––––シンプルに、良い曲と良い歌を届けたいという気持ちが伝わってきますね。
まさにそんな感じです。周りの音に関しては、実はあまり興味がなかったりするんですよ。今回のアルバムは一度デジタルで録ったものをアナログに落としていて、他のCDよりも音がちょっと小さいくらいだと思います。そうしたのには、単純に痛い音に疲れちゃったところがあって、刺しにくるような感じの音楽は長く聴けないんですよね。昔のCDを聴くと今でも感動しますし、それは単純に曲、歌、演奏が良いということだと思うんです。
––––アルバム全体を通して一番印象に残っているのは、歌の生っぽさなんです。良い意味で不安定で、それが人間らしくていいなぁと。歌心を感じました。
11月末に声帯結節っていうポリープみたいなものが喉にできる病気になってしまったんです。一時期は声が一切出なくなって、最初の歌録りだった二曲目の“蕾”という曲を今聴いてみても、結構喉がきつい感じがわかるんですよ。でも、人間なのでそこを無理に直してもしょうがないですし、直したら逆に歌心が伝わりづらくなるというか。歌のテンションをすごく意識して録っていて、ピッチとか喉のガラガラ感とかはまったく気にしていないです。前作はどちらかというと数学的に整理された作品でしたけど、今回は人間味を出すことを意識しました。
––––ブログにも病気と闘っていた状況を赤裸々に綴っていましたよね。
アルバムの制作期間中は曲を作りたいのに体が言うことを利かなくて、前作の比にならないくらい大変でしたけど、結果的にはすごく温かい作品になりました。そういう意味では、今回はお世話になっている人たちと家族に対しての感謝の気持ちを込めたプレゼントのような作品なんです。顔の見えない遠くの誰かに届けるというよりも、自分の身の回りにいる人たちに、自分の歌を感謝の気持ちとして届けたかったので。
––––身近な人たちから不特定多数の人たちへ届く。それは理想的な伝わり方だと思いますし、フォークのミニマルな感じにも通ずるものがありますね。
今回のアルバムはプロトタイプだと思うんです。次回はまったく違うものを考えていて、今度は悪そうな感じのものを作ろうかなと(笑)。優しい気持ちで作った今回の曲のギャップになる、遊び心みたいなものをもっと入れていきたいなと思いますね。浅川マキさんみたいなことを歪んだ音でやったら、めちゃくちゃ面白そう。曲としてはメランコリック、歌詞は悪口ばかりを言っているようなアルバムを作ってみたいですね(笑)。
(text&inteview by Shota Kato[CONTRAST])
KUDANZ -“風の輪郭”
Event Information
KUDANZ リリースツアー
2014.06.21(土)@大阪 心斎橋 Pangea
2014.06.22(日)@愛知 名古屋 SONSET STRIP
2014.06.28(土)@東京 下北沢 BASEMENT BAR
2014.06.29(日)@宮城 仙台 PARKSQUARE