10年ほど前のある日、何気なく入ったカフェで流れていたジャズ・ボーカルの有線に耳が吸いつき、その日のうちに飛び込んだジャズクラブでうろ覚えの“My Funny Valentine”を歌って以来、ジャズに恋し、日本中のライブハウスでジャズを歌い続けてきた青木カレン。作品もすでに数多くリリースしているが、2012年の『Twilight Jazz』を境にサウンドが大きく変化。さらに昨秋オンエアされたドラマ『昼顔~平日午後3時の恋人たち』の挿入曲となったオリジナル曲“Never Again”が話題となり、1月21日にリリースされたばかりの新作『Eternal Melody』はiTunes Music Storeのジャズ・チャート首位を獲得。彼女の甘くハスキーな歌声は、どうやら新たな転機を迎えているようだ。
そんな彼女に、ジャズ・スタンダードからポップスの名曲までをドラムレスのスムースなサウンドでカバーした新作について、たっぷりと聞いた。加えて、ジャズとの向き合い方やオリジナル曲への意欲についても。
話しぶりはいたっておっとりと穏やかながら、「カレンさんにとってジャズとは?」の問いに、「ライブです。生きることそのもの」と即答した彼女。その眼差しの強さに、同じ女性ながら思わず惚れそうになりました。
Interview:青木カレン
ーー新作の『Eternal Melody』は、2012年の『Twilight Jazz』『TRANQUILITY』に続く3部作の締めの1枚だそうですね。3部作の大本のコンセプトはどのようなものですか?
ひとことで言えば「ジャズの良さはジャズの曲そのものにある。名曲と呼ばれるもののエッセンスはメロディーと歌詞にある」というものですね。ジャズを歌うようになってからずっと「自分がジャズの入口でありたい」という気持ちが強かったので、ジャズを始めてからしばらくはクラブジャズなどの踊れるジャズをやってきたんです。若い人にもジャズを知ってもらいたくて。今も「入口でありたい」という思いは変わらないんですけど、次第に自分自身の音楽性について考えるようになって……。それで『Twiright Jazz』のあたりでスイッチが切り替わって、サウンドもグッとシンプルなものになったんですよね。
ーーカレンさんに変化をもたらしたものは、なんだったのでしょう?
ライブだと思います。全国をまわりながら週に2~3回はライブをやってきたんですけど、そのほとんどがギターと歌だけ、ピアノと歌だけなんですよ。だから丁寧に歌うというような伝え方はもちろん、曲自体の強さのようなものも重要になってくる。そういう真剣勝負を積み重ねるなかで、メロディーと歌詞の力や魅力というものに、より惹かれるようになっていったんだと思います。
ーー『Eternal Melody』もドラムレスで、とてもシンプルな作りですよね。“永遠のメロディー”というタイトルは、歌い継がれるべき名曲とも読み取れますが、本作ならではのコンセプトはどんなものですか?
今回はジャズのスタンダードだけでなくポップスのナンバーも含めて、自分のなかで歌詞とメロディーがジャストミートしている曲を選びました。というのも、昨年くらいからオリジナル曲をけっこう書くようになって、メロディーと歌詞がぴったり合うのって奇跡みたいなものだなぁ! と感じることが多いんですね。なので、ここに並んでいる曲は候補になったうちのほんの一部ですけど、とてもジャストミートなものばかりです。
青木カレン『Eternal Melody』アルバムティーザー