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昨年11月の<Hostess Club Weekender>、最大限のポピュラリティが求められるフェスという舞台で、まだ発売されていない新作の再現ライヴを披露したミステリー・ジェッツ。その情報は前もって告知されてはいたものの、オーディエンスはどのようなテンションで臨めば良いのかわからず、正直序盤は戸惑っていた節があった。だって、誰かがたまらず「I don’t know!」という野次が飛ばしていたくらいだから。だが、ライヴが進行していくにつれて、ある事実に気付かされることになる。すべての曲が、近年のインディーズ・バンドには期待するべくもなかったアンセミックな輝きを放っていて、メロディはバンド史上もっとも研ぎ澄まされているということに。僕たちは、日本より先に新作披露ライヴを行ったロンドンのファンの次に、「2016年はこれを聴かないと始まらない!」と断言したくなるくらいの大傑作を耳にしているのだ。この日も、最後はサービスで“トゥー・ドアーズ・ダウン”などの人気曲もやってくれたのが、そこで起こった合唱よりも、新作の音にみんなが圧倒されている様子のほうがはるかに強く印象に残った。

その新作『カーヴ・オブ・ジ・アース』、ライヴの後に音源でじっくり聴いてみると、やっぱり素晴らしすぎる。冒頭の“テロメア”のイントロで2本のギターが不穏に絡み合い、不意に落とされるピアノの一音が曲のムードを決定付ける瞬間、僕たちはミステリー・ジェッツの帰還を祝福しないわけにはいかない。その後も畳み掛けるようにミディアム・テンポの名曲が続く。特に“ミッドナイツ・ミラー”、“1985”、“ブラッド・レッド・バルーン”の3連打は、「ああ、自分はこの瞬間に立ち会うために生きてきたんだ」と思えるほどに感動的。ミステリー・ジェッツ、作品ごとに変貌を遂げて、まさか5作目でこんな地点に到達するとは。

今回は新作について、ギターのウィリアム・リースとドラムのカピル・トレヴェディに話を聞いた。新作に対しては言葉を慎重に選んで話している様子から、この作品は現時点で「バンドのすべて」であることが伺える。早速どうぞ!

Interview:Mystery Jets(William Rees[Gt]、Kapil Trevedi[Dr])

“今作は大きな節目”ミステリー・ジェッツ、新作やHCWを語る music151119_mj_2

――まず、<Hostess Club Weekender>でまだリリースされていないアルバムを再現するというコンセプトを思いついたのはなぜですか?

ウィリアム・リース(以下、ウィリアム)  このアルバムは細部まですべて考えぬかれて作られていて、同時に一貫性がある。たとえば、1曲目があるから2曲目があるし、その関係性なしには語れない。だから、アルバム全編をライヴで再現することは理にかなっていると思ったんだ。

――ロンドンの小さいヴェニューでも同じ内容のステージを披露していましたよね?

ウィリアム  そうだね。だからこそ、東京でも同じコンセプトでやるべきだと。観客に新しいアルバム1枚を聴いてもらうことはすごく難しいことだし、そもそも会場まで足を運んでもらえるか不安だったけれど、僕たちはどうしてもこの作品の純粋性を失いたくなかったから。

――今は自分の好きなトラックだけを抜き出してDJ的に音楽を楽しむ人も増えたと思いますが、そういったリスニング環境の変化に対するステートメントもここには含まれていますか?

ウィリアム  それを最初から考えたわけではないんだけど、僕達にとってはアルバムの中にあるどの瞬間も大切なものだし、トラックリストを作るだけで6週間もかけたくらいだから、作品を守る意味でもアルバムを通して聴いてほしいと思っていた。繰り返しになるけど、今作において重要なのは“流れ”なんだ。

――今回のアルバムはこれまでの4枚のどれとも異なるサウンドです。あえて言うなら、前作『Radlands』からの流れは感じさせますが、さらに重厚でスケールの大きなサウンドになりましたよね。僕は、たった1人で壮大な旅に出る時のBGMのように感じました。

ウィリアム  その感想は理解できるよ。アルバムを作るときはどうしても個人的な経験やまわりの状況が影響すると思うんだけど、今回は大きなスケールを出すことを意識したからね。つまり、自分が経験してきたことの細かい部分にフォーカスを当てるのではなく、俯瞰で見た人間の営みをリプレゼントするということ。1曲目の“テロメア”では顕微鏡で細胞を見ているようなミクロな視点からスタートして、そこからどんどん視点が宇宙にむかってあがっていくイメージさ。

カピル・トレヴェディ(以下、カピル)  新しく加入したジャック(・フラナガン)のエネルギーがもたらしたものも大きかったね。あとは、今回はスタジオを自分たちで作ったから、締め切りを気にせず、いくらでも作業できたのも良い影響を及ぼしたと思う。

ウィリアム  今作を作ることはバンドにとって大きな節目だった。これまで10年やってきて、これからの10年で何をやるかを問われている気がしていたから。新作には、「このバンドはまだ団結して音楽を続けているんだ」「音楽を作りたくて作っているんだ」という表明が含まれていると思う。

“今作は大きな節目”ミステリー・ジェッツ、新作やHCWを語る video151208_mj_2

『カーヴ・オブ・ジ・アース』ジャケット

次ページ:「なぜ、いまだにこんなことを続けているんだろう」という自問自答の結果でもある

長畑宏明

長畑宏明

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