タイミングとダイナミズムという部分がアメリカはしっかり意識されていて(ナカヤーン)

ーーテキサスのオースティン、ニューヨークとアメリカでライブをやってみた素直な心境をお聞かせください。

川辺 こっちのお客さんはすごく反応がダイレクトだなと思いました。ギターソロが終わった後にウォー! って盛り上がったり、僕がとちるとウッみたいな顔をされたりとか。日本よりも感情が増幅されて伝わってくると演奏していて感じました。得るものが圧倒的に多かったですね。

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ーー音楽性的な部分はどうですか?

川辺 やっぱりただ演奏するだけでも「日本人」っていう空気が出ますね。でもリズムとかに対しての反応はあって。いいなと思いました。言葉では通じないけど、ビートでみんな乗ってくれるんだなと。そこはこれからも突き詰めていくといいのかなと思いました。

ナカヤーン 今回の新作、16ビートの曲が多いんですよ。そこで“忘れる”って曲の反応が良かったりとか。何かしらのオリジナリティを出していけたら、それにダイレクトに反応が返ってくるというのはすごく感じました。

ーーアメリカの環境から何か得るものはありましたか?

川辺 オースティンに着いた日の夜にバーに行ったんですよ。そのバーが通りに面しているのにも関わらず、窓全開の状況下で大きな音でバンドが演奏していたんですね。アンプもドラムも直の音でマイクだけスピーカーから出していて。本当に家の中でライブをやっているような感覚で。それでもそれはそれでライブとしての音が完璧に出来上がっていて驚きました。音楽と生活がすごく近いからこういうような演奏がどこでも出来るんだと思って衝撃を受けました。

ナカヤーン 正直、音響の面では日本のしっかりしたライブハウスの方が明らかに環境はいいじゃないですか。だけど、バツっと聞こえてくるタイミングとダイナミズムという部分がアメリカはしっかり意識されていて。

須田 日本でライブをやる際はやる前の準備でどう整えるか集中することが多いんですね。それはもちろん大事なことだと思うんだけど、アメリカでツアーを回っていて思うことは自分たちのコンディションも含めその場所、場所で何をやれるか考えることも大事だなと。

川辺 どこでも良いライブができるようにならなきゃいけないと思いましたね。一軒家やバー、街の中でやったりとかね。

4人が演奏する姿を想像できるような作品(川辺)

ーーでは、4作目となる新作タイトル『A Long Day』に込められた意味をお聞かせください。

川辺 僕ら的には一本の映画のようで、ゆるやかにシーンが繋がっていてひとつのまとまりになっているみたいな。それが“A Long Day=ある長い1日”みたいなイメージを出したいなという。

ーー私の印象だと、起承転結というよりはフラットにそのシークエンスが続いていると感じました。

一同 うんうん。

川辺 それはあるね。起承転結ではないね。

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ーーその上でなぜ“あこがれ”が最初の曲に?

川辺 “あこがれ”が最初に入ったのは再生した時にこれが最初だったらいいだろうってみんなで意見がまとまったんだけど。

ナカヤーン このアルバムは時系列でもなんでもないから単純に始まりを表現しているのが“あこがれ”だったという。

“あこがれ”

須田 今回、曲順がかなり早い段階で決まっていたんだよね。もうレコーディングの前に曲順まで決まっていて。その曲順の中でこの曲とこの曲の間で面白いことができないかなとか。そうやってアルバム単位で考えていって曲順を決めたんだと思う。そこで、1つ1つ並べたときに1曲目にくるのは“あこがれ”だなと。曲間を色々繋げていったりする作業の中でそのシークエンスが映画っぽく感じたり、長い1日のようなイメージがしっくりきて、『A Long Day』だなとアルバムタイトルが決まりました。

ーー前作『ささやき』と比べて制作のプロセスで大きな違いはありましたか?

川辺 僕個人の話でいうと『ささやき』でツアーをやったときに『ささやき』って作品は多重録音が多くて、12曲中半分ぐらいしかツアーで演奏できない状況が微妙だと感じたんですね。『ささやき』は音源で聴いたときにはいいなって思って作ったけど、次は生で4人が演奏する姿を想像できるような作品を制作するのもいいかもなと『ささやき』から影響受けた感じはありました。メンバーともアレンジの段階で音数を増やさないようにしようとか、アルバム全体で曲を繋げたりとか、ライブで僕らがやってきた曲間の繋ぎとかも新作の中で取り込めないかなと思って作っていきました。なので曲間を繋げてスムーズな感じのアルバムにしたかったというのと多重録音に頼るのではなくてミツメの4人が演奏している感じにしたいという2つの柱が今回はありました。

ーーレコーディングも4人で演奏して?

川辺 ダビングでプラスでギター1本足したりとかシェイカーが一本増えてたりとかはあるけれど、大体は4人で演奏しています。レコーディングの最初の段階では全て1発録りで4人同時に演奏しています。

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