――シングルとしてリリースされた“Girl”、”Sleep Sound”以外は全て新曲となる今作ですが、どんなプロセスで今作を完成させたのか具体的にお聞かせください。
曲をリリースするというアイディアはツアー(DJとしての)の時からあったんだ。それをアルバムにすると一度決めた後、去年の夏と秋にそれを踏まえて曲を完成させて一つにまとめたんだ。だから、今回の作品はいくつかのトラックの集まりというよりも全体で一つの作品となったよ。僕自身、アルバムというのは全ての曲で一つの流れを作るものと考えているからね。あと、ダンスフロアのためだけのレコードではなく、様々なシチュエーションで聴くことができる作品になったと思っているよ。
――まさにFACT Magazineのインタビューで「アルバム制作の上で好きなパートは曲を連携させてアルバム作品としてのバイブを生み出し、物語を紡ぐかのように曲を並べられたとき」と答えていましたが、今作から伝わる物語を敢えて言葉で説明するとしたら何と答えますか?
このアルバムが持っているのは、ストーリーというより流れかな。感情の幅、最初から最後までのアップダウンが激しいんだ。でも、それらは全部繋がっていて一つのフィーリングとして聴く事が出来る。今作は人をダンスさせるためだけの作品じゃなくて、聴く人を感情の旅に連れていくような作品となっているんだ。言葉で説明するのはすごく難しいから、とりあえず聴いてもらいたいね(笑)。
『イン・カラー』ジャケ写
――“In Colour”というタイトルに込めた意味をお聞かせください。
ザ・エックス・エックスって白黒のダークなイメージがあると思うんだけど、本当の僕たちはカラフルでハッピーな部分も持ち合わせていて、皆が持っているイメージ以上のものがある。それを見せたかったんだよね。
――ザ・エックス・エックス『コエグジスト』リリース後、かなりの数のDJ公演を行ってきましたが、その経験から何か『イン・カラー』に還元されたものはあるのでしょうか?
もちろん。沢山人に会ったり、ステージでの経験を積んだことで自分にもっと自信がついたよ。それは確実に音楽に反映されていると思うよ。
――具体的にどんな感情が今作に反映されましたか?
ずっと旅をしていたから、家に帰るのがすごく楽しみだったんだ。だから、イギリスやロンドンのことを想う気持ちがインスピレーションになっている部分が沢山あるよ。
――私生活やパーソナルなものを音にしようと敢えて意識することはありますか?
特定の何かを自ら表現しようとしたことはない。でも、何であっても音に出て来ているのは自分が実際に持っている感情だと思うんだよね。
――あなたは以前、ダンスミュージックにおいての魂(soul)の存在についての重要性を語っていましたが、それを踏まえて曲作りの上で何か意識していることはありますか?
あまり意識はしないけど、人に何かを感じさせる音楽を作りたいとは常に思っている。皆が僕の音楽から何かを感じてくれたら本望だよね。僕にとって魂や感情のこもっていない作品を作るより、淡白で冷たい作品を作るほうが難しいんだ。
――今作ではザ・エックス・エックスのメンバーでもあるロミーとオリバーがフィーチャーされていますが、曲を完成するまでのアプローチはザ・エックス・エックスの時と何が違ったでしょうか?
ザ・エックス・エックスの時は最初から三人で一緒に作るんだけど、今回は自分で曲を作ったからもっと挑戦的になれたんじゃないかなあと。一対一(ロミーかオリバー)で作るプロセスがまず違うしね。ツアーでロンドンにいない時期が長かったから、いくつかはインターネット上で作業したんだ。バンドの作品の時は必ず三人でスタジオに入るから、そこは大きな違いだったよね。
――ザ・エックス・エックスとしてはもちろん、ジェイミー・エックス・エックスとしてもアメリカでの活動を積極的に行なっていますが、イギリスのいちミュージシャンとしてあなたがアメリカのシーンに期待することと疑問に感じていることがあればお聞かせください。
実はまだまだ知らないことだらけなんだ。でもイギリスのシーンとの違いは、やっぱり規模が大きいこと。国土が大きければ、オーディエンスの数もすごいし幅が広いんだよね。だから、アメリカでは様々な音楽をプレイすることが出来て、自由にやれるという意味ではすごくポジティブにとらえているよ。
――ハドソン・モホークとカニエ・ウエスト、カシミア・キャットとアリアナ・グランデ等とシーンの垣根を越えたプロデュースを最近よく目にしますが、ドレイク、リアーナへの楽曲提供を行ったこともあるあなた自身としてそういった流れをどう捉えていますか?
うーん……正直わからない。あまり考えすぎないようにしている。誰かが自分と一緒に作業したいと言ってくれて、自分もそのアーティストと作業したければ実現するって感じかな。でも、それを土台にはしたくないんだ。だからそんなに沢山プロデュースや楽曲提供をするわけじゃない。本当にリスペクト出来るアーティストじゃないとやらないんだ。その人の音楽が素晴らしいと思える人じゃないとね。
――そういった作業自体は好きですか?
自分のための作品じゃないから難しいけど、楽しい作業ではあるよ。アーティストとして成長も出来るしね。