ォーク、カントリーミュージックと聞くと、一昔前の古臭い音楽を連想してしまうかもしれない。音数は少なく、朴訥とした雰囲気が苦手というリスナーもいるだろう。でも、逆にいうと、生身の人間がギター片手に歌と演奏を届ける剥き出しの音楽は、シンプルでいて歌心や熱量がダイレクトに伝わってくる。伝統的な音楽の力を信じて、その魅力を伝えようとするのがKUDANZことササキゲンだ。

そもそもササキのソロプロジェクトとして始まったKUDANZは、活動の途中でバンドに変化。しかし、2012年にリリースされた『僕とターヘルアナトミア』がロックバンドKUDANZとしての最後の作品となってしまった。その後、KUDANZはササキのソロプロジェクトに戻り、2年振りにリリースされたミニアルバム『何処か長閑な』は、ギターロックから一変したクラシックな作品だった。フォーク、カントリー、オーケストラル・ポップといったオーガニックなアプローチから、自身の郷里である東北の四季を描いている。東北らしさを表現するために、東北のミュージシャン、エンジニアと制作することにこだわった、きわめてコンセプチュアルな作品だ。

その裏側では、ササキは自身を襲った病と闘い、アルバムの制作は壮絶なものだった。それでも、じっくりと時間をかけて、仲間たちと作り上げた8曲には、生命力が宿っている。愛する仲間と家族への感謝の気持ちを綴った、原点回帰に相応しい自信作。シンガーソングライターとして再出発を果たしたKUDANZが、万感の思いを語る。

Interview:KUDANZ

––––まずは2年振り、しかもロックバンドKUDANZが解散して、シンガーソングライターKUDANZとしてリリースすることになった作品について、率直な気持ちを聞かせてもらえますか。

ソロになってから初めての音源なので、ようやく出せたという安堵感が大きいですね。前作のアルバムを出した後に、もうバンド形態としての活動をやめようとなってから、ソロプロジェクトとしての音源を出すまでの準備に思いのほか時間が掛かったというか。曲自体はかなりあったんですけど、それをどういう形でお客さんに聴いてもらおうかというところで苦労して、この2年間は結構焦りがありました。

––––佐々木さんのソロプロジェクトとしてやるにあたっても、KUDANZを名乗るのはなぜですか。

もともとKUDANZは、僕ひとりで音楽活動を始めたときから名乗っていた名前なんです。ソロプロジェクトから始まったものがバンド編成に変わって、また元の形に戻ったので、バンド名というよりも活動名という感じに捉えていただければと。“Z”と複数形になっていますけど、ORIGINAL LOVEみたいなものです(笑)。バンドだった頃でも、音楽仲間は僕のことをKUDANZと呼んでいましたし、コロコロ変わるのが嫌なんですよ。楽器も18の頃に買ったエレキギターを未だに直しながら使っていますし、基本的に同じルーティンが好きなんです。

––––たしかに、未だにKUDANZをバンドのままだと思っている人はいるでしょうね。

そう思います。けど、バンドでもソロでもどちらでもいいというか。僕自身がいろんな形態で活動しているので、あまりイメージ的な部分は気にしていませんね。

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