メロディーズ・エコー・チャンバーのギタリストとしても知られるパブロ・パドヴァーニが率いるフレンチ・ポップ・バンド・Moodoidと、水曜日のカンパネラによる国境を越えたコラボレーションが実現した。この企画は、<SUMMER SONIC 2018(以下、サマソニ)>と<Les Eurockeennes(レ・ユーロケン)>の連動企画として実現したもので、両者はフェス当日にステージ上でコラボレーションを果たす。

また、水曜日のカンパネラが6月27日にリリースする最新EP『ガラパゴス』の収録曲“マトリョーシカ”と、同日にリリースされるMoodoidのアルバム『Cité Champagne』の収録曲“Language”にお互いがゲストとして参加するなど、両者のコラボはライブのみのかかわりを越えた密なものに発展している。

今回はMoodoidの中心人物パブロと、水曜日のカンパネラのコムアイの2人に、今回のコラボの作業風景や、国や価値観を越えて人々を繋げる音楽の魅力について聞いた。

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Interview:水曜日のカンパネラ×Moodoid

——今回のコラボレーションが決まる前から、パブロさん(パブロ・パドヴァーニ:Moodoid)はここ数年、何度か日本を訪れていたそうですね? 日本に来てみて、どんなことが一番印象的でしたか? また、その滞在時、日本の音楽にも触れる機会はありましたか?

Moodoid 年半前に初めて日本に来て、そのときは代官山Unitとアンスティテュ・フランセ東京でライブをやらせてもらったんだけど、そのときに受けたカルチャー・ショックが本当に大きくて、日本に一目で恋に落ちたんだ。で、そのあと4回ぐらいバカンスで日本に来て……。

コムアイ 4回も(笑)。

Moodoid 東京、京都、直島、広島を訪れて、この国にすごくインスピレーションをもらったよ。僕は特に、日本の80年代の音楽が大好きなんだ。ファンクな雰囲気があるものもいいし、YMOや坂本龍一さんの曲も好きだし、彼らが参加していたPACIFIC』(78年。YMOとしてデビューする直前の細野晴臣が高橋幸宏、坂本龍一らと提供した音源や、山下達郎のインスト作品を収録)も大好きで。日本に来るたびに、CD店やレコードショップに立ち寄っては日本の音楽を買い漁っているよ。

コムアイ へええ、どのレコードショップに行くの?

Moodoid たとえば、下北沢のCITY COUNTRY CITY。下北沢にはよくレコードを買いに行くから、他にもGeneral Recordやディスクユニオンに行くよ。

——一方コムアイさんは、昨年水曜日のカンパネラとして音楽フェス<Les Eurockeennes>に出演しましたね。

コムアイ ライブで行ったのはそのときが初めてでした。でも、その前にひとりでトゥールーズに旅行に行ったことがあるんですよ。

Moodoid えっ、僕はトゥールーズ出身だよ?

コムアイ わぁ、そうなんだ! そこで感じたのがフランスの最初のイメージで、トゥールーズは首都じゃないのに大きなビオスーパーがたくさんあって、食べ物も化粧品もオーガニックなものが揃っていて。日本だと美味しい食べ物を探すのも難しいけど、「フランスは住みやすそうだな」と思ったのを覚えています。あと、芝生もすごく柔らかくて、コンフォータブルなものに対する欲求がすごいんだろうな、って。フランスの芝生って日本の芝生とは種類が違うらしくて、寝っ転がっててもすごく気持ちいいんですよね。

Moodoid そういえば、コムアイから「フランスは芝生がいい」って聞いたことがある(笑)。

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——そして今回、<サマソニ>と<Les Eurockeennes>の連動企画で水曜日のカンパネラとMoodoidのコラボレーションが実現しました。育った国も環境も違う2組が集まって音楽を作るという意味でも、今回のコラボはとても面白いものになっていますね。

コムアイ これは今日も通訳をしてくれているヨウコさんが繋いでくれたのがきっかけでした。去年<Les Eurockeennes>に出るときに現地でアテンドしてもらって、そのときにカンパネのライブをどう作るか、どんなことにこだわっているかということを見てくれて。その半年後に「Moodoidと一緒にやったらいいんじゃない?」と連絡をくれたんですよ。

——2人がお互いの音楽や活動に感じる魅力というと?

Moodoid 僕が最初に水曜日のカンパネラを知ったのはYouTubeで観たMVだったんだけど、そのときに自分にすごく近いものを感じたんだ。水曜日のカンパネラの楽曲やMVには彼女たちだけの世界観がはっきりとあって、部分によってエキセントリックなところも、作り込んでいるところもあるけれど、毎回明確な方向性が提示されている。僕自身も、そういう風に音楽やMVを作っていきたいと思っているから、きっと僕らの間には何か共通点があるんじゃないか?と思った。それに、僕はコムアイの声が好きだし、存在感やダンスもすごく好きだしね。だから、今回の企画が実現したときは、本当に夢が叶ったような気持ちだった。これまで「日本人のアーティストとコラボレーションしたい」と考えてはいたけれど、それってすごく大変なことだろうなとも思っていて。でも、今回の作業はすごくスムーズに進んだし、お互いに音楽を通じて饒舌に会話が出来たような気がしたよ。「こんなに上手く行っちゃっていいのかな?!」って。

コムアイ 私もそうでした。普段、男性アーティストに“自分と似てる”と感じることは少ないですけど、パブロは音楽だけじゃなくて、映画や文学にも詳しくて、色んなことに興味がある人で。私も日本の伝統芸能のようなものを大人になるにつれて好きになったり、映画をヒントにしてアルバムを作ったりしてきたので、音楽だけじゃなくて、映像やパフォーマンスも含めて色んな表現のアウトプットを持っていることにすごく共感したんです。私にとっては歌っても作品だし、踊っても作品だし、(写真や映像を)撮られても、何もないところでパフォーマンスしてもそれは「作品」で。パブロもメイクをしたりして自分が表に出ることを堂々とやっていて、そうやって自分の体も表現のひとつにしている男の人って少ないと思うので、忌野清志郎さんやデヴィッド・ボウイのように、裏方としての魅力も表方としての魅力もどっちも追究していくような、その一線を越えていくような感覚がすごく気持ちいいと思いました。

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——そして今回、ライブはもちろんのこと、水曜日のカンパネラの楽曲“マトリョーシカ”と、Moodoidのアルバム『Cité Champagne』にボーナス曲として収録される“Language”で、楽曲でもコラボレーションをすることになりました。“マトリョーシカ”はどんな風に出来ていったんですか?

コムアイ まずは(水曜日のカンパネラのこれまでの楽曲と同様、タイトルを偉人や有名人の名前にするために)パブロに「この曲を聴いて、どんな人が思い浮かぶ?」と聞くところからはじまったんですよ。そうしたら、彼がマトリョーシカの元になった農婦を挙げてくれて。「この曲の何層にもレイヤーが重なっていて、スケールの違う同じものが何個も出て来るような連続性に、マトリョーシカっぽさを感じた」と言ってくれました。

Moodoid 最初にカンパネラから送られてきたトラックを聴いたときに、シンセが波のように何層にもなっていて、自分がそこに巻き込まれていくようなイメージを連想したんだ。しかもその波が、終わりのないサイクルのように感じられた。そこからマトリョーシカを連想したんだ。しかも、僕のその気持ちを汲んでくれてだと思うけど、完成版では曲の最後に音をリバースさせたパートが加わっていて、自分が感じたことが実際に音になったことが本当に嬉しかった。マトリョーシカというのは、中から永遠にモノが出て来る人形なわけで、そのイメージにピッタリだよね。それに、マトリョーシカって、存在自体がポップなものだとも思うんだ。僕らはお互いポップ・カルチャーが好きな人間なわけだから、その雰囲気を何かビジュアル的にも強いイメージが感じられる=ポップなもので代弁したいと思った。つまり、美的な意味でも強いイメージを持っているもの、ということだね。

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——“マトリョーシカ”は日本語/フランス語の歌が混在していて、パブロさんがまさかの日本語でも歌う展開にかなり驚かされました。

コムアイ 私はフランス語では歌ってないんで、ズルいんですけど(笑)。ケンモチ(ヒデフミ)さんがお経の歌詞を書いてくれて、「これをパブロに歌ってもらったら可愛いんじゃないか」という話になったんですよ。外国人が日本語を喋ったときの発音って(その人の母国語によってイントネーションやクセが出るため)すごく面白いから、みんな好きだし、可愛いって思うことが多いじゃないですか。ただ、きっかけはそんなアイディアだったんですけど、パブロは日本が好きなこともあって、「日本語が上手すぎたら心配だな」とも思っていて。

——なるほど、“上手すぎない”ことが大事だったんですね。

コムアイ そうなんです。だから、最初に送ってきてもらったテイクがよかったこともあって、「これでOK。もう上手くならないで!」って、最初のものをそのまま使いました(笑)。結果として、パブロのフランス語らしい発語の仕方が出ていますよね。具体的な作業としては、ヨウコさんが一度アルファベットに直してくれたものを見ながら歌ってもらった形です。ほら、これ!(と言いながら、歌詞をまとめたスクリーンショットを見せてくれる)

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——それは面白いですね。それにしても、日本語で歌うのは難しかったんじゃないですか?

Moodoid そもそも日本に何度か来たときにも、文字も言葉も全然違うから、“日本人とのコミュニケーションって難しいな”と感じていたんだ。だから、最初は自分が日本語で歌うなんて絶対に無理だと思っていたよ。でも、やってみたら……意外とできた(笑)。

——なるほど、できちゃった(笑)。

コムアイ あはははは!

Moodoid 英語やドイツ語には、どうしてもできない発音があったりするんだけど、日本語はそれに比べて上手く出来たんじゃないかと思う。というのも、日本に来て、レストランでJ-POPを聴いていたりすると、意外とフランス語っぽく聴こえる瞬間があったりもして、日本語とフランス語の発音にはもしかしたら共通点があるのかもしれないよ。

コムアイ 私はパブロの英語がフランス語に聞こえる……(笑)。

Moodoid 訛りすぎてるからね(笑)。

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——“マトリョーシカ”が収録される水曜日のカンパネラのEPのタイトルは『ガラパゴス』ですが、そういう作品をリリースする人たちだからこそ、今回のコラボレーションならではのやりがいを感じる部分もあったんじゃないですか?

コムアイ 本当にそうですね。私には自分の中に感じるすごくドメスティックなものに対して諦めと喜びの両方があって、その2つの気持ちの両方が今回の『ガラパゴス』にも入っていると思います。最初、今回のEPには英語の曲も入れようと思っていたんですけど、そういう曲が出来なくて、入れることができなかったんですよ。自分自身が英語で物事を考えているわけではないから、英語で歌詞を考えると歌いづらいなと思ってしまって。もちろん、歌うだけなら英語でも歌えますけど、何かを伝えるために歌詞を書いたとき、英語の歌詞ではやっぱり歌えないという……すごくガラパゴスらしいことになってしまった(笑)。そこにパブロとのコラボレーションがはじまって、逆に日本語で歌ってもらったんですよ。

——今回のコラボレーションは、2人にとってどんな経験になりましたか?

Moodoid 僕にとっては信じられないような経験だったよ。僕はもともと外国語が苦手で、今回僕の作品でコムアイに参加してもらう“Language”という曲も、自分とは違う言語を持っている人とコミュニケーションを取ることの難しさについて歌った曲で……。今回のコラボレーションは、そのことを象徴するような出来事だったと思う。自分と言語が違う人と何かを一緒に作るということ自体がすごく楽しくて、大事な経験だったし、言葉や文化というものが“自分の人生の中でも大事なものなんだな”ということを改めて感じたよ。

コムアイ “Language”のオリジナル版はフランス語と英語で歌ったものだったっけ?

Moodoid うん、もともとは英語圏のシンガーとのコラボなんだ。まぁ、フランスに住んでいる人だから、ちょっとズルをしてるんだけど。

コムアイ そこもガラパゴスだったんだ(笑)。

Moodoid (笑)。でも音楽って、そうやって言葉や文化が異なる人たちを繋ぐことができる、最大のツールだと思う。水曜日のカンパネラとの制作作業で、改めてそう感じたよ。

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——<サマソニ>で2組がコラボする予定のライブは、どんなものになりそうですか?

コムアイ これまで色んな人とデータ上で制作のやりとりをすることはありましたけど、私の場合、ライブでミュージシャンと一緒にステージに立つことが全然ないから、すごく新鮮だし、楽しみですね。リハーサルでマイクが2本並んでいるのを見るのも、本当に新鮮で。「全部をひとりで背負わなくてもいいんだ」という意味では、気持ちも楽だし、甘えすぎないようにしないといけないです(笑)。とにかく、初めてフランス人の友達が出来て、「楽しいなぁ!」という気分です。……バカっぽいコメントになっちゃいましたけど(笑)。

——(笑)。パブロさんはどうですか?

Moodoid 僕はいつも6人編成でライブをしているから、2人でステージに立つのは逆に普段よりも少ないんだ。しかも、日本語で歌わなきゃいけないことを考えると、そこも緊張するし、今までにない経験になるんじゃないかな。でも、当日がすごく楽しみなんだ。僕としては、日本という自分が生まれた国とは言語も文化も違うところで、水曜日のカンパネラの世界観に思い切り飛び込みたいと思っているよ!

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RELEASE INFORMATION

Cité Champagne

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2018.06.27(水)
Moodoid

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ガラパコス

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2018.06.27(水)
水曜日のカンパネラ
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EVENT INFORMATION

SUMMER SONIC 2018

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2018.08.18(土)/08.19(日)
東京:ZOZOマリンスタジアム&幕張メッセ
大阪:舞洲SONIC PARK(舞洲スポーツアイランド)

2018.08.17(金)
幕張メッセ
オフィシャルサイト

Text by Jin Sugiyama
Photo by Saki Yagi