――今作では、前田さんに対して、何か意識して演出された部分などはありますか?
うーん、意識してっていうのはとにかく・・・ズボラ、だらしない感じに関しては、徹底的にやってほしいと思いましたね(笑)。だから、かっこつけないで、食べる時は思い切り食べるとかね。あとタマ子って外面は良いんですよ(笑)。そこの差は出したいなっていうのはすごくあって。
――こんなだらしない子がちゃんと挨拶できるんだと思いました(笑)。
そうなんですよ! そういうキャラなんです(笑)。そんな人が昔から好きなんですよね。ある種わかりやすいじゃないですか。それが大人だったら可愛気ないんですけど、前田さんだったら許されると思うんです。
――なぜ、今回『もらとりあむタマ子』というタイトルにしたのですか?
「就職活動失敗して実家に帰って来た女の子の1年間」というのは、脚本の向井(康介)が初稿をあげたときに決まってたんです。そこで、“もらとりあむタマ子”ってタイトルを付いたんですけど、プロデューサーとかから最初反対されたんですよね。“もらとりあむ”って響きがマイナスイメージだって。僕は平仮名で書いてるし、そんな事ないって思ってて。撮影が終わった後に若い子に聞いたら「逆にモラトリアムってなんでしたっけ?」みたいな子が多くて。で、「そんなマイナスなイメージもないですよ」ってことでこのタイトルに決まりました。
――なるほど。ちなみに監督は“モラトリアム”という言葉に対してどんなイメージをお持ちですか?
モラトリアムはね・・・僕は大学時代がそうでしたね。もう何者でもないですよね。親のすねかじって、仕送りもらいつつバイトして、映画撮ってみたいな感じで(笑)。あと自分は社会人なのかわからないまま来てしまったので、どっから大人になったかいまだにわからないんですよ(笑)。今、37(歳)ですけど、同世代の地元の友達とかが家建てて、子供も2、3人いたりして、自分が置いてかれているなって思ったりしてね。どんどん話が合わなくなるんですよね。そう考えるとやっぱりモラトリアムの期間が長かったんだなと感じます。まだ、そうかもしれないって思う時もあるし・・・。よく嫁にも「あんたは、1人で生きているよね」って言われるんです。自分は1人で生きていると思い込んでいても、結局周りに親がいたりとか、甘える人がいるからできることなんですよね。タマ子も同じような感じで、自分で悶々として根拠のない自信だけで生活していますよね。でも結局みんなに守られて生きているんですよ。そう思うと、まだ自分もそういう感じはすごくしてますね。結局自分はタマ子なのかもしれないですね(笑)。