これまでにQeticでは、mergrimの新譜『Hyper Fleeting Vision』とmoshimossの新譜『endless endings』関連のニュースを配信してきた。それぞれの記事は、電子音楽に高いアンテナ感度を持つ読者を中心に大きな反響を得て、改めて彼らへの注目度の高さを示すものだった。そして今回は、いよいよ両者による対談をお届けする。
mergrimとmoshimossは大分類として電子音楽家であり、mergrimは〈moph records〉を、moshimossは〈Neguse Group〉を主宰するレーベルオーナーでもある。そんな表現者とレーベル運営者という共通項を持つ者同士として、二人にはお互いの活動をはじめ、彼らを語る上で用いられるエレクトロニカというキーワードへのイメージ、さらにはシーンに対する思いまでを語ってもらった。また対談の中では、当日にオブザーバーとして立ち会った、moshimossとmergrimにとって古くからの共通の友人でもあるAmetsubも所々で登場する。mergrimとmoshimossを古くから知る人物が見守る中、二人の対談は2時間近くまで及んだ。
特別対談:mergrim × moshimoss
――まずはお二人が知り合う経緯から聞いていきたいんですが、お互いの共通点として、音楽家でありレーベルオーナーでもあるんですよね。今回のように膝を合わせて話し込む機会はこれまでにもありましたか?
mergrim 実はまともに話したことがないんですよね(笑)。
moshimoss イベントで会うことがほとんどなんですよ。僕は山梨からたまにしか東京に行けないから、大体ミツさん(mergrim)は酔っぱらっているっていう(笑)。一回二人きりでラーメン食いに行きましたよね。あれが一番まともだった。
mergrim (笑)知り合うきっかけはAmetsubくんだよね。僕と〈moph records〉を一緒にやってるShotaro Hirataはmoshimossくんと繋がっていたけど、僕は直接の繋がりがなくて。意識したのはAmetsubくんとの繋がりからなんだと思う。
moshimoss 僕は〈moph〉のことは知ってたんですよ。自分も〈Neguse Group〉をやっていて、色んな人たちと知り合っていく中でミツさんとも出会って。
mergrim はじめて会ったのは<TAICOCLUB>だったよね。
moshimoss あ、そうだ!
mergrim その前までTwitterでお互いの存在はAmetsubを介して知っていたんだけど、実際に会ったことはなくて。moshimossくんからは一筋縄では行かないリプライが来るんですよ(笑)。しかも、それが〈Neguse Group〉のオフィシャルアカウントで来るから、「訳の分からないレーベルだな。何なんだ、この人は?!」と思ったのが、moshimossというアーティストをはじめて意識した瞬間で。それでbandcampで音源を買ったら、すごくかっこよくて。音がすごく繊細でメランコリックなのに、様子のおかしい発言をするギャップというか(笑)。それだから全く、彼の人となりが見えなかったんですよね。〈Neguse〉のアイコンも不気味な絵に変わったりして。
moshimoss 色々あったから、好きなことをやってやろうというか。自分が何をやりたいのかよく分からない悶々とした時代があったんですよ。僕の場合はその影響からか、より真逆のほうに働き過ぎちゃったのかもしれない。でも僕は、ミツさんのことをちょこちょこと気にしていましたよ。知り合う以前にInstagramでミツさんに話し掛けたんですけど、何も返ってこなかったことがあって(笑)。クライミングジムの写真が上がっていて、僕もクライミングをやっていたから、「あ、これがきっかけだ!」と思って勝手にシンパシーを感じたんですよね。
mergrim え、moshimossくんもクライミングやってたの?
moshimoss ほら、覚えてない!僕としては、音楽というよりかは別のところで繋がるのが結構楽しくて。
mergrim たしかに〈Neguse〉は釣りの繋がりとか多そうだもんね。
moshimoss そうですね、色々といますね。
――今日はオブザーバーとして同席しているAmetsubさんの存在が、お二人に大きく関わっているんですね。
Ametsub 僕が二人と知り合ったのは、かなり昔のことなんですよ。ミツさんは僕が22、23歳の時だから、まだmergrimになる前にjunoっていうユニットをやっていて。
mergrim 思い出した!青山でIDEEがやってたsputnik underground LOWだ。あそこでやったリリパに遊びに来てくれたんだよね。
Ametsub そうそう。ふらっと遊びに行ったらイベントをやっていて、それがすごく良かった。そこで僕からミツさんに声を掛けてから始まった繋がりですね。moshimossも大体それと同じ時期なんですよ。彼は当初、渋い感じのダブテクノをインターネット上で発表していて。ダブテクノの掲示板みたいな所で発見して、たくさんいるアーティストの中でも特にすごかったので、その時も僕から声を掛けて。
――じゃあ、moshimossさんとはオンラインで?
Ametsub そうですね。だから実際に会ったのは結構後のことで。
moshimoss moduleでやった俺のライヴの時だよね。でも、ちょっと話をしただけで、Ametsubは入口まで来てくれたのに入らなかったんですよ(笑)。そこから全然会ってなかったんですよね。たまにメールをしていたぐらいで。
――先日moshimossさんには別のインタビューの機会で、過去にバンドをやっていたというエピソードを話してもらいましたけど、mergrimさんもバンドをやっていたそうですね。
mergrim そうですね、僕もバンド出身です。97年か98年ぐらいまでなんですけど、〈SUBPOP〉的なエモい感じのものをやってましたね。それとギタリストがブランキー狂だったので、ブランキーみたいな要素を合わせたりして、指が血まみれになりながらギターを弾いてました(笑)。僕はギターヴォーカルだったんですよ。
moshimoss え、ヴォーカルですか?でもミツさんの音って、ロックというかバンド出身なんだなという感じはしますよ。ドラムとかを入れているのも、まさにフィジカルの要素だと思うし。
mergrim あぁ、出ている感じはあるよね。moshimossくんの音楽もバンド的な展開というか気持ちよさがある。
moshimoss 僕がバンドをやってたのは高校を卒業して、ちょっとぐらいまでですね。オリジナルの曲をやってはいたんですけど、バンド活動と言えるほどの活動はしていなくて。
mergrim パートは何をやってたの?
moshimoss 実は僕もギターヴォーカルです(笑)。元々激しい音楽は好きなんですよね。
★インタビューまだまだ続く!
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