mysoundイチ押しのアーティストにテーマに合わせた楽曲をピックアップしてもらい、その曲にまつわるエピソードから本質を掘り下げていくプレイリスト企画。今回は昨年12月に正式なデビュー曲“時代“をリリースしたばかりの3人組、MISTAKESの登場です。
YOUR ROMANCEのボーカル宮内シンジ、indigo la Endでも活動する佐藤栄太郎、デリシャスウィートスのメンバーでもある井上まさやの3人が集まって生み出される楽曲には、海外の音楽シーンのトレンドともリンクするソウルのフィーリングと、普遍的なポップ・ソングとしての魅力が高い次元でひとつになっています。
今回は「MISTAKESの時代を彩った邦楽集」をテーマに、メンバーが影響を受けた日本の音楽を選んでもらいました。
Interview:MISTAKES
——今回はみなさんが影響を受けたJ-POP作品を選んでもらいました。まずはそれぞれの楽曲について、どんなところに魅力を感じたのか教えてもらえると嬉しいです。宮内さんの1曲目は菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラールの“Super Rich Kids”ですね。
宮内シンジ(Vo/G) 今回は時代をテーマにしつつ、自分たちが影響を受けたJ-POPを選んでみました。“Super Rich Kids”はフランク・オーシャンのカヴァー。原曲が入っている『Channel Orange』が出た12年頃は周りのインディ・ロック・バンドを聴いていた人たちがUSメインストリームの音楽やブラック・ミュージックも普通に聴くようになってきた時期で、そのきっかけになったのが『Channel Orange』だったと思うんですよ。「ストロークスのファーストみたいなアルバムだな」と思いました。
菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール – “Super Rich Kids”
——新しい時代のはじまりを象徴する作品、ということですね。
宮内 そうです。最初に聴いた人はびっくりしたり、理解できなかったかもしれないけど、結果的にその時代の一番かっこいいものになったというか。今回は日本のアーティストで選ぶというテーマだったので、菊池成孔さんのカヴァーにしました。菊池さんは、面白いカルチャーがあるところにちゃんといる感じがすごい。14年の『戦前と戦後』(菊池成孔が洋邦問わず戦前/戦後の楽曲をカヴァーしたヴォーカル・アルバム)の曲ですね。
佐藤栄太郎(Dr) “Super Rich Kids”のカヴァーは今っぽい現象ですよね。フランク・オーシャン筆頭に、ジャンルの輪郭を失くしていく最新のR&Bを受けて、菊地さんのような方がバンドでカヴァーするのはとても良いことだと思います。
宮内 次の矢野顕子さんの“ROSE GARDEN”は81年の『ただいま』の曲。坂本龍一さんが一緒に作っていますけど、YMOやティン・パン・アレー(細野晴臣、鈴木茂、松任谷正隆、佐藤博、林立夫によるバンド)周りの人たちがたくさん参加していて、フュージョン的な感覚がある。当時の海外の音楽を比べても遜色のない音を鳴らしていると思うので、これも時代を象徴する曲だと思います。安全地帯の“ラン・オブ・ラック”は、この人たちの曲の中でもポップスの黄金時代の雰囲気の曲というより、ギター・ポップなんですよね。
——ネオアコのような雰囲気がある曲ですね。
宮内 アルバム『リメンバー・トゥ・リメンバー』(83年)の楽曲は基本的にはハード・ロックですけど、中でもこの曲は唯一のギター・ポップ。安全地帯はポップスを作っているバンドというイメージでしたが、ストリーミング・サービスで過去の音源を初めて聴いて、安全地帯はロックバンドという認識に変わりました。
気になる佐藤栄太郎&井上まさや選んだ「時代を彩った邦楽」とは?
text & interview by 杉山仁
photo by nakamura shintaro