う?
アンディ おぉ! いいね、それ! ポスターに書いてあるキャッチ・フレーズをそれに変えるよ(笑)!
ジェームス “シティR&B”、『Warm On A Cold Night』!ってね。
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