世界的注目を集めるシンガーソングライター・Siaが初監督を務めた映画『ライフ・ウィズ・ミュージック』が2月25日(金)より日本公開スタート。Siaが原案・脚本・製作も手掛けた本作では、彼女自身の実体験をもとに、愛すべき友人、音楽と共に多くの苦しみを乗り越えてきた半生が主人公・ズーを通して表現されている。
また今作は、Sia書き下ろしのオリジナル楽曲から成るMVのようなカラフルでポップな音楽シーンと、 “愛する”ことを学び、居場所や明日への希望を見出していくドラマシーンが交錯する、これまでにない映画体験ができる作品だ。そしてその12楽曲のうち、本作の主題歌である“Together”の日本版カバーソングアーティストとしてELAIZAが選ばれた。ELAIZAはオファー当時の心境や、“Together”を歌うことについて、Siaのファンとしての喜びとともに語っている。
映画『ライフ・ウィズ・ミュージック』×ELAIZA
──Siaと同じようにELAIZAさんも女優業に限らず、アーティストや監督としてご活躍されていることもあり、Siaの想いに共感頂ける方だと感じました。この主題歌のオファーが来たとき、どう思いましたか?
お話が来た時は純粋に嬉しかったです。とても大好きなSiaがまた新しい形で言葉を届けてくれるんだ、というのは本当に幸福な気持ちになりました。表現の方法というのは本当に無限にあって、”歌手”や”監督”という言葉は誰かにわかりやすく自分のやっていることを伝えるためにあるのだと思います。気持ちがブレないからこそ、様々な表現に挑戦されるSiaにとても共感しますし、ご自身の人生を元にまるでギフトのような映画を作り上げてくださったことに、いちファンとしてとても感謝しています。
──本作は主人公ズーが生きる希望を見出していく<ドラマシーン>と、登場人物の心情を表現したカラフルでポップな<音楽シーン>が交錯する構成になっています。お気に入りのシーンについて教えてください。
ミュージックの視点で描かれる音楽のシーンはとても新鮮だし、すごく刺激的でした。そして、ズーとエボが対峙するシーンもお気に入りです。なかなか人に伝えられないことを言える心が溶け合う関係になれたところに、自分たちの意図しない瞬間が訪れて、その場面で二人のいじらしさや人間らしさ、大人だけど未熟な部分がみえてきて、とても魅力的でした。
──“Together”でELAIZAさんのお気に入りの歌詞はありますか? また、レコーディング現場で歌う際に、その歌詞に対してどのように表現しましたか?
Siaの“Together”には、前に進んでいく、これからを輝きながら生きていくというエネルギーをくれるような言葉がたくさん散りばめられていて、音も気持ちを高ぶらせてくれるハッピーな音が多かったです。その波に乗り遅れないように私なりのメッセージやエネルギーみたいなものもたくさん詰めるようにしました。
《再生してスティービーワンダー》《落っこちる前に聞かなきゃ》というフレーズは英語でも日本語でもとても心に刺さりました。私も小さい頃、すがるようにスティービーワンダーの景気の良いサウンドを聴いていたので、懐かしい記憶と共に、忘れてはいけない当時の思いも思い出せて、心がときめきました。英語がもつ柔らかさを日本語なりの柔らかさとやさしさ、輝きみたいなところが出たらいいなと思って、そういうところは意識して歌いました。すごく楽しかったです。
映画『ライフ・ウィズ・ミュージック』ELAIZA Japanese cover MV【2月25日(金9公開】
Text:Qetic編集部
昨年「ELAIZA」名義で音楽活動を本格始動させた、池田エライザは、11月にリリースした1stアルバム『失楽園』ではYaffle、SOIL & “PIMP” SESSIONS、Keach Arimoto(ODD Foot Works)らによる先鋭的なトラックを乗りこなし、いくつかの楽曲は自ら作詞を手掛けるなど、マルチアーティストとしての才能を発揮。
また、ELAIZAは映画『夏、至るころ』で監督を務めた経験があり、Siaとは「歌手」「映画監督」という共通点があることも今回抜擢された理由のひとつだという。ELAIZAはなぜ、音楽活動をするのか。「利益のためではない」と、彼女は言い切る。多才さの根っこにある、芸術に対する信念とは。そして、ELAIZAが音楽を通して手を差し伸べたい人とは。
「音楽」と向き合うときはピュア
──映画『ライフ・ウィズ・ミュージック』では「音楽」が救いの象徴として描かれています。ELAIZAさんは子どもの頃から、シンガーであるお母様にライブやリハーサルなどに連れられてステージに上がることもあったそうですが、幼少期のELAIZAさんにとって「音楽」とはどういうものでしたか。
もう、しつこいくらい「音楽」でした(笑)。音楽家系なので、自分が意図しない曲も常に耳に入ってきていましたし、中学生くらいからは自分で聴き始めたものもありました。音楽ばっかりでしたね。意外と聴いてるよりも、自分が歌ったり口ずさんだりする時間のほうが長かった気もします。
──もともと音楽を仕事にしたいとは思っていなかったそうですが、昨年から「ELAIZA」名義で音楽活動をスタートされました。実際にやってみて、どういったやりがいを感じていますか。
好きなことをやらせていただける環境に巡り合えましたし、利益のためじゃないところで音楽をやれているので、まったくストレスがないですね。自分が元気になってほしいなと思う人たちのことを、思う存分、想いながら作れているので、いい影響をもたらしてくれていると思ってます。
──音楽を作ることや歌うという行為は、ご自身にどういった快感をもたらすものだと感じていますか。
ああ、自分のことはあんまり考えてないです。だから楽ですよ。フィジカル的にはしんどいですけど、好きなものについて話し合ったり想像したり、まだやったことのないことを模索できたりする環境にいますし、その先にいる人たちのことを常に考えているので、精神的にすごく楽です。ピュアですね。好きなジャンルの曲を作り、好きなことを当てはめて、本当に「好きなことをしている」という感覚ですかね。
歌手/映画監督Siaに重ねる、ELAIZAが手を差し伸べる先
──Siaというアーティストには、どういった印象を持っていますか?
叫びたいけど叫べない想いを、あの歌声を以てして代弁してくれる存在だと思っていたんですけど、一昨年に出た“Snowman”とかを聴くと、どんどんSiaの伝えたい想いや助けたい人たち、導いてあげたい人たちが立体的に見えてきて。この映画(『ライフ・ウィズ・ミュージック』)もそうですし。子どもでも大人でも、未来ある人たちに手を差し伸べるというか。たとえばズー(ケイト・ハドソン演じる主人公)みたいに、人生の過ちと言われるような経験をしてしまった人にも未来はあるから。
Siaって、キム・カーダシアン(Kim Kardashian)のドキュメンタリーに友人として出てくるイメージがあったんですよね。キム・カーダシアンたちも、子どもがいっぱいいて、キム自身も法律について勉強していたり、理不尽な刑を課せられた囚人の方々に対して救いの手を差し伸べたりして。そういう環境に自分の身を置いて、自身の経験も重ねて、どんどん先を行ってるというか。
手を差し伸べる先が、子どもたちや不甲斐ない思いをして今を生きている大人たちだけではなくなってきているところがすごくかっこいいです。そんな彼女がメガホンを取るのはすごく納得のいくことだなと思いました。
──ELAIZAさんは、自身の活動や表現を通してどういった人に手を差し伸べたいと考えていますか。
頭の中で旅に出たり宇宙に行ったり、想像したり妄想したり、そういうことができなくなっちゃうくらい、頭の中が文字や人でいっぱいいっぱいになっているような人たち。年齢、性別関係なく、ですね。もっとワクワクできることがいっぱいあるよ、思い出そう、って。
──“Together”の歌詞にもある《自分のことを愛す》ということは映画のテーマにもなっていますが、それこそ年齢・性別問わず、自己肯定感を持てていない人はいっぱいいると思います。ELAIZAさんが《自分のことを愛す》ために心がけていることはありますか?
考えすぎない(笑)。みんな、考える時間が好きすぎるのだと思う。未来の心配をする癖がついて、時間の使い方がわからなくなっちゃってるだけだと思います。スマホを手から離した瞬間、何にもときめかなくなっちゃってる。心を動かしてくれるものすべてがスマホに詰まってると思っちゃう節があるけど、それを切り離したときに、たとえば頭の中に流れる曲って何だろうとか、「あの曲なんで好きなんだっけ?」「あ、これママの車で流れてたんだ」とか、自分がふと思い返すようなことを笑い飛ばしたい。
もしくは、たとえば変わった人に会ったら、「変な人だ」って決めつけずに、「あなた、どんな人なの?」って面白がっていたいし、「私も変かも」って笑い合いたい。今考えていることが、本当に深刻なことなのか、それとも深刻に考えていたほうが周りと足並みが揃うからなのか、というところは見極めるようにしています。
──最近、ELAIZAさん自身が頭の中で流れてワクワクした曲は何ですか?
ポケモンのバトルしてるときの音楽(笑)。
──ははははは(笑)。
ラスボスっぽい人が目の前に現れたら、「ごめんなさい、ラスボスの曲流れちゃう」みたいな(笑)。でも、そういうことだと思うんです。私はわりと楽観的な性格なので、いつまでもワクワクしていたいし、ずっとヘラヘラしていると思うし。仕事のときとオフのときでメリハリがあればいいかなって思ってますね。
──最後に、ELAIZAさんがこれからも音楽に関わっていく中で、今感じている課題や未来のためにやっていきたいと考えていることがあれば教えてください。
素朴でいたいのに、なかなか素朴であれない。ファッションもエンタメも華やかなものはかわいいと思うし、でも、災害がいつ起こるかわからない日本だからこそ、長期的に愛せるものを身の回りに置いていきたいです。音楽も、パソコンがないと作れないようなものではなくて、糸と箱があれば奏でられるようなものを愛していきたいし学んでいきたい。
そう思いつつ、SFとか近未来なものも好きで、迷ってるところです。そこが課題かなと思います。今、すごくごちゃ混ぜなんですよね。モダンなものと近代的なもの、どっちも好きだからどっちもやっちゃえ、ってなってるんですけど、そこに対してもっと意欲的に学んでいきたいです。色々な民族のことやカルチャーを学んで、音楽の本当の需要や意味をもっともっと知っていったら、もっと人に寄り添える曲が作れるかもって思っています。
──ELAIZAさんは本当に、自分が知らないものをどんどん学ぼうとする姿勢をお持ちで、とても勉強熱心だという印象があります。
ガリ勉です(笑)。それはもう性格ですね。
映画『ライフ・ウィズ・ミュージック』予告編【2月25日(金)公開】
Sia – Together (from the motion picture Music)
Text:Yukako Yajima
Photo:Maho Korogi
▼関連記事
Sia初監督作『ライフ・ウィズ・ミュージック』、ELAIZAが主題歌「Together」日本版カバーを担当
【GG賞最優秀作品賞ノミネート】Sia初監督映画『ライフ・ウィズ・ミュージック』イベントが開催!ELAIZA(池田エライザ)が生歌唱!
INFORMATION
ELAIZA
1996年4月16日生まれ、福岡県出身。
池田エライザとして、2009年第13回ニコラモデルオーディショングランプリ後、同誌の専属モデルとして活動を開始。2011年公開の『高校デビュー』で映画デビュー、本格的に女優業を始めその後、 Netflixオリジナルドラマ『FOLLOWERS』など数々の話題作に出演。『夏、至るころ』(2020年公開)で映画監督に初挑戦、2021年には歌手と音楽活動も開始するなど、マルチな才能を発揮し、活躍の場を広げている。2021年9月、デビュー曲「Close to you」を発表。10月、2ndシングル「AYAYAY」に続き、11月8日(月)の初フルアルバム『失楽園』をリリースした。
ライフ・ウィズ・ミュージック
2022年2月25日(金) TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開
監督・製作・原案・脚本:シーア
キャスト:ケイト・ハドソン(『あの頃ペニー・レインと』)、マディ・ジーグラー(Sia「シャンデリア」MV)、レスリー・オドム・Jr.(ミュージカル「ハミルトン」)
原題:MUSIC/2021/アメリカ/107分/カラー/シネスコ/DCP/5.1ch/字幕翻訳:原田りえ/監修:山登敬之 【G】
配給:フラッグ
公式Twitter/Instagram:@lifewithmusicjp #ライフウィズミュージック
©2020 Pineapple Lasagne Productions, Inc. All Rights Reserved.
【STORY】
アルコール依存症のリハビリテーションプログラムを受け、孤独に生きるズーは、祖母の急死により長らく会っていなかった自閉症の妹・ミュージックと暮らすことに。頭の中ではいつも音楽が鳴り響く色とりどりの世界が広がっているが、周囲の変化に敏感なミュージックとの生活に戸惑い、途方に暮れるズー。そこへアパートの隣人・エボが現れ、優しく手を差し伸べる。次第に3人での穏やかな日々に居心地の良さを覚え始めたズーは、孤独や弱さと向き合い、自身も少しずつ変わろうとしていくが……。