――今作はこれまで以上にソフトなアンセムが詰まったアルバムになりました。特に“ミッドナイツ・ミラー”はみんな早く歌詞を覚えて会場で歌いたいのではないかと思います。“1985”のアウトロが描き出す宇宙的な空間の広がりも素晴らしい。2人にとってお気に入りのナンバーは?

カピル  もちろんまだできたてホヤホヤだから全曲に思い入れがあるけれど、強いて挙げるなら“サタナイン”だね。実は2年前このアルバムに着手したときに、最初にこのアルバムの方向性を示してくれたのがこの曲だったんだ。ライヴで演奏している時にもそのフィーリングを思い出すよ。

ウィリアム  僕は“ブラッド・レッド・バルーン”だね。ここで重視したのは、今まで自分たちが聴いてきたものと、今聴いているものをリンクさせて、未来に繋げること。この曲の雰囲気は70年代のプログレを思い起こさせるんだけど、サウンドはエレクトロニックで今っぽいから。

Mystery Jets – Curve of the Earth(Album Sampler)

――ルーツに立ち返ることはあっても、けっしてノスタルジックにはならないと?

カピル  うん……これは「なぜ、いまだにこんなことを続けているんだろう」という自問自答の結果でもある。つまり、バンドで音楽をやることは時にとても辛い作業だから。でも、結局は自分たちが好きな音楽というのがあって、そこに立ち返るタイミングが今だったということさ。

――僕は今作を聴いて、正直これをどのように説明すべきかわからなくなったんです。もちろん、リリックの意図やサウンドの趣向について解説することはできるかもしれない。だた、それよりも強調したいのは、この作品を聴いてコーラスとメロディのパワーを信じたくなった、ということで。

ウィリアム  まさにそれだよ! ちょっとした言葉の響きやピアノの音色、今作の魅力はそういう部分に凝縮されていると思う。説明する必要のないくらいシンプルなことさ。

カピル  僕も同意だよ。歌詞、メロディ、あるいは素晴らしいドラミング(笑)、人によって楽しめるポイントが多様なアルバムであってほしいね。

Mystery Jets – Telomere

――このアルバムのインスピレーションソースに『ホール・アース・カタログ』を用いたことには、個人的に何となくシンパシーを感じました。日本でも編集に携わる者にとってはマスターピースなので。

ウィリアム  『ホール・アース・カタログ』には自由と遊び心があって、いくらでも解釈の幅がある。インターネットの雑誌バージョン、あるいは60年代の検索エンジン。色んな可能性があって、どこからでもコネクトできる。ブレイン(ウィリアムの実父でバンドの元メンバー)は『ホール・アース・カタログ』をリアルタイムで読んでいたんだけど、彼が著者のスチュアートにこの作品のことをメールしたら「今やっていることを続けていきなさい」っていう返信がきて。ささいなことかもしれないけれど、僕はそれである種の確信を得られたんだ。

――かなり長い期間作業をしていたようですが、自分たちで建てたスタジオはどんな環境でしたか?

ウィリアム  『ホール・アース・カタログ』的なDIYの精神に影響された部分もあると思う。北ロンドンにある古い工場の跡地で、床が石畳なんだけど、そこに機材を持ち込んでスタジオにした。僕にとって自作のスタジオを持つメリットは、自分のバンドだけではなく、他のアーティストやバンドを招き入れてプロデュースができるという点なんだ。

――そういう意味で、ミステリー・ジェッツの次の10年はどのようなものになると予想していますか?

ウィリアム  可能なかぎり音楽的に成長していきたいというのはもちろん、自分たちの活動を外へ広げていきたいね。それってすべてミステリー・ジェッツに反映されることだと思うから。

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