音楽の素晴しさの一つは“感覚的”に享受できるということだろう。そこには小難しい説明は要らないし、論理的な考察も全く必要ない。作り手側からはどうだろう? 自分が感じたことを音楽へ変換する。簡単なことではないが、それだけに聴く人を何かしら響かせることができたらこれ以上に素晴らしいことはないだろう。

ザ・クリエイターズ・プロジェクトのインタビューにて「トラックを作るときは出来るだけ理屈とかを考えないようにしている。だって、好きなものは好き、それに理由はないからね」と語るのはザ・エックス・エックスのメンバー、ジェイミー・スミスことジェイミー・エックス・エックス(以下、ジェイミー)だ。ザ・エックス・エックスの活動の傍ら、DJを始めシングルのリリース、2011年にリリースされた詩人ギル・スコット・ヘロンの作品をリワークした『アイム・ニュー ・ヒア』などソロとしてもコンスタントに活動を行ってきた彼が初となるフル・アルバム『イン・カラー』をリリースする。

今作ではジェイミー自身で作りあげた作品だからこそ、彼の内面から湧き出るパーソナルな部分がそこら中に散りばめられている。不穏なビートで幕を開ける“Gosh”は後半、冒頭とは裏腹に光が差し込むような祝祭感を与える。アルバム発売に先駆け公開された“Loud Places(ft Romy)”では、ザ・エックス・エックスのロミーがボーカルとして参加し、同MVの中に映る2人のように普遍的で過去の恋人へ別れを告げる切ない詩が歌われる。そこにジェイミーのダイナミックでドラマチックなサウンドが加わり美しいハーモニーを奏でるのは、ザ・エックス・エックスのそれを彷彿させ、ファンはニヤリとするであろう。

Jamie xx -“Loud Places (ft Romy)”

また、今までになかったアプローチで驚かされるのは9曲目に収録される“I Know There‘s Gonna Be (Good Times)(feat. Young Thug & Popcaan)”だ。アトランタ出身のラッパーYoung ThugとジャマイカにルーツをもつPopcaanをゲストに迎えた曲。ここ、最近さらに勢いづくトラップ(・ミュージック)のエッセンスをジェイミー流に料理した本曲は時代を象徴する曲となるだろう。

Jamie xx -“I Know There’s Gonna Be (Good Times) ft. Young Thug&Popcaan”

米・音楽誌FADERのインタビューによると彼はツアーでイギリスから離れている間、ホームシックにならないように故郷を思い出す音をいくつかサンプリングし曲に起用したという。その中でも今作を締めくくる“Girl”の《The most beautiful girl in Hackney》というパートは英・TVシリーズ
『TOP BOY』からサンプリングしたそうだ。そんな彼の繊細な部分から、そして『イン・カラー』というタイトルから読み取れるように、彼は「様々な感情を表現したかった」と語る。「喜怒哀楽」だけでは収まらないジェイミーが魅せた幅が今作一番の聴きどころと言えるだろう。

そして、今回アルバムの発売に合わせ、彼に電話にてインタビューをすることができた。彼にとってのソロプロジェクトの位置付け、ザ・エックス・エックスの今後の活動予定、アメリカのダンスシーンについて聞いてみた。

Interview:Jamie xx

Jamie xx、感情の欠片を繋いだ作品『In Colour』 interview150601_jamiexx_asha

――今年一月の日本で行った公演はいかがでしたか?

日本であんなに大きな場所でDJしたのは初めてだったから、単純に楽しめたよ。日本はクラブの質が本当に良いよね。音響のシステムがとにかく良いんだ。この前プレイしたリキッドルームも最高だったよ。

――日本のオーディエンスに対してどんな印象をお持ちですか?

日本のオーディエンスはいい意味でやっぱり変わっているよね。変わった流れであったり、新しいものに対してすごくオープンだし、音楽にのめり込んで聴いてくれる印象があるよ。

――新作『イン・カラー』についてお聞かせください。毎回、シングル/EPを楽しみにしていただけに今回のアルバムリリースは嬉しかったです。アルバムとして作品を発表することに何かきっかけはあったのでしょうか?

6年前から頭の中で作り続けていた音楽を外に出したいと思ったのがきっかけかな。次のザ・エックス・エックスの新作が出来る前の今がパーフェクトなタイミングだと思ったんだ。

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