不安がなかったと言えば噓になる。これまでアイドルラップの先駆者としてひた走ってきたlyrical school(以下、リリスク)だ。その間、世の中は大きく変わった。国内にラップをするアイドルは増えた。グローバルでは一寸のズレもないボーカルとダンスを披露しクラッシュするグループがチャートを席巻するようになった。いまや「アイドル」も「ラップ」も複雑なコンテクストを持ちすぎて、ちょっとだけ疲れてしまう時がある。だから、リリスクは新しいアイドルラップを作り上げた。ここにしかない、唯一無二のオルタナティブなクルーを。

minanが一人現れ、DJブースの前に立つ。プレイングマネージャーとしてクルーを引っ張っていくという覚悟が、引き締まった表情に見てとれる。ソロ曲“Last Note”を歌いフロアを温めたのち、新メンバーの男性三人が現れる。聴き慣れたイントロが流れる。男性の声で歌われる“NIGHT FLIGHT”。その後女性が二人現れ、また二人加わり……最終的に八名が揃い、minanから「lyrical schoolです」と紹介される。なるほど、7MC+1DJの男女混合クルーが新生リリスクの形ということだ。

ライブレポート|lyrical schoolが唯一無二のオルタナティブなクルーに。2023年2月12日、初ライブで伝えた確かな温度 music230215-lyricalschool-3

しかし、なんて面白いのだろう。リリスクのディスコグラフィの中でも特に高い声で歌われていた印象の“Tokyo Burning”を、よりによってminanと男性三人がパフォーマンスする。複雑なリズムを転々とする“OK!”や“Fantasy”を、初対面からたった二か月しか経っていない八人が絶妙なコンビネーションで披露する。曲によってステージ上の人数を頻繁に足し引きする可変システムで、観客に驚きを提供し続ける。どのシステムでも要のパートをminanが押さえることによって、lyrical schoolとしか言えない世界観が成立している。

当然ながら新メンバーのスキルにまだバラつきはあるし、荒削りなところもある。改めて、こんなにもラップを乗せるのが難しい複雑怪奇なビートだったことに驚く。けれども、このクルーのパフォーマンスはそのルーズさをカバーしてあり余るほどの連帯感を生んでいる。二度披露された新曲“NEW WORLD”には、その関係性が凝縮されていたように思う。エモとインディロックとアイドルラップの良いところを全て盛り込んだような眩しいサウンドに乗って、メンバー同士が顔を合わせ笑い、ハイタッチし、互いに語りかけるように歌う。それぞれが際立った個性を発揮していた新メンバーは、これからますますその才能を開花させていくに違いない。

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昨年末にminanに取材した際、彼女は「リリスクとして大事にしてきたことはちゃんと受け継いだ」としきりに言っていた。ライブを観ながら、私はその言葉を思い出して何度か泣いてしまった。minanの話していたことがようやく分かったからだ。大胆に変えるところと頑固に守り抜くところをどこに置くか、彼女は全て知り尽くしていた。

リリスクはクリエイティブ派や楽曲派のアイドルだとよく言われる。私もそう思う。ただ、それだけだとリリスクの本当の魅力を説明しきれていないとも感じる。このクルーの凄みとは、どんな音楽も自分たちが持つ温かさや体温を通して表現できる点にあるのではないだろうか。そして、メンバーそれぞれに意思がなければそれは実現し得ない。リリスクはいつもそうやって音楽を表現するということの不思議さと奥深さを教えてくれるし、過去の曲が新メンバーの体温を通して生まれ変わっていたのも、minanが一番大切なことを守り貫き通してきたからに他ならない。

ちょっと疲れたこの時代に、必ずやリリスクは必要なのだ――世界に全く新しいゲームを生み出すために。それは、アイドルやラップというものを考えに考え抜いたからこそ、もはやアイドルでもラップでもないのかもしれない。ヘルシーでエフォートレスで温かくて、でも突き抜けていて未来志向な表現。だからこそ、メンバーも私たちも心身ともに健康に留意して。ひとまずお疲れさま、しっかり体を休めてまた次の現場で。

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文/つやちゃん
写真/沼田学

lyrical school/NEW WORLD(Full Length Music Video)

INFORMATION

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左からsayo、ryuya、malik、reina、hana、tmrw、mana、minan

lyrical school(リリカルスクール)

略称は“リリスク”。ガールズ・ラップ・ユニットのパイオニアとして2018年のアルバム『WORLD’S END』をリリースした翌2019年5月にビクターのコネクトーンへ移籍。同年9月に移籍第一弾アルバム『BE KIND REWIND』、2020年4月にEP『OK!!!!!』、2021年4月にアルバム『Wonderland』をリリース、アイドル・フィールドでの圧倒的なネーム・ヴァリューはそのままにその斬新かつ鮮烈なコントラストを放つアーティスト・カラーにより、ヒップホップ、 ミクスチュア、オルタナといったジャンルを横断、唯一無二のポジションを確立。2022年4月のアルバム『L.S.』、そして7月24日の日比谷野外音楽堂で開催されたツアー・ファイナルを最後にminanを中心にリスタート、2023年2月12日のSpotify O-WESTで行われたワンマンで計8名からなる新体制が初お披露目された。

sayoサヨ)-MC/Vo
メンバーカラー/イエロー
誕生日/10月17日 出身地/埼玉県
Twitter/@ls_4_sayoInstagram/@ls_4_sayo
ryuyaリュウヤ)-MC/Vo
メンバーカラー/ブルー
誕生日/7月23日 出身地/茨城県
Twitter/@ls_3_ryuyaInstagram/@ls_3_ryuya
malikマリク)-MC/Vo
メンバーカラー/オレンジ
誕生日/3月17日 出身地/神奈川県(父がアメリカ人)
Twitter/@ls_2_malikInstagram/@ls_2_malik
reinaレイナ)-DJ/MC/Vo
メンバーカラー/グレー
誕生日/12月7日 出身地/福岡県
Twitter/@ls_7_reinaInstagram/@ls_7_reina
hanaハナ)-MC/Vo
メンバーカラー/ピンク
誕生日/12月23日 出身地/東京都
Twitter/@ls_5_hanaInstagram/@ls_5_hana
tmrwトモロウ)-MC/Vo
メンバーカラー/レッド
誕生日/4月17日 出身地/東京都
Twitter/@ls_1_tmrwInstagram/@ls_1_tmrw
manaマナ)-MC/Vo
メンバーカラー/グリーン
誕生日/12月20日 出身地/群馬県
Twitter/@ls_6_manaInstagram/@ls_6_mana
minanミナン)-MC/Vo
メンバーカラー/パープル
誕生日/12月5日 出身地/群馬県
Twitter/@Minan1205Instagram/_manybooks_

ライブレポート|lyrical schoolが唯一無二のオルタナティブなクルーに。2023年2月12日、初ライブで伝えた確かな温度 music230215-lyricalschool-4

NEW WORLD(配信シングル)

音楽ストリーミングサービスおよびiTunes Store、レコチョク、moraなど主要ダウンロードサービスにて配信中。
※対応ストリーミングサービス:Amazon Music Unlimited、 Apple Music、AWA、Deezer、KKBOX、LINE MUSIC、Rakuten Music、Spotify 、TOWER RECORDS MUSIC、YouTube Music、dヒッツ、うたパス、SMART USEN

配信はこちらから

lyrical school FREE live “Orientation” at SHINJUKU OIOI MEN
会場:新宿マルイメン 屋上特設ステージ
日程:2023年2月19日(日)
時間:開場14:40/開演15:00
内容:ミニライブ&特典会
※フリー入場は、「整理番号付き観覧券」をお持ちのお客様が入場終了後、スペースがあった場合のみのご案内となります。会場内の状況によってはご入場いただけない可能性がございます。予めご了承ください。
※整理番号付き観覧券、特典会参加券には数に限りがあります。

※詳細はHPよりご確認ください。

詳細はこちらから

lyrical school live 2023 “BACK TO (LYRICAL) SCHOOL vol.1”
会場:秋葉原 Club Goodman
日程:2023年3月24日(金)
時間:開場18:30/開演19:00

【チケット情報】
・一般スタンディング¥3,500-(税込)
・学割チケット¥2,500-(税込)

※整理番号順入場 ※ドリンク代別途必要
※学割チケットをご購入の方は公演日当日、学生証・身分証明書のご提示が必要となります。
ご提示いただけない場合は一般チケットとの差額分をお支払いいただきます。

■LSHC(FC)会員抽選先行(抽選)
受付期間:2023/2/13(月)19:00〜2023/2/19(日)23:59
https://w.pia.jp/t/lyricalschool-t/■一般発売日 2023/3/4(土)12:00〜

lyrical school live 2023 “BACK TO (LYRICAL) SCHOOL vol.2”
会場:Spotify O-nest
日程:2023年4月13日(木)
時間:開場18:30/開演19:00

lyrical school live 2023 “BACK TO (LYRICAL) SCHOOL vol.3”
会場:Spotify O-nest
日程:2023年5月12日(金)
時間:開場18:30/開演19:00

lyrical school live 2023 “BACK TO (LYRICAL) SCHOOL vol.4”
会場:Spotify O-nest
日程:2023年6月9日(金)
時間:開場18:30/開演19:00

詳細はこちらから

lyrical school オフィシャル HP TwitterInstagram