Joan Cornellàさんの作品について
——インターネット文化についてはどう思いますか?
僕にとってもそうだけど、インターネットは何かを披露するにはいい場所だと思う。とても自由だし、注目もされるし。ただSNSはポストしても良いものの基準を決めているのは本当にダメなアイデアだと思う。
インターネットはアイデアを表現したりするために、本当に自由な場所じゃなくちゃいけないよね。だからFacebookやTwitterなどは、投稿可能な内容の基準を決めていて、みんなが表現する方法を束縛しているのは悪い側面だよ。
——ホアンさんの作品はかなりバイオレンスで受け入れがたい側面もありますが、みんなそれに興味を持つだけでなく、楽しんでいますよね。ホアンさんの作品はそういった意味で、自由を表現していると思います。
そう捉える人もいる。特にアジアに多いよ。香港に行った時は多くの人がそう話してくれた。
——クラウンドファンディングでアニメーションの制作をされていましたが、何か次にやりたいプロジェクトはありますか?
うーん。長編のアニメーションとか色々考えたんだけど、今はわからないかな。それよりも、今は展示をやることを優先していて、これから先もそうなると思う。正直今回やったアニメーションには満足できなかったんだよね。僕もちょっと準備不足だったこともあって、次に何かやる時は長い期間アイデアを練ってからやりたい。
——ホアンさんの作品はかなりブラックな要素が多いですが、幸福に包まれた作品は描いたことありますか?
僕の作品の全ては幸福に関連しているよ。どうしようもないほど残酷な要素を目立たせても、結局は幸福に行き着くんだ。顔とかは幸せそうな顔してるでしょ(笑)。ユーモラスだし。ユーモアと幸福は違うレベルにあるけど、目指すところは同じだと思うんだよね。面白くて笑えるけど、ユーモラスに嫌な感情も内包されていて、考えるところがある。その部分を僕は刺激していきたいんだ。
——ちなみに、好きな色は?
うーん。ピンクかな。活気があるし。でもどうだろう、分からない。特にお気に入りの色とかはなくて、さっきの幸福の話にも関連するけど、作品の中でピンクは自分が表現したいものを表現できる色の1つだね。
——ホアンさんの作品にはピンクのクマも出てきますよね。
あれは何かのテレビ番組に出てくるんだけど、何だっけな。『Care Bears』(ケアベア)だ。80年代のやつ。ピンクとか、明るい色のクマがすごいナイスなことをするんだよね(笑)。あのクマはそれからインスピレーションを受けてるよ。
——ホアンさんのグッズで、Tシャツや本が出ていますが、ホアンさんが作りたいけど、絶対に売れなさそうなグッズのアイデアはありますか?
分からないけど、考えるべきだよね(笑)。誰も欲しくないものを作るのは面白いし。それで、誰も欲しいとは思わなくて、さらに何か求められているものがあるとしても、注目されたら大成功だよね。お金につながることが全てでもないんだし。
——これはQeticの“あいつ”というキャラクターなのですが、どう思いますか?
とてもシンプルで良いね(笑)。日本ではどの世界の人たちよりもキャラクターに親しんでるよね。例えば、違う国ではキャラクターに広告がついてることが多いから。
でも、日本ではそういうのがなくても、キャラクターがたくさんいて、みんな好きだよね。それに、人の顔じゃなくてもキャラクターでみんな納得するし。日本に住んでる友達がいるんだけど、彼女が日本では標識とかにもキャラクターとかカートゥーンがあることを教えてくれたんだ。それは日本以外に見つけられないと思う。そういう文化は好き。
——ちなみに、“あいつ”に名前をつけるなら?
僕は名前をつけたりするのが全然ダメなんだよね(笑)。だから、僕の作品には名前もつけないし、登場するキャラクターの名前もないんだ。いつか何か思いつくかもしれないけど、彼らに名前が必要なのかは分からない。
——ネーミングは必要なことだと思いますか?
場合によるかな。僕が作品を作るとき、時々理解しがたくて何も意味しない名前をつけるけど、それから何かのイメージを連想して欲しくないから。名前をつけるのもつけないのも自由だよ。でも、分類するためとか、必要な時はもちろんあるよね(笑)。
Joan Cornellàさんってどんな人?
——好きなアーティストはいますか?
パリス・ヒルトン。アーティストでも何でもないけど……。うそうそ、大っ嫌いだよ(笑)。好きなのはルイ・C・Kというスタンドアップコメディアン(メキシコ系アメリカ人。脚本家、映画監督としても活躍中)かな。
でも今彼はセクハラ問題とかもあって……、どう気持ちの整理をつけたら良いか分からないよね(笑)。彼の作品は大好きだけど、彼がしたことを最悪で……。思うにそういう例はたくさんあるよ。彼の作品は本当に大好きなんだけど、彼のしたことを考えると、これから新しい作品をチェックするかどうかは何とも言えないよ。
ハーヴェイ・ワインスタイン(映画プロデューサー。クエンティン・タランティー作品や多くのアカデミー賞受賞作を手掛けてきたが、彼を80人以上が性的暴行で告発した)とかもそうだよね。でも、ワインスタインの場合はもっとひどいよ。
——最も好きなアートは何ですか?
長い間、僕はダニエル・クロウズ(アメリカ人。漫画家、イラストレーター、脚本家として活躍中)とロバート・クラム(アメリカ人。漫画家、イラストレーターとして活躍中)がすごい好きだったんだよね。彼らの作品には衝撃を受けて、その時に存在していた何よりも好きだったよ。でも、みんな、アーティストやクリエイターも含めて、違う顔を持ってるでしょ。この人がベストだと思っていても、新しいアイドルが出てきたらそれまで好きだったものもそっちのけにしたり、変化するよね。
——幽霊は信じますか?
アジアではそういった信仰が多いよね。僕はすごい面白いと思うんだけど、幽霊ってよく理解できないというか……。それに信仰的なもの問題だし何とも言えない(笑)。幽霊をみたことはないし。でも、本当に存在して僕が彼らをリスペクトするべきとか、そうしないといつか殺されるとかだったら……(笑)。
——経験したことある仕事の中で最も酷かったものは何ですか?
ボランティアというか、仕事ですらなかったと思うんだけど、その時は勉強のために、まぁ時々そういうことをやらなくちゃいけないことってあるよね(笑)。長期間にわたってやったわけじゃないんだけど、そこにある中で一番やりたくない仕事をやらされるわけ。ビデオ編集とかに関係するものだったんだけど、とにかくできることの中で最悪なことをやらされたんだよ。それにボランティアですらなかった。彼らが僕に無理矢理やらせた形で。でも、そういうことって色んなところであるよね。ひどいよ。
——もらったアドバイスの中で最も素晴らしかったものは?
わかんない(笑)。多分思い出せないだけかな。僕は用心深くて、アドバイスなんてみんな真剣に考えてるものじゃないと思ったりするから(笑)。
——地球上で自分が最も賢い人間だと思った瞬間は?
毎日だよ(笑)。毎日自分はクールでハンサムで、鏡を見てこれ以上スマートな人間がいるのかって……。なんてね(笑)。
——地球上で自分が最も酷い人間だと思った瞬間は?
それはいろんな風に比較していくべきことだよね。でも、僕は大体ひどいよ(笑)。何やってんだって。僕はクソみたいなもの売っているし、みんなそれを素敵だったりなんやら思ってたり……。やっぱり日によるよね。
——ダンサーとして自分自身をどう表現しますか?
僕はバレエを踊るのが好きなんだ。例えばゴス・ミュージックやブラック・メタルがかかってる時に……。嘘だよ(笑)。僕は世界で最悪なダンサーだと思う(笑)。
——ホアンさんの最も異常な趣味ってなんですか?
趣味という趣味はないだよね。全世界のことを考えたり、それよりも小さいことかも考えたりするけど、展示の仕事をしたりさ……。昔は音楽をやっていたけど、やめたし。かなりひどくてね。だから違うことを、音楽よりも上手くできることを始めたんだよ。
——ちなみに何の楽器を弾いてたんですか?
最初はベースをやっていたんだけど、ギターに変えた。でも大体僕はボーカル(シンガー)を担当していたよ。ボーカルっぽい見た目じゃないんだけどね……(笑)。
——そんなことはないですよ(笑)。歌うのが好きな曲は何ですか?
歌うのがあまり上手くなかったからよくわからないけど、好きな曲はフガジ(Fugazi)の“Waiting Room”かな。フガジは好きなバンドだよ。
——ホアンさんにとって描くこととは?
自分をリラックスする方法かな。僕の仕事には二つの顔があって、一つはアイデアを広げたり、作品について考えたりすること。次にフィジカルな、ブラシで描いたり塗ったりすること何だけど、その時はリラックスできるんだ。たとえ暴力的なものを描いている時でもね(笑)。禅みたいなものなのかな。
EVENT INFORMATION
Joan Cornellà Japan Solo Exhibition 2017
2017.12.01(金)〜12.10(日)
11:00〜20:00 ※最終入館は19:30まで
東京都品川区東品川2丁目6-10 寺田倉庫Dエントランス
前売(入場日指定)¥1,000(税込)
ANY TIME チケット(期間中いつでも入場可 ※1回のみ有効)¥1,500(税込)
当日券 ¥1,200(税込)
photo by masashi yamada
interview & text by Qetic・船津晃一朗