––––みんなものを作り出すときはひとりでしょうし。
ああ、そうですね。今、ものづくりの課程としてはたくさんの人が関わってくれるし、「孤独だな」とは、クリエイティヴな面では思わないけど、やっぱり歌うことは全部、孤独ですからね。
––––具体的に孤独について歌っている曲もありますね。
“黄昏れに雨”で「私たちは違う生き物 同じ生き方はひとつもない」って歌っていて。そこに私が拭い切れない根本的なものがあって、それはどんなに分かり合おうとしてもおんなじにはなれないから。でも重なる努力をするってことは生きてく上で必要なコミュニケーションだし、音楽もそうだし、わたしはそれをやり続けたい。重なれなくてもいいから、重なりたいって思い続けること。でも重なれないっていう切なさに、笑顔で涙が出る感じなんですよね。
––––そういうことを具体的に歌詞にして歌うことは孤独ですか?
うーん……。そうしてもそうしなくても孤独なんだけど、いざ歌詞を書くときにいちばんこう、思い描いてるものはいつも孤独なんでしょうね。わたし、歌詞が基本的に暗いって言われるんですけど(笑)、自分でも読みなおして「たしかに」と思う。
––––暗いっていうか、突き詰めるとそういうことかな、みたいな。
うん。そんなに精神状態が落ちてなくても、やっぱりなんか、そこに美しさも感じてるのかもしれない。その孤独な状態っていうのが人間のいちばん軸なんだよ、って気がしてて。
––––特に今回、「うまい!」っていうより「新津由衣って人が確かにここにいるな」っていう歌が多いと思いますよ。
嬉しい。歌も今回は挑戦したところがあって。自分の声はきらいなんですよ、基本的には。すごい細いし。がんばっちゃうとキーンとするし。もっと野太いがさっとした声だったらどんなにかっこいいだろうと思うんだけど(笑)、無理だから。いつも、デモの歌は自分でも「いいなぁ」と思ってて、本番にしていいのか悩むくらいすっごい力を抜いて、ボソボソ歌ったテイクをOKにしてる曲もありますね。
––––アルバムタイトルの「MOA」というテーマについて聞かせてください。
絶滅した鳥のことなんですね。恐鳥っていう。でも、もしその鳥が永遠の命を持って絶滅してなかったとしたらどうなるのかな? っていう想像がこの作品のテーマで、想像してみたら幸せじゃなかったんですね。
Neat’s“MOA”
––––周りは変わっていくから?
うん。周りは変わっていって、自然に任せて土に還っていくのに自分は生き続けるって、全然幸せじゃないと思って。今まで「永遠っていいなぁ」って憧れがあったけど、それがすべてじゃないなと。永遠じゃない場所が輝くと思うし、今回のアルバムはまさにそういう自分の場所を見つけられたような感じがしますね。
––––アルバムタイトルを決めたのはいつですか?
“MOA”って曲ができたときですね。“よるのいろ”と“新世界”が先にできてて、次に“海”までできて、その次に“MOA”ができたんですけど、すごい喜びのメロディだなと思って。でもすごく切なくて泣きそうになる歌でもあって。でも喜びと悲しみが合わさってるって、わたしの中で頂点の感情だから、「これは表題曲になりそうだな」と思ったんです。
–––– “MOA”って曲ができたことが転機だったのかも。
“MOA”ができてほんと救われました。「もうダメだ」と思ってて。わたしがそれこそ「やめたい」って言ったら終わっちゃうから。やめたいと思っちゃったんですよ。“MOA”ができる前に。そこでもうどうしよう? と思って。何が自分にとってかっこいいのかわかんないし、作ることは大好きだから作り続けるけど、でもそれを仕事としてやっていくのはむずかしいとか、ぐっちゃぐちゃになって考えて。で、絵本の会社に就職しようかなと思って(笑)。
––––本気で(笑)?
と、思ったんだけど、“MOA”ができたときに、すべてスポーン! と抜けて。「これが作りたい」っていうのがあふれんばかりに出てきて、迷いが消え去りました。