昨年4月、グループ最高傑作『L.S.』をリリースするとともに、そのリリースツアーファイナルで4名のメンバー脱退を発表したlyrical school(以下、リリスク)。その後メンバー募集のオーディションを行い、2023年2月12日、Spotify O-WESTで開催されたライブで新体制のlyrical schoolがお披露目となった。

メンバーには結成13年にして初の男性を迎えた7MC+1DJの8人組(minanはプレイングマネージャーとしてグループに残る)。翌日には幕開けにふさわしい新曲“NEW WORLD”をリリース、新たなグループの姿をノスタルジックに焼き付けるMVも公開。4ヵ月連続 新曲”卸し”ライブ<”BACK TO (LYRICAL) SCHOOL”>の開催も発表されている。

それでは一体どのようなメンバーが新たにリリスクの一員になったのか。お披露目ライブが開催される約2週間前、リリスクのプロデューサー・キムヤスヒロを聞き手に迎え、新たな世界へ飛び込むメンバーたちの赤裸々な話を伺った。また本記事の最後には“NEW WORLD”のレビューを掲載。レビューは昨年、単著『わたしはラップをやることに決めた フィメールラッパー批評原論』を刊行した文筆家・つやちゃんが執筆を担当している。ぜひ最後まで読んでほしい。

lyrical school/NEW WORLD(Full Length Music Video)

INTERVIEW:lyrical school

──今回、新体制として活動していくわけだけど、一度経緯を振り返ってみよう。リリスクは2010年にヒップホップアイドルユニットとして、最初は6人組で立ち上がってからメンバーチェンジを繰り返しながら続けてきて。去年7月に日比谷野音で開催された<“L.S.” ツアーファイナル>を最後に活動休止、minan以外は卒業して、男女8人のリリスクになった。リリスクはどんなグループだと思って入った?

sayo ライブを観て、初めてこんな自由なグループがあるんだと思ったんですよ。

hana 私は、全然リリスクのことを知らなかったんです。それでヒップホップアイドルユニットって初めて聞いた時、腑に落ちました。これから何にでも化けていきそうだと思ったから、自分も入りたいなって思いました。

──ryuyaくんとmanaちゃんはお客さんだったよね。

ryuya 僕が初めてライブに行ったのは、六本木でのイベントでした。リリスク好きでしょってアイドル好きの友達に誘ってもらったんですよ。そこではゆるめるモ!さんと共演していて。 そこでCDをもらったりして、『BE KIND REWIND』が発表された頃からライブに通い始めました。リリスクは自分が思うカッコ良さ、そういう琴線に触れるグループだと思ったんです。ジャンルがどうこうではなく、自分の好きな色々な要素が重なって好きになりました。キムさんが作っている世界観や江口寿史さんの絵だったり、そこにメンバーたちのパフォーマンスがはまっていくところにすごく魅力を感じていました。

──malikはどう?

malik 全部言われちゃったよ。

──(笑)。malikはライブにはそんなに来たことなかったけど、音源は聴いてくれてたんだよね。

malik そうですね。リリスクは楽曲をはじめ、クリエイティブがすごく面白いなって思ってたんですよ。一曲に色々な要素が入ってるのにすごくまとまってる。ライブに行ってみたいなって思って、ウェブサイトを見たら、メンバーを募集していて、入ろうと思いました。

──良い話(笑)。manaちゃんはどう? tengal6の時からチェックしてくれてるんだよね。

mana 私は(tengal6の)“プチャヘンザ!”で知ったんですよ。曲がめっちゃカッコいい。それからリリスクを知ったんです。ずっとアイドルとヒップホップ、女性ボーカルのディスコが好き。その全要素が全開で自分に刺さったんですよ。曲もMVも全部好きになって、どんどんハマっていきました。

──リリスクはどんなグループって聞かれたらどう答える?

mana 私のためのグループ。

一同 (笑)。

reina 私がリリスクを初めてちゃんと聴いたのは、竹中夏海先生のプレイリストがきっかけでした。前々体制のイメージで曲を聴いてたんですけど、めちゃくちゃカッコいいなって。

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左からtmrw、reina、mana、sayo

──「曲の良さ」から入った人が多いんだね。では、新たに加入したメンバーを一人ずつ、minanとオーディションを振り返りながら紹介していきたいと思います。tmrwについてはmanaがズバリ言ってたよね。

mana クソガキ赤ちゃん。

──(笑)。男子中高生みたいな感じで可愛いよね。

minan 可愛い。見た目はやんちゃそうだけど、めっちゃいいやつじゃないですか。いい子じゃなくて、いいやつ。早く性格の部分がお客さんに伝わったらいいなって思っていて。

──リリスクの前の事務所の人から紹介されて、興味持って来てくれたんだよね。tmrw自身はアコースティックギターの弾き語りで歌をやっているけど、リリスクに入る前はヒップホップをほぼ聴いてないんだよね。尊敬してるアーティストは?

tmrw 玉置浩二さんです。

──そういうところも含めてすごい良いんだよな。歌心があって声もめちゃくちゃ優しい。会って話せばその感じが全部しっくりくるんだよね。オーディションでは最初は恥ずかしがり屋だと思ってたんだけど、オーディションのパフォーマンス審査では我先に縦横無尽に駆け回っていて、すごく率直な良さがあると思った。それにスケボーで出勤してたりしてたりとかさ。

minan あと、毎日お母さんのご飯を楽しみにしてる。

一同 (笑)。

mana 可愛い〜〜!

tmrw (小声で)あんまり言われたくない。

mana そういうところも良いんだよな!

reina あと、MVの撮影の時、tmrwがいないと思ったら岩の高いところに一人で登ってて。「これが少年! すごい!」ってなりました。

一同 (笑)。

──sayoちゃんは愛される天才だと思う。二次面接で俺とminanは泣きそうになっちゃったもんね。sayoちゃんが家族や友達100人から「sayoちゃんをアイドルに推薦します」っていう応援メッセージを書いてもらって、それを持ってきたんだよ。確か、メッセージをもらうまで二週間くらいしかなかった。自分じゃ絶対無理だから、あまりにも信じられなくて。一瞬、オーディエンス用の使い回しだと思ったんだけど、日付が全部書いてありました(笑)。

ryuya 100人も友達いないよね。

minan しかもちゃんと「こういう子だから」っていう内容のある文章で、本当に推薦してくれてるんだなって。そういうことをしっかり書いてくれる友達だよ。その途中にお父さんとお母さんからのやつもあったりして、すごく素敵でした。

──パフォーマンスしてる姿だったり、リハーサルを一緒にやってる時も、めっちゃ素直で良い。いろいろ考えて、パフォーマンスを良くしようとする姿勢が伝わってくる。その姿そのものに胸を掴まれる、愛される人だなと思う。

reina sayoちゃんがリハーサルの時に歌ってる姿を見て、本当に歌が好きなんだなって思った。すごいキラキラしてた。ディーヴァ。

sayo ワーォ。

一同 (笑)。

──リアクションがディーヴァ。本当に人柄そのまま歌声に出てる感じだよね。

hana あと、私が最近体調を崩してたんですけど、リハーサル来なかった時にすぐ連絡くれたんですよ。本当に優しい。

mana え!

──manaも送ってたの?

hana 送ってないです!!!

mana 毎日送ろうって思ってたんだけど、来ちゃった。間に合わなかった! 気持ちは送ってたから!

──何を言ってるんだ(笑)。hanaちゃんはさっき別のインタビューで「自分には何もない」って言ってたけど、何をやっても華があると思って見てるよ。最終オーディションでパフォーマンスしてもらった時、チームの皆に感想を聞いたら、みんな一番最初にhanaちゃんの名前を挙げてた。説明がつかないけど、持ってる空気がある。ほぼ全員意見が一致してたよね。

minan ついつい目で追っちゃうようなスター性がある。

ryuya hanaちゃんとプリプロやレコーディングで同じタイミングで入ることが多かったんですけど、レコーディングでブース越しに飛んでくる声にすごく吸い込まれるような魅力があって、すごいなと。クラシックな感じ。

──あと、valkneeのことが好きなんだよね。音楽のインプットの仕方とかにも自分の文脈があると思うんだけど、それがhanaちゃんが身にまとっている空気感と一致してる気がする。

minan hanaちゃんは割と器用に何でもこなすタイプだなって想像してるんだけど、リリスクに入ってやりたいことをやって、いっぱい当たって砕けて欲しいです。何しても全然OKだから、そういう姿もたくさん見せて欲しいなと思ってます。ふふふ。

hana 失敗もして成長していきたいです。アンチにも立ち向かいたいです。

一同 (笑)。

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左からmalik、hana、ryuya、minan

──デビューする前からアンチのことを想像しなくて良いよ(笑)。ryuyaくんはすごいほっとする真面目さがあって良いよね。メンバーの中でも歌や自分のキャラクターについて、人一倍悩んでたりすると思う。そこに対して真摯に向き合っていて、リハーサルをちゃんと次のパフォーマンスに昇華して、まず目の前にある2月12日のクオリティーを高めていくことに集中してる。自分でやれることをやる姿勢がすごく良い。あとバンドをやってきたんだよね。培ってきた感覚や経験をリリスクでも活かして、自分でやれること、やりたいことを全部やってほしい。

minan ryuyaくんは、リリスクのお客さんとして来てくれてた時の雰囲気とか、今日まで仕事して一緒にしてきた中で感じるのが、良い意味であまり感情に波がない。芯がぶれないというか、しっかり自分の情緒が安定してる。青い炎感がある。ちゃんと内側ではすごいメラメラ燃えてるものがあって、それがステージで爆発した時にどうなるのかすごい楽しみだし、ryuyaくんも今まで知らなかった自分に出会えるんじゃないかなって、ワクワクしてます。

ryuya 以前、就職した時に最初オリエンテーションがあって、同期ひとりひとりから評価をもらうことがあったんですけど、その時にも「ryuyaくんって青い炎みたいだね」って言われたんですよ。

──すごい。その姿勢が周りの人に伝わってるんだね。malikは応募の時の書類が完璧で、対面の印象がどう転ぶかドキドキしてたんだけど、意外とおっとりした雰囲気で良い意味で驚いた。でも今後どういう風なことやっていきたいかを聞いたら、びっくりするくらいハッキリとしたビジョンが明確にあるんだよね。絵を描いたり色々な創作活動をしてきて、リリスクの活動に加えて個人的にもやりたいことがあって、それが今後のリリスクの目指していく方向に噛み合ってる気がして。それと、歌声がめちゃくちゃ素敵だと思うんですよ。全部がハマってる。

minan 本当によくリリスク受けてくれたなって。「どこに眠ってたの!?」って思いました。普段はホワホワしてて、本当に赤ちゃんみたいなんだけど、カメラの前に立つとガラッと変わる。撮影の時も動きが未経験とは思えない。何気ないところを決める。……それに、malikは今まで怒ったことがないらしい。グループの活動の中でそんなmalikを怒らせちゃいそうな人がいるね……(笑)。

malik (manaの方を見る)……すぐ近い場所にいますね。

mana もう怒ってるんだけど(笑)。

ryuya 思い当たる節ありますね。レコーディングでmalikのエモーショナルでセクシーな歌が録れたんですよ。それにmanaが「エッチボイスだ!」って言ってて(笑)。

hana リハーサルでも“SEE THE LIGHT”を歌ってる時、manaが「malikが歌うとき涙が引っ込んだ」って。

mana malikが静かに「失礼……」って言ってた。

──それはもう怒ってるね(笑)。manaちゃんは、エンタメの究極体。もともとお客さんで来てくれたから人柄やダンスがすごい上手なことは知ってる。舞台度胸も絶対にあるし、表現力が凄まじいことは分かってたんだけど、オーディションで送ってくれた曲がマジで強烈だった。“NEW WORLD”を作ってくれたALI-KICKさんや大久保潤也さん、上田修平さん、関係者に一斉に送ったけど、みんな絶賛してた。“外カメ”っていう曲で、ビートもリリックも全部自分で作ってる。「iPhoneの外のカメラが壊れてる」って言ってるだけの曲なんだけど、ヒップホップの面白さを感覚的に分かってる気がしたんだよね。色んな意味でリリスクは彼女にとってとても良い環境だと思うから、すぐ良い曲を作れるようになると思う。

minan 実は以前にもオーディションを受けてくれていて、最初はすごくおとなしい印象で、人前に出るのとかもすごい苦手そうに見えたの。それから現場にたくさん来てくれるようになって、どんどん本性を表していった(笑)。2回目のオーディションでは緊張しなさすぎてたくらい自然体で、めちゃくちゃ良さが出てたなって思う。2回目も受けてくれてありがとうっていう気持ち、一緒にグループでできるようになってすごく嬉しいですっていう気持ち……。

mana (小声で)えぇぇ……嘘かな……。

──嘘だったら多分この場にいないから(笑)。

malik リリスクがなかったら絶対に交わらないタイプの人種ですね。

──(笑)。

sayo いつもreinaちゃんと楽しませてもらってます。

reina 見てるだけでも楽しいし、言うこと全部面白い。

mana テレビだと思ってる???(笑)

──reinaちゃんはメンバー初のバックDJですね。すごく魅力的な声を持ってるから、ラップや歌も含めて、これから絶対惹きつけられる表現ができるようになる。reinaちゃんは「おっとりしてる」と言われるのがコンプレックスって話してたけど、普段話す時、すごくゆったりとした魅力的な間があって、その上パッと言うことにめっちゃセンスがあるんだよね。自分の間を持っていることがすごい素敵。それに、みんなのペースに合わせるのではなく、その間をちゃんと用意できるのがリリスクだと思うんだよね。それと、個人的に二次面接で一番笑ったのがreinaちゃんの特技。いつかみんなの前で披露してほしいなって思うし、話や雰囲気も含めて、タレントとしての魅力がめちゃくちゃある。

minan reinaちゃんはこう見えて、全くおっとりしてないんですよ。少し一緒に仕事をしたら分かる。だからこそこのテンポの話し方がめちゃくちゃ良い。趣味嗜好がすごくはっきりしてそうだなって思ってて、その部分をちゃんと出せたら面白そう。それこそ大喜利とかめっちゃ強そう。

──manaも大喜利が強そうだけど、タイプが全然違う。

minan 2人とも別ベクトルだけど絶対強い。

mana 『笑点』やろうって思ってますか?

一同 (笑)。

mana それに、reinaちゃんは本当に可愛いんですよ。

ryuya 立ったり座ったりするだけで、なんかもう絵になる。MV撮影の時に思ったんですけど、江口寿史先生が描く女性っぽい。いるだけで世界観がある。

mana 確かに! 衣装を着た瞬間に「江口先生が描く“彼女”だ!」って。

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──めちゃくちゃ言ってることわかる。さてそろそろ、次に新曲の話に入りたいと思うんだけど、まず今回、みんなの一番最初の曲だから、絶対良い曲にしたいと思ったんだ。作家さんは長い間一緒にやってきてる上田さんと大久保さん、ALI-KICKさんっていう“OK!”を作ったトリオ。この曲を作った上田さんは、7月の野音の「リリスクはビートやアレンジがシンプルな方がお客さんに伝わりやすいんじゃないかなと思った」と言っていて。それをきっかけに、リリスクの楽しさや魅力を上田さんなりに抽出した上で、野外フェスの夜、でっかいステージで、超眩しいライティングやスモークの中、エナジーを感じるようなイントロが鳴ったらブチ上がるなってシチュエーションから考えたらしい。前にmalikがこの曲のイントロがめちゃくちゃ好きって言ってたけど、そのイントロを成立させるところからこの曲が始まっている。サウンドも「ドライブしたギターをダウンピッキングで弾きまくるのかっこいい!」とか「みんなで歌ったら最高!」みたいな初期衝動的なエネルギーが前面に打ち出されてるよね。歌詞が入る前のトラック曲を聴いた時に思い浮かんだMVのコンセプトは「パラレルワールドからのビデオレター」。去年の夏まで5人のリリスクで活動してきたけど、この8人がずっと一緒に遊んでいる世界線が別にあって、2月12日から現実に合流するイメージで。そのパラレルワールドに生きてる8人の架空の思い出をMVで作れないかなと思った。それを作家さんたちに共有して、大久保さんが最終的に書いたのは「こっちはうまくやってるから、そっちも期待してるよ」という内容の歌詞だった。直訳して「あなたをがっかりさせたくない」というフックの歌詞は、お客さんに向けられたものなんだけど、何よりもこのメンバーが(別の世界線から)歌いながら(現実の世界線にいる)自分に対するメッセージになれば良いなっていう意味を込めて書いてくれたんだよね。聴いてみてどうだった?

tmrw イントロはすごく印象的で、今まで聞いたことない感じでした。「おや……?」って。

──「おや……?」って(笑)。ryuyaくんとかmanaちゃんとか、これまでリリスクのライブを結構観てたわけじゃない?

ryuya グループの未来にワクワクするような曲でした。

──すごい。そうだよね。お客さん目線の感想のようだけど、確かにメンバー自身もまだ次がどんな曲になるか分からないもんね。

mana レコーディングの前に仮歌というもの自体を初めて聴いたから、正直自分の曲だっていうイメージがずっと持てなかったんですよ。もちろん練習用に貰った音源を全部聴いて挑んだんですけど、馴染んでるか不安だったんです。でも、MV撮影の前にマスタリングの音源を聴いて、そこで初めてすごくしっくりきて。それでいま、コンセプトを聞いてすごい納得がいきました。毎週リハーサルを重ねる度、少しづつ自分のものに、自分たちの曲になっていく実感があります。

hana 私もmanaちゃんが言ってたことと同じで、最初自分がこの曲を歌うのがあんまり想像できなかった。バチバチのヒップホップを歌うのが好きなこともあって、ちゃんと自分の声やキャラとハマるかなって思ってました。でも、マスタリングされた曲を聴いたときに、褒めてもらったりもして、自信を持ちました。自分の声も「ちゃんとイケてるじゃん」って。

──それはすごく大事な感覚だと思う。

sayo 私はいろんなジャンルの音楽を聴いてきたけど、ヒップホップには詳しくないんです。でも“NEW WORLD”を聴いた時、イントロでワクワクしたし、ヒップホップに馴染みのない自分がこの曲をすごく良いと思ったんですよ。人はたくさんいると思うんです。だからこの曲を単純に良いと思った人たちが、リリスクのことも好きになってくれたらいいなって。

──それもすごく大切だと思う。minanに最初にデモ送った時、返信が「は…..?」だけだったよね。

一同 (笑)。

minan 良すぎて語彙が皆無になっちゃった。「リリスクってこうだよね」って思いました。これまでの軌跡を知ってくれてる作家さんやスタッフさんの気持ちを受け取ったし、またこのチームでやっていけるのがめちゃくちゃ嬉しいなって改めて思った。

reina 曲のタイトルは“NEW WORLD”じゃないですか。私もみんなも、新しい世界に飛び込むっていうこのタイミングで、自分の心情が重なる歌詞が多くて。さっきの話を聞いたら腑に落ちました。

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──たぶんこの曲が一番歌っていく曲になるから、これから育てて、どんなライブでやってもブチ上がる曲、アンセムにできたらいいな。2月12日に新曲として聴いてもらって、その後MVも出る。グループの活動がいよいよ始まるわけだけど、いまどういう心境?

sayo こんなカッコいい曲でデビューするからには売れたい。迷った時に聴こうと思ってます。

hana 歌っていてまだ自分の曲に出来ていない感覚があるので、練習を重ねて、ちゃんと思いを込めて歌えるようになりたいです。

ryuya reinaも言ってたし、曲のタイトル通り、新しい世界に飛び込む、本当にスタートを切るためのような曲だと思ってます。僕も正直、リハーサルで難しく思うときがあります。ストーリー性がある曲なので、気持ちが合ってるかグルグル考えることはあるんですけど、繰り返しやっていくことでしっくりくるスタイルが確立できるかなと思ってます。ここからだなって気持ちですね。

──曲に寄せていくんじゃなくて、自分に引っ張っていくのも大事だと思う。malikは?

malik 新しいリリスクを待ってる人がこの曲を聴いた時、メンバーが8人もいるし、それぞれのパートがしっかり振り分けられている分、誰がどこを歌っているのか気になると思うんですよ。正直、いただいたパートがちょっと少ないなと思ったんですけど、逆に自分を全部込めてやろうっていう気持ちになれたんです。みんなもそうだと思うし、だからこそ次の曲がより楽しみになるんじゃないかなって。僕がファンだったら、新メンバーで男性メンバーが入ってるし、これからどうなるのか、想像をかき立てられる曲だなって。

mana リハを重ねて、自分の曲にしたいです。新曲でもまだ借り物感、人の服を着て踊ってるみたいな気持ちが結構あるんです。前体制の曲もありますが、現時点で自分たちの曲はこの新曲だけじゃないですか。だから一番大切にしたいし、お客さんがこれを聴いて「これがやっぱりリリスクだよね」ってなって思ってほしい。あと、今日みんなの話を聞いて思ったのが、この曲の歌詞には今の状況が反映されているってこと。それまで歌詞をちゃんと聞き込むような音楽の聴き方ではなくて、とにかく音重視で聴いてきたので、やっと理解できてきました。最後のサビにある「繋がっていく未来へ」とか、「そうじゃん!」みたいな。

──そうだね(笑)。言ってみれば、あなたたちのために書かれた歌だから。

reina 新しい世界に飛び込む自分とリンクする部分があって、このタイミングで素敵な曲をいただけてとても幸せだなと思うし、全く新しい世界だからこそ不安も少しありました。けど、こうやって少しの間、メンバーたちと一緒に活動してきて、絶対大丈夫だなって思いました。

──それは運営も感じていることだと思うよ。2月12日を皮切りに4ヵ月連続 新曲”卸し”ライブ<”BACK TO (LYRICAL) SCHOOL”>も控えていて、“NEW WORLD”以外の新曲も披露していく予定だけど、これからの目標はありますか?

mana いっぱいライブして、自分たちだけの新曲だけで早くライブがしたい。

──まずはそれだよね。

tmrw もともと自分はヒップホップにあまり興味がなかったけど、 今回こういう機会を得て意識的にヒップホップを聴いてみたら、すごく面白いと思えた。sayoも言っていたけど、そういう風にヒップホップを好きになる人は僕以外にもいっぱいいると思うんですよ。リリスクがそのきっかけになればいいなと思います。

reina それで言うと、私はアイドルが好きでリリスクを聴くようになったので、そこからいろいろ広がっていって、アイドルファンの人にも聴いてもらえるようになりたい。その入り口になりたいです。

──すごく素敵な話です。malikは個人でも色々とやりたいことがあるわけじゃん。

malik この8人のリリスクを早く定着させたいです。最初は多分前のリリスクが好きで、新しい体制に興味を持ってライブに来てくれたり、曲を聴いてくれることも多いと思うんですけど、とにかく自分たちのリリスクに興味を持ってもらうこと。そうすれば、前の体制の曲も良いんだって、そういう入り口にもなる。

──みんなの正体が伝わったら、もうみんなの曲でしかなくなるからさ。そのポイントまで早く行こう。

ryuya いろんなジャンルを超えて、アーティストの方と共演したいです。現体制的にも唯一無二だと思うんですけど、さらに今回男性3人が入ったことで、リリスクのアイデンティティがより深くなっていると思うんですよ。それを活かして、トラックメイカーであったり、バンド、ヒップホップのクルー……色々なアーティストの方と共演して、ライブできたらいいなって思います。

──幅広く共演ができることもリリスクの魅力の一つだと思うし、個々での活動だってできる。ryuyaくんやmanaちゃんも曲作ってほしいし、グループの内部ユニットに分けたり、みんなで曲を作ったりもできる。男の子だけでライブに出たり、女の子だけでライブに出たって良いし、色々な活動があり、それぞれに色が出れば出るほど、いろんなアーティストさんとも仕事できるようになるかもしれないよね。

ryuya あと、例えば僕は台湾のフェスに好きなアーティストを観に行ったとき、目当てではなかったけど全然知らなかったカッコいいアーティストさんに出会ったことがありました。その出会いを通して視野が広がったりすると思うんですけど、お客さんにとって自分たちもそういう存在になれると思うんです。色々なアーティストさんとのコラボなどを通して、違う入り口からでもリリスクのことを知ってもらえたら良いなと思います。

hana 私はアイドルファンの方だけではなくて、もっとニッチな音楽好きの方々にも聴いてもらえるようになりたいです。おしゃれなDJさんに私たちの曲をプレイして欲しい。もちろんより広い層の方にも聴いていただきたくて、その中でもよりクールなグループとして活動していきたいです。あとは個人的にDJをやってみたくて勉強中なんですけど、色々な場所でDJをやったりして、入り口を広げていきたい。

──いいね。まずは良い作品を作るのもそうだし、リリスクを知らないけど偶然曲を聴いた人に「何回か聴いたことあるけど、これがリリスクなのか」って刺さって欲しい。hanaが言ったように、音楽好きな人たちにも刺さったら最高だよね。

sayo リリスクみたいにステージ上でメンバーが入れ替わりながら様々な曲をパフォーマンスするのって、珍しいですよね。色々なグループがある中で、この8人が何かをやることで、リリスクがいつも新鮮でファンの皆さんを驚かせる存在になれれば良いなと思います。あと、私も色々な人に曲を聴いてもらいたいです。私はヒップホップを全然知らなかったんですけど、今すごいハマってます。家で日常的にも聴いていて、昭和の古き良き曲に親しんできた母とめちゃめちゃ真面目な父が、リリスクを聴くようになって「“LAST DANCE”良いよね」って言ってるんですよ。だから私みたいにヒップホップを知らなかった人から、世代を問わず広い層に聴いてもらえると思ってます。

minan これからリリスクをどう名乗っていくのかは大切なことですけど、結局そのお客さんがどう思うかが肝心じゃないですか。だからとにかく良い楽曲を出して、良いライブをして、肩書関係なくカッコいい、みんなが推せるグループになりたいです。

──リリスクが「アイドル」かどうかって言われたら、まだ何とも言えない。前体制の模倣から始まるかもしれないけど、歌詞や曲を始めとするクリエイティブが、どんどんこの8人に対する”当て書き”になっていって、徐々にグループの形が変わっていくはず。それを「アイドル」と呼ばれるならそれで構わないけど、いわゆる「アイドル」の像から離れていって、「もうアイドルじゃない」って言われても、別にやってることは変わらない。何をしてもリリスクはリリスクのまま、どんどん良い方向に進んでいくし、それを一緒にできる仲間ができた。だからminanが言った通り、肩書は関係なくて、とにかく良いものを作って、良いライブをすれば良い。だから、あとはこんなグループ最高じゃんっていうのを伝えるだけだよね。これからもよろしくお願いします。

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聞き手/キムヤスヒロ
写真/小林真梨子
序文・編集/船津晃一朗

“NEW WORLD”レビュー
by つやちゃん

ギターをかき鳴らす、スケートボードで走り抜ける、DJをプレイする。新たな幕開けを告げるイントロが鳴り響く中、各々がやりたいことを表現し、メンバーが自分たちにカメラを向ける。MVの冒頭たった10秒で、新生lyrical schoolとは何たるかが宣言されている。

“NEW WORLD”は、ただただ自由気ままに表現する8人の姿が繋がれるだけのMVだ。男性のメンバーもいる。ファッションはてんでバラバラで、各々が楽しそうに何かに打ち込み、ふざけあっている。それはまるでファミリーのようで、新体制として新たに顔を合わせたメンバーたちがリラックスした時間を過ごしている。その点、一見するとlyrical schoolは大きく変わったように見えるし、実は何も変わっていないかのようにも見える。

かつて、多様性ある個の集団としてオルタナティブな価値観を生み大きな支持を得たアメリカのクルー・BROCKHAMPTONは、こう語った。「俺たちは、みんなが一緒に仕事をしたがるような大組織になることを目指してるんだ」「色んな部門があって、尊敬されて親しまれる組織…そういう風になりたい。ある意味で、自分たちが実験台だ」。BROCKHAMPTONは昨年、『The Family』という作品をリリースし、その後活動に終止符を打った。しかし、偉大な功績が色褪せることはない。自らをあえてボーイバンドと名乗り、世の中に国籍やジェンダー、音楽ジャンルについての問題提起を投げかけた。その音楽表現は、意義深いものだった。

“NEW WORLD”を観ていると、一つのジャンル/フォーマットを作り上げたlyrical schoolが次なるアイドルラップの定義を書き換えようと挑戦する態度がひしひしと伝わってくる。固定化されがちなアイドルラップの概念を、もっとインクルーシブに解釈していくことは可能なのか。それを、軽快にピースフルに、まるでファミリーのようなセーフティな関係性を作るかのごとく叶えていくことはできるのか。だからこそギターは甘酸っぱく煌めくようにかき鳴らされ、スケートボードは軽やかに走り抜け、楽曲を支えるベース音は全編で柔らかく鳴り続ける。BROCKHAMPTONのような自由さが脳裏をかすめる。

いま、lyrical schoolには壮大な可能性が開かれている。このファミリーは、尊敬され親しまれる組織になる。“NEW WORLD”に触れて胸を焦がしたあなたは、すでに新しい世界を生み出している。自らを誇り、そして生きよう。アイドルの世界に、ラップの世界に、ともに次の希望を打ち立てよう。

レビュ―/つやちゃん

INFORMATION

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左からsayo、ryuya、malik、reina、hana、tmrw、mana、minan

lyrical school(リリカルスクール)

略称は“リリスク”。ガールズ・ラップ・ユニットのパイオニアとして2018年のアルバム『WORLD’S END』をリリースした翌2019年5月にビクターのコネクトーンへ移籍。同年9月に移籍第一弾アルバム『BE KIND REWIND』、2020年4月にEP『OK!!!!!』、2021年4月にアルバム『Wonderland』をリリース、アイドル・フィールドでの圧倒的なネーム・ヴァリューはそのままにその斬新かつ鮮烈なコントラストを放つアーティスト・カラーにより、ヒップホップ、 ミクスチュア、オルタナといったジャンルを横断、唯一無二のポジションを確立。2022年4月のアルバム『L.S.』、そして7月24日の日比谷野外音楽堂で開催されたツアー・ファイナルを最後にminanを中心にリスタート、2023年2月12日のSpotify O-WESTで行われたワンマンで計8名からなる新体制が初お披露目された。

sayoサヨ)-MC/Vo
メンバーカラー/イエロー
誕生日/10月17日 出身地/埼玉県
Twitter/@ls_4_sayoInstagram/@ls_4_sayo
ryuyaリュウヤ)-MC/Vo
メンバーカラー/ブルー
誕生日/7月23日 出身地/茨城県
Twitter/@ls_3_ryuyaInstagram/@ls_3_ryuya
malikマリク)-MC/Vo
メンバーカラー/オレンジ
誕生日/3月17日 出身地/神奈川県(父がアメリカ人)
Twitter/@ls_2_malikInstagram/@ls_2_malik
reinaレイナ)-DJ/MC/Vo
メンバーカラー/グレー
誕生日/12月7日 出身地/福岡県
Twitter/@ls_7_reinaInstagram/@ls_7_reina
hanaハナ)-MC/Vo
メンバーカラー/ピンク
誕生日/12月23日 出身地/東京都
Twitter/@ls_5_hanaInstagram/@ls_5_hana
tmrwトモロウ)-MC/Vo
メンバーカラー/レッド
誕生日/4月17日 出身地/東京都
Twitter/@ls_1_tmrwInstagram/@ls_1_tmrw
manaマナ)-MC/Vo
メンバーカラー/グリーン
誕生日/12月20日 出身地/群馬県
Twitter/@ls_6_manaInstagram/@ls_6_mana
minanミナン)-MC/Vo
メンバーカラー/パープル
誕生日/12月5日 出身地/群馬県
Twitter/@Minan1205Instagram/_manybooks_

わたしたちのためのグループ──新生lyrical school、インタビュー&「NEW WORLD」レビュー music230215-lyricalschool-4

NEW WORLD(配信シングル)

音楽ストリーミングサービスおよびiTunes Store、レコチョク、moraなど主要ダウンロードサービスにて配信中。
※対応ストリーミングサービス:Amazon Music Unlimited、 Apple Music、AWA、Deezer、KKBOX、LINE MUSIC、Rakuten Music、Spotify 、TOWER RECORDS MUSIC、YouTube Music、dヒッツ、うたパス、SMART USEN

配信はこちらから

lyrical school FREE live “Orientation” at SHINJUKU OIOI MEN
会場:新宿マルイメン 屋上特設ステージ
日程:2023年2月19日(日)
時間:開場14:40/開演15:00
内容:ミニライブ&特典会
※フリー入場は、「整理番号付き観覧券」をお持ちのお客様が入場終了後、スペースがあった場合のみのご案内となります。会場内の状況によってはご入場いただけない可能性がございます。予めご了承ください。
※整理番号付き観覧券、特典会参加券には数に限りがあります。

※詳細はHPよりご確認ください。

詳細はこちらから

lyrical school live 2023 “BACK TO (LYRICAL) SCHOOL vol.1”
会場:秋葉原 Club Goodman
日程:2023年3月24日(金)
時間:開場18:30/開演19:00

【チケット情報】
・一般スタンディング¥3,500-(税込)
・学割チケット¥2,500-(税込)

※整理番号順入場 ※ドリンク代別途必要
※学割チケットをご購入の方は公演日当日、学生証・身分証明書のご提示が必要となります。
ご提示いただけない場合は一般チケットとの差額分をお支払いいただきます。

■LSHC(FC)会員抽選先行(抽選)
受付期間:2023/2/13(月)19:00〜2023/2/19(日)23:59
https://w.pia.jp/t/lyricalschool-t/■一般発売日 2023/3/4(土)12:00〜

lyrical school live 2023 “BACK TO (LYRICAL) SCHOOL vol.2”
会場:Spotify O-nest
日程:2023年4月13日(木)
時間:開場18:30/開演19:00

lyrical school live 2023 “BACK TO (LYRICAL) SCHOOL vol.3”
会場:Spotify O-nest
日程:2023年5月12日(金)
時間:開場18:30/開演19:00

lyrical school live 2023 “BACK TO (LYRICAL) SCHOOL vol.4”
会場:Spotify O-nest
日程:2023年6月9日(金)
時間:開場18:30/開演19:00

詳細はこちらから

lyrical school オフィシャル HP TwitterInstagram