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自らのDJプレイをマルチアングルの映像で赤裸々に公開し、後続に絶大な影響を与えた不滅の業績にして、ジェフ・ミルズの映像作品『エキシビショニスト』についてジェフ・ミルズがメールで質問に答えてくれた。

自らのDJプレイをマルチアングルの映像で赤裸々に公開し、後続に絶大な影響を与えた不滅の業績にして、ジェフ・ミルズ初の映像作品『エキシビショニスト(ジェフ・ミルズ的な諧謔で、露出狂といった意味)』。あの衝撃から11年、長きインターバルを経て、その続編となる『エキシビショニスト2』がいよいよリリースされた。

「2DVD + CD」というボリュームで世に送り出される本作には、ドラムマシーン“Roland TR-909”のソロによるライヴ演奏やドラマーとの即興演奏などがマルチアングルで撮影されている他、なんとジェフ・ミルズが楽曲を生み出す一部始終が本人の解説付きでドキュメントされた映像も収録されている。早い話が、ライヴや即興演奏、楽曲制作において、ジェフ・ミルズがどのようなテクニックを使っているかのみならず、その一瞬一瞬にどのような閃きがあり、それがどのように思考として発展し、表現として外に放たれていくのか、その模様をリアルタイムで目撃することができるのだ。ジェフ・ミルズの言葉を借りれば、テクニックを重視した前作に比べ、本作では「DJや音楽プロデューサーのもっとメンタルな面を強調している」のだという。つまりミックスやイコライジングといったアクションとして目に映ってくるものだけではなく、目に見えない思考やアイディアを可視化しようとする試みでもあるというわけだ。

近年のジェフ・ミルズの活動はもはやクラブだけにとどまらない。映画、現代アート、コンテンポラリー・ダンスといった音楽以外のフィールドとのコラボレートを精力的におこない、その表現の場所も美術館、科学館、映画館など、もはやDJとは思えないほどにその活動の幅を広げている。2014年には初の主演、プロデュース作品『Man From Tomorrow』がパリのルーブル美術館を皮切りに、ニューヨーク、ロンドンの美術館で上映され、2015年の前半はルーブル美術館オーデトリアムでレジデント・イヴェントを持ち、さまざまなアーティストたちとコラボレーションをおこなっている。ジェフ・ミルズのこうした意欲的な活動は、DJという表現方法の可能性を広げ、その価値を高めようとしているようでもある。『エキシビショニスト2』は単に11年前の続編というだけではなく、こうした近年の活動の延長線上にある作品であるとも言えそうだ。11年ぶりの『エキシビショニスト』についてジェフ・ミルズがメールで質問に答えてくれた。

『エキシビショニスト2』トレーラー

Interview:

ジェフ・ミルズ、伝説の映像作品の続編について語る music150612_lm_3

——前作『エキシビショニスト』から11年が経ちます。あの作品は文字通り、あなたのDJプレイを丸裸にして公開したようなもので、ある意味では、あれでやり尽くしたというか、まさかその先があると思っていたリスナーは少なかったのではないかと思います。続編(『エキシビショニスト2』)のアイディアはいつ頃、どのように生まれ、発展していたったのですか?

2年ほど前に最終的決断をした。DJやエレクトロニック・ミュージックに関してまだ知られていないこと、見られていないことがたくさんあると思ったからだ。それに加えて、アドリブ、音楽の即興性という側面も追求したいと思った。DJセットや音作りに準備なしで臨んだら、DVDを通して様々なことを表現できると考えたんだ。

——本作ではDJ中の時の手元はもちろん、ドラムマシーン“Roland TR-909”のライヴ演奏やドラマーとの共演、スタジオでの楽曲制作まで惜しみなく公開しています。本来であればそのような部分は秘密にしておきたいアーティストがほとんどだと思います。でもあなたは赤裸々なまでにすべてを公開する。それはいったいなぜなのですか?

「DJミックス」や「トラック」がいかに作り上げられていくかをよりよく理解してもらうために公開したんだ。理解してもらえればその価値もより深まると思ったからだ。価値あるものという認識ができれば、もっと多くの人に興味を持ってもらえるだろう。

——11年前と現在でコンセプトに変化はありますか?

最初の『エキシビショニスト』はテクニック重視だった。今回はDJや音楽プロデューサーのもっとメンタルな面を強調している。自分の感情をいかにして他人に伝わるように整理していくかというようなことだ。

——本作では、通常のダンスフロアからは見る事ができないマルチアングルからあなたのプレイを観察することで、あなたがDJをやっている時に瞬時に何を考え、どういう表現をしようとしているのか、その思考の変化や即興性のようなものをより感じることができて、とても刺激的でした。本作においてあなたはこの思考の変化であったり、即興的なインスピレーションのような形のない、非常に微妙なニュアンスをアートにしたかたかったのではないかと感じたのですが、いかがでしょうか?

その通りだ。(DJや曲作りに)完璧な、あるいは容易いプロセスはない。僕のマインドは常に変化している。それをレコーディングの中に表現したいんだ。(DVDの中の)すべての曲、ミックスはリアルタイムで、一切編集なしで収録されている。だから起こったすべてのことが記録されている。

——今回、TR-909のライヴ演奏をマルチアングルで見ることができたのはファンにとっては非常に嬉しいし、改めてその超絶テクニックに衝撃を受けました。ジェフ・ミルズの音楽においてTR-909は欠かせないものだと思いますが、いま改めて教えてください。なぜあなたはTR-909を使い続けるのでしょうか?

909は僕が必ず頼りにしている数少ない機材のひとつだ。ドラムの音、チューニングの幅、それぞれのレゾナンス(反響)、アタックなど、すべての要素が自分にとって大切なものなんだ。クラシック・コンサートでのライヴ、DJセット、スタジオなどすべての場合において。もしもマシン内の音がもう少し改良されれば、なお使いやすいのだが。

ジェフ・ミルズ、伝説の映像作品の続編について語る music150827_jeff-mills_main-780x791

『エキシビショニスト2』ジャケット

次ページ:もしできれば、遠い将来「The Visitor」を解体してその魂をまた別の形で継承していきたいね。

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加藤直宏

加藤直宏

編集者/ライター

岩手県盛岡市(旧・都南村)出身。1976年生まれ。1990年代末、大学在学中に雑誌『ele-king』の編集部に在籍し、編集者/ライターとしてのキャリアをスタートさせる。『ele-king』休刊の後、雑誌『remix』の編集部、音楽配信サイトのエディターを経て、フリーに転身し、さまざまな音楽メディアに寄稿、編集者として関わる。現在は音楽関係の会社に勤務しながら、執筆活動もおこなっている。

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