SIKK-O 美大を出ていることに意味があるとしたら、そういう部分に活かされているのかもしれません。パッケージや映像といったものは、楽曲制作と同じか、それ以上の熱量でこだわって作っていますね。

TSUBAME 音はもちろんですが、アートワークもミュージックビデオも“作品”なので、そこだけはなめられちゃいけないという気持ちはあります。むしろ曲の方はけなされても仕方ないかなと思えても、外にでる絵的な部分では絶対に妥協できないし、緊張して作っているんですよ(笑)。

DULLBOY はじめのうちは技術もなくて本当に曲が稚拙だったので、ヴィジュアルだけは自分達が納得できるようにしようとしたよね(笑)。

JYAJIE 僕たち、見た目はいいんです(笑)。

TSUBAME でもMACKA-CHINさんの頃、それこそニトロの初期の曲は今聴いてもものすごくクオリティが高いですよね。

MACKA-CHIN 当時はProtoolsもAbleton Liveもなかったの。俺たちの時はとにかくライブをやって、そこで人気がでてきたらレコード会社とかお金を持っている大人たちが声をかけてくれて、初めてスタジオに入って曲を作れるのよ。だから今の子達とは順番が逆だよね。曲を作ることへのハードルが高い分、作れるとなったらはじめから一日十何万もするようなスタジオで、それ相応の機材とエンジニアと作れるから、自ずと曲のクオリティも高いものができたんだよ。そういう作る順番としては俺とTHCは真逆なんだけど、一周回ってシンクロする部分も感じるんだよね。

ーーTHCが雑にならず、丁寧なモノ作りをしてきた結果ですよね。

TSUBAME ようやくという感じですよ。ニトロや、最近で言えばSALUくんやAKLOさんもリリースしてきた、いわゆる”ヒップホップ”の名門である〈Manhattan Records〉から、ヒップホップなのかどうかも怪しい僕らがリリースするっていうのは今でも不思議な気分です(笑)。

JYAJIE 今までの人たちとは全く違う毛色であることは間違いないよね(笑)。

MACKA-CHIN×TOKYO HEALTH CLUB 日本語ラップシーンの異端児同士による初の対談が実現! music160413_mackachin_13

ーー今回の「MACKA-CHIN “ズラカル feat. TOKYO HEALTH CLUB”」、「TOKYO HEALTH CLUB “ASA”」の2枚の7インチに加えて、THCとしてのニューアルバムも〈Manhattan Records〉からリリースされるんですね。

TSUBAME そうですね。今回の“ASA”や、“ズラカル”のアルバムバージョンも収録される予定です。

ーーMACKA-CHINさんは“ズラカル”でTHCと作業をしてみて、いかがでしたか?

MACKA-CHIN 面白かったよ! まずはラフとしてメインのワンループと少し音を抜いたループを送ったんだけど、TSUBAMEがそれをリエディットして曲の展開まで完全に仕上げてきてくれて、あんなにクオリティの高いデモは久々に聴いたな。90年代の雰囲気を感じさる緻密に計算された曲の構成の仕方で、よく研究しているなと感じたよ。

MACKA-CHIN×TOKYO HEALTH CLUB 日本語ラップシーンの異端児同士による初の対談が実現! music160413_mackachin_4

ーーもともとはMACKA-CHINさんがラップをする予定はなかったんですよね?

MACKA-CHIN そう、もともと俺は母なる大地となるから、君たちは綺麗な桜を咲かせてって感じだったんだけど~、結局俺も根っこから集合しちゃった(笑)。

DULLBOY それで最終的に全部持っていかれちゃいましたよ(笑)。

MACKA-CHIN でも俺がニトロで使ったセリフとかもサラっとサンプリングしてきたじゃん(笑)。今の子達って気を使ってそういうのをなかなかやってこないんだけど、こいつらはケロッとした顔でやってきたからね。「夜になると開きたくなる扉」ってラインなんだけど、それを聴いて、俺もうぶち上がっちゃって。周りのやつらに「これ、俺のこと歌ってくれてるんだぜ!」って聴かせちゃったもん(笑)。楽しんでやってくれている感が伝わってきて嬉しかったね。

SIKK-O はじめは怒られるんじゃないかってちょっと心配してたよね(笑)。

JYAJIE そうそう、でもとりあえず投げてみようぜって(笑)。そしたらMACKA-CHINさんが「開けちゃいますか!」ってツイートしてくれていて、ホッとしました(笑)。

MACKA-CHIN もう俺も40歳越えてるからどこの現場に行っても完全に歳上だし、そうやっていじられることもなくなっちゃってさ。だから逆にそういうのが嬉しかったわけ(笑)。

JYAJIE いや、いじってるわけじゃないんですよ!?(笑)。

MACKA-CHIN ああ、触れてくれるってことね(笑)。

JYAJIE リスペクトです(笑)。

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ーーTHCとしては、MACKA-CHINさんからフィーチャリングのオファーがきたときにどのように感じましたか?

TSUBAME うわ、なんかヤバいのきた……って感じで(笑)。ヒップホップレジェンドの人だし、俺らでいいのかよって焦りましたよ。

SIKK-O トラックをもらった後も、これどうしようか……って誰かが手をつけるのをそれぞれが待っていました(笑)。ただトラックがすごくかっこよかったので、あえて僕らがニトロっぽくギャングスタっぽいテーマでやったら面白いかもということになり、“ズラカル”というワードが浮かんで。そこからはこれまでにないくらいの早さで完成させられましたね。

DULLBOY ただその時はまだMACKA-CHINさんにもお会いしていなかったので、めちゃくちゃ不安でしたよ。レコーディングに行くときも、俺らが遅刻しちゃって更に焦るという(笑)。実際に会ってみたら気さくな方で本当に安心しました。

JYAJIE この間SEX山口さんにお会いした時、MACKA-CHINさんにフィーチャリングされたことを話したらめちゃくちゃ羨ましがられました(笑)。でも同時に、MACKA-CHINさんはニトロのイメージもあるけど、THCのテイストにも理解がある人だから、絶対に合うと思うと言ってくれて。

TSUBAME 僕らが言うのもおこがましいですけど、MACKA-CHINさんの作品には第一に“クリエイティブ”があると思うんです。ニトロの中でも言葉の遊び方が他の方とは全然違うし。そういう部分に僕らも共通する部分を感じるので、今回MACKA-CHINさんが僕らに声をかけてくれたのはそこなのかなと思いました。

MACKA-CHIN 俺はヒップホップ、ヒップホップしていないからね。ヒップホップだけじゃなくてファッションも好きだし、色んなカルチャーが好き。「俺はラッパーだからラップしかしねーぜ!」みたいな子達が今は多いけど、ニトロの他のメンバーも含めて、俺らはそういう感じではなかったんだよ。あえて悪ぶって悪い歌を歌ったりしてたの。今は本当に悪い人が悪い歌を歌うでしょ(笑)。でもそれだとクオリティ的に物足りないものが多いし、シーンの外の人達から敬遠されかねないじゃん。だから俺としては、ヒップホップを通して自分達のオリジナリティを表現しているTHCのスタイルの方に共感できるし、好きなんだよね。美大卒だからかわからないけど、THCは本当に斜に構えているもんね(笑)。皆が好きっていうハリー・ポッターを、まずは疑いの目から見るというかさ。

TSUBAME でもDULLBOYはハリー・ポッター大好きだよね。

MACKA-CHIN まあ俺も好きなんだけどさ(笑)!

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ーー今作“ズラカル/理屈じゃなくて感じるSympathy”は、今後リリースされるMACKA-CHINさんのニューアルバムからの先行シングルという位置づけなのですよね。

MACKA-CHIN そう、アルバムは10月にリリースしようと思っているんだけど、その先行。今回は一曲ずつ丁寧に、焦らず出していきたいんだよね。まずは今回のダブルA面シングルが4月に出て、THCのアルバムが6月、その後には俺のアルバムっていう、いい流れが作れると思うよ。

ーーTHCは同時に『ASA』のシングル(レコード)もリリースしますね。

MACKA-CHIN あのIllicit Tsuboi君のリミックスヤバくない?「何これ?」って思っちゃったよ。完全にネクストレベルだよ、あれは。かっこ良過ぎちゃった。

TSUBAME 最高ですよね。僕らにヒップホップ要素がない分、MACKA-CHINさんやIllicit Tsuboiさんと一緒にやることでそれを補うというわけではないですが、新しい側面を見せていければいいなと思っています。

SIKK-O もう新しいアルバムの制作もほぼほぼ完了していますが、クオリティ的な意味でもこれまでの2倍くらいは完成度の高いものができていると思いますので、是非楽しみにしていてください。

DULLBOY ミックスやマスタリングもそうだけど、あとは声の録り方だよね。この前MACKA-CHINさんと録音させてもらった時、初めてプロの人の声の録り方を見たので、それが衝撃的で。今回のアルバムではその手法をかなりパクらせていただいています(笑)。

MACKA-CHIN マジかよ(笑)!

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RELEASE INFORMATION

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text & interview by YOSA
photo by ENA YANAI