ーーところで、ヒロインの家庭が母子家庭であったり、ヒロインの男友達がどうしようもない奴だったり、男ではなく男装している方が活躍したりと、完全に「男」が排除されているように感じたんですが、それはなぜですか?

中川さん あー、本当ですね。

井口監督 あっ! 母子家庭っていうのは今、気がつきました。それはね、僕自身、自分は男なんですけど、男でいることが結構居心地が悪いというか。男同士の皆で群れる体育会系みたいなのがすごく苦手なので、むしろ女子っぽくて茶道部とかすごい入りたかったんですよ。

中川さん えーっ(驚)!

井口監督 中学とかは百人一首部とかそういうの入りたかったけど、入れず…。まぁ、そういう自分の中で女子DNAが眠っているのを自覚していますし、女性への憧れみたいなのがあったので無意識的にそのような事を入れちゃうんですね。だから、自分の中で女性を描いたほうが楽なんですよ。脚本とか書いていて、どんどん女性の台詞は出てくるのに、男性を描くと皆ロクでもない台詞しか言わないし、すぐ死んじゃうし、みたいな(笑)。

中川さん それ、嬉しい(笑)。中川家の男性は皆いなくなるか、早死にするかのどっちかで、私も母子家庭で育っていて。しかも女子校だったので、なんだか男子があんまり好きじゃないままで。だから良くここまで来たなってすごく思いますね。今回は撮影していて男性はジジ・ぶぅさんしか会わなかったんですよ。

井口監督 あー、そうですね! 中川さん、斎藤工さんにも猫さん(猫ひろし)にも会っていないんですよね。

中川さん なんかアメリカ映画とかってすぐにキスするじゃないですか。未だにそれが苦手で…だから『パシフィック・リム』はキスしなかったのでプラス50点だったんですけど(笑)。なので、今回はそういうことを気にせずに女子の友情に徹していられたから凄いやりやすかったというか、嬉しかったですね。ああ、そっか。なんでこんな居心地が良いのかと思ったら女子ばっかりだったからか。そっかそっか。ありがとうございました!

井口監督 いえいえ。まあそんな感じで自分の願望が結構入っているので、本当に無意識でこの世界になっちゃった、っていうのが正直な話ですね。甘ロリがここまでいっぱい出てくる事も実はあまり意識していなくて、なんか書いている時に気持ち良かったからこういう展開になっちゃいましたね。だからこの内容になっていって凄くやりやすかったです。

中川さん ピンクまみれだし、現場では監督が一番ガーリーでしたからね。

井口監督 ありがとうございます。

中川さん オネエ言葉治んなくなっちゃったし。

井口監督 ノってくるとオネエ言葉になっちゃうんですよ。「良かったわよ★」、みたいな。

中川さん 「今素敵♥」みたいな感じでおっしゃるから、面白いですね(笑)。

井口監督 今回、皆でケーキを食べたりとか紅茶を飲んだりとかが撮影中の良き思い出になってるんですよね。

中川さん リアルな女子会に行っても実際そんなんじゃないですか。意外にその場にはいない人の悪口だったり(笑)と恐ろしいもので。だから、「キャッキャッ♪ ウフフ」でピンクなオーラの舞う女子会っていう理想のモノを、遂に本当にピュアな気持ちでできましたね。皆で紅茶飲んでケーキやマカロン食べて、その中で監督が両手で一番大事そうに食べてて…。

井口監督 撮影という名の女子会でしたね、一言でいうと。

【インタビュー】しょこたん&井口昇監督『ヌイグルマーZ』特別取材「撮影という名の女子会だった」 interview130124_nuiguruma-z_film1

(C)2013 ヌイグルマーZ/フィルム・パートナーズ

ーー(笑)。でも本作、女子会にしては殺陣がすごく迫力ありますね。

井口監督 平成「仮面ライダー」シリーズを手掛けている方がその場で振りをどんどんつけていたんですよ。なので、中川さんも武田さんもぶっつけ本番でスタント無しでしたね。僕は絶対に自分にはできないなって思いました。女優さんのタフさに圧倒されながら現場にいた感じでしたね。

中川さん 皆、強かったですね。梨奈ちゃんはもう本当にストイックで真面目な方で。なんでも「はい!」ってこなしちゃうんですね。階段を上りながらゾンビ達を蹴り倒していくシーンとか、すごく難しいはずなのにワンカットで決めちゃうし。彼女の衣装は眼帯で片目が塞がれているし、デザイン的に『エヴァ』ボディじゃないですか。だから、ハイキックとか難しいし、カイロも貼れないぐらい薄い衣装だし。でも、泣き言一つ言わずに全部一発で決めちゃうからすごいカッコ良くて! だから、こんなかっこいいヌイグルマーはダメ子の理想の集大成として顔も変わるワケで。で、「ダメ子がダメなままじゃ、ヌイグルマーとしてイコールになれない!」と、ヌンチャクのシーンは私も命がけでやろうって凄く心を震い立たせてもらえましたね。

しかも、私がオタクとしてもの凄く興奮し、通い詰めていた頃のタイムレンジャー(『未来戦隊タイムレンジャー』)のヒーローショーで、一番握手をしてもらっていたタイムレッドを演じていた人がゾンビ軍団の中にいて。その方を、「今ヒーローとして、昔自分が作ったヌンチャクで倒すんだ!」っていうのが、なんか色んな運命を感じて。走馬灯を見ながら挑んでいました。

で、ここでカッコ良く決められなかったらダメ子がダメなままで終わっちゃうから絶対に決めてやるって思って。ダメな人が「自分はダメだ」って落ち込んだりした時に観たら、「ダメでも良いんだ、ダメでも人は誰でも完璧な人もいないし、好きな事とかをやっている時だけはこういう風になれるんだ」って感じてもらいたい。人が興奮している時って輝いていると思うんですよね。だから、それで良いって思わせてくれる映画になっていると思います。ダメ子はヌンチャクが好きで振ってたんだろうな、ヒーローになれて戦えて嬉しいんだろうなっていう。なんだろうな…仕事とかそういうのを超えて、もう嬉しすぎてメラメラなんか出ちゃってる、脳からダクダク汁が出ちゃってる状態で挑んだので、やっぱり人生の色んなものが乗っかっていますし、そこを全て取り払って観たとしても、この映画ってスカッとして面白いと思うので、すごく胃薬になる映画になっているなと思いますね。

ーーヌンチャク凄く良いシーンでしたよね。「おおお! 遂にダメ子がアクションを!」って熱い気持ちになりました。

中川さん ありがとうございます! 嬉しいです。

ーーそういえば、女子会を開かれていたという話も伺いましたが、本作も監督節を感じる下ネタがまたいい感じで入っていましたね!

井口監督 まぁそうですね〜(笑)。

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