2014年の年間ベスト・アルバムのリストを眺めてみれば、その中にはこの2レーベルの作品も多く見つけられるんじゃないだろうか。片やレディオヘッドやアークティック・モンキーズといった人気アクトから気鋭のインディ勢までを擁し、片やエイフェックス・ツインやフライング・ロータスを筆頭にクラブ・カルチャーから派生するシーンの最先端を伝える、〈ホステス・エンタテインメント〉と〈ビートインク〉。2つのレーベルは共に中目黒にオフィスを構え、インディペンデントながらも大規模な興行を成功させたり、自社で主催するフェスを運営したりとユニークな企画/プロモーションで若い世代を中心に人気を博している。

もちろん、音楽カルチャーの主役はいつの時代もアーティストとリスナー。しかしその陰では、レーベル担当氏を含む様々な人々が両者を繋げるべく日々頭をひねっている。そしてそんな人々だからこそ見える、2014年の景色もきっとあるはず。そこで今回はクロスビートの年間ベスト号『CROSSBEAT YEARBOOK 2014』の特別対談企画を一部お届け。両レーベルから飯沢麻里さんと白川雅士さんに登場してもらい、レーベル担当者としての14年を語ってもらった。

〈ホステス〉×〈ビート〉、洋楽インディ・レーベルの対談が実現! これからのレーベルの在り方とは? interview141218_hostess-beat_sub1

Interview:飯沢麻里(ホステス・エンタテインメント)×白川雅士(ビートインク)

自己紹介とお互いへのイメージ

––––それでは、まずはお二人の自己紹介からお願いできますか。

飯沢麻里(以下、飯沢) 〈ホステス・エンタテインメント〉の飯沢です。プロモーション・マネージャーを行ないつつ、イベント制作・運営をメインで担当しています。

––––飯沢さんは<Hostess Club Weekender(以下HCW)>に初期から関わっていますよね。

飯沢 そうですね。<HCW>は12年2月の立ち上げの時から担当しているんですけど、それこそ会場探しから始めました。でも最初は、学生の頃に小さいイベントをやったことがあるぐらいで全然経験がなくて。何千人規模のイベントを担当したことがない本当にイチからのスタートだったので、それがよく言われる手作りイベント感に繋がっている部分はあると思います(笑)。でも「それがいい」って言ってくださるお客さんも多いので。個人的に好きなアーティストはモグワイ。洋楽を聴きはじめたきっかけは彼らでした。あとはフォー・テットやカリブーがお気に入りですね。

白川雅士(以下、白川) 〈ビートインク〉の白川です。基本的な業務としては、リリースにまつわるプロモーションと、イベントにまつわるプロモーションを担当しています。資料制作からマーケティング・プランニングまでやりますし、うちは宣伝担当が少ないので、音楽専門誌からWEB、一般誌、TVまで担当してますね。

––––白川さんはプロモーションを担当されるようになってから、もう長いですよね?

白川 もう10年ぐらいですね。それまではまったく違う業界にいたんです。だから音楽がどうやってプロモーションされるのかも分からないまま入ってきた人間なんですよ。

飯沢 実はわたしもちょうど10年です(笑)。学生の頃にインターンから始めて、ちょこまかとやらせてもらっていたので。

白川 でも年齢は全然違いますよね。僕はもっと上で、80年代から90年代の洋楽バブルの恩恵を受けた世代なんですけど、当時はこの業界にはいなくて、クラブの運営をやっていました。その頃のクラブ・ミュージックのプロモーションって、ヴァイナルを持ってDJにオススメして回る昔ながらの方法で、自分の店にもうちのボスがプロモーションに来ていて。それで店をたたんだ時に「うちに来てみれば?」と声をかけてもらったのが今に至るきっかけでした。

––––なるほど、そうだったんですね。

白川 好きな音楽を言うと、もともとクラブ・リスナーなので、ロックは全然知らなかったんです。それこそ最初は「インディ・ロックとは何ぞや?」という感じで。ロックと言えば中学生の時に聴いていたニュー・ウェイヴで、いわゆる第一次洋楽ブーム世代だったり、MTV世代だったりする感じですね。でも今は仕事で自社モノであったり、新しい音楽の流れを押さえる必要があるので、仕事でもプライベートでも古い音楽は一切聴かないです。

––––それは凄い! 今好きな音楽というと、どの辺りでしょうか?

白川 基本的にいつも新しい音楽を探してるんで、今一番好きな音楽は決められない部分もありますけど、自社アーティストで言うとクァンティックですかね。

飯沢 ああ、クァンティックよかったです。

白川 あとはフライング・ロータス。サンダーキャットもそうなんですけど、音というよりも彼らの姿勢が好きなんですよ。音は人によって好き嫌いがあると思いますし、自分にももちろんあるんですけど、それ以前に、こうやって新しいことが起こっていく動きのようなものに興奮している部分があると思いますね。

Flying Lotus – Never Catch Me ft. Kendrick Lamar

––––お互いのレーベルに対しては、どんなイメージを持っていますか?

白川 〈ホステス〉さんのレーベル・ベースのカタログってとても魅力的ですよね。旬のアーティストが沢山いるレーベルを抱えてるので、その辺りはよくチェックしています。

––––最近の見え方で言うと、漠然と同じシーンの音楽をシェアしつつも、〈ホステス〉さんはインディ・ロック寄り、〈ビート〉さんはクラブ・ミュージック寄り、というイメージで。

飯沢 そうですね。うちも最初はマシュー・ハーバート辺りから始まっているのでクラブ・ミュージック寄りだったんですけど、今のレーベルのイメージで見るなら、〈ビート〉さんはやっぱり〈ワープ〉のカタログがあって、<Electraglide>もやられているので、クラブ・ミュージック寄り。一方うちはアークティック・モンキーズやアニマル・コレクティヴのようなアーティストがいるので、インディ・ロック寄りという印象ですよね。ただ、お互い扱うレーベルがインディなので、そこで共通する部分があるというか。

白川 でも面白いのは、うちがアークティック・モンキーズをやってもきっとうまく行かないんですよね。逆にカリブーだったりダフニだったりはこっちにも任せてほしいとも思いますけど(笑)。

飯沢 カリブー(含めダフニ)やフォー・テットは好きなのでダメです!

白川 (笑)。あとは、「オマール・スレイマンは俺に任せてくれよ! 俺なんだよ!!」って思ったり。

飯沢 オマールは確かにそうかもしれない(笑)。

白川 結局、ないものねだりじゃないですけど、それぞれのものがよく見える部分もあるということですよね。

飯沢 お互いにプロモーション出来そうなアーティストに関して、「あ、そっちがやるんだ」「今回はこっちか」ということがちょくちょくあります。

CARIBOU – Our Love

次ページ:イベントや音楽を届けることへの工夫