––––ものを作る人にとって決して当たり前じゃないと思うんですけど、アルバムを作るために10何曲必要なんだとか、そういうのはNeat’sさんはないんですね。

ないですね。今回もたくさん作って、今までだったら「できたー!」って思ったものを全部外に出してたんです。人に聴かせるとか。だけど聴かせずに何日も自分の中で寝かせて、バスに乗るときイヤホンで他人の曲として聴いて「あ、すごいいい曲だな」と思う子たちだけを昇格させて、あとは全部ダストボックス。

––––思いきって捨てちゃう?

うん(笑)。「全然よくない」、「なんにもこない」って(笑)。捨てちゃう。今までだったらそれをどうにか肉づけしてかっこよく見せる方法とかも考えたりしたけど、反射神経っていうんですかね。「うわ、いい!」とか「ワクワク」ってならないものは残念だけど、バイバイして集めた作品だから、今回愛しくて。

––––曲の作り方もさらに自由になっているみたいですね。資料によると“wonderland”はツアーに向かう車の中で作ったとか?

iPadのGaragebandでデモを作りました。いわゆるPCのMacよりできることがすんごい少ないんですよ。でもギターの指板のマークとかをなぞるとジャラララーンって鳴ったりする、それを車内でイヤホンで鳴らしながらデモ作って、アレンジはLogicでやり直して。ピチカートは(本物の)弦で入れてて、ストリングス全体にはメロトロンとかを重ねてます。

––––いちばんスケールとか奥行きがある仕上がりなので意外です。

今回、ストリングスに生で入ってもらったんで、割と壮大に聴こえてほしい曲では弾いてもらっているんですけど、“wonderland”はメロディが壮大なだけに、逆を行ってちょっとミニマムな”部屋のオーケストラ”みたいにしたかったから、ストリングス隊はあえてナマに差し替えないで、メロトロンとシタールでちょっと寂れた感じにしてます。

––––そのさじ加減が仕上がりに出ていると思います。

メロディはポップでやりたいし、それに普通のアレンジをしちゃうとなんかよくある感じになってもやだなっていうのもあって。

––––あと、唇ビートの“クライマーズ”も面白い。

ああ〜、面白かったですね(笑)。プッ、とかパッとか録って。

––––ヒューマンビートボックスの「ネタ」ってことですね(笑)。

そうです(笑)。連続では残念ながら録れなかったから。

––––音の素材って限りなくあるってことですね。

そうですね。それはもう囚われたくないですね。

––––ビートって前面に出過ぎると邪魔なときもあるし。

そう。“黄昏れに雨”は最初のミックスのときに割とドラムがしっかりある音像だったんですけど、なんか違うと思って、各10デシベルずつ下げてもらったら、すごく良かったんですよ。ドラムはしっかりしなきゃいけないみたいな概念を全部捨て去って。「10デシずつ? 20だよ?」って言われたんですけど、下げたら一気に風通しがふわ〜ってなって、曲全体が浮き上がる感じがあって。理論とかわからなくてもいいんだって、その時にも確信したし。

––––このアルバムの面白いところは、堂々としてるしメロディがちゃんと入ってくるんですけど、何回も聴いてるとトラックが面白いところで。

アレンジをやっているお友達とかも聴いてくれて、音の選び方が面白いって言ってくれて。その子はプロとして編曲をやってる女の子なんですけど、「普通はこれを選ばないよ」って言われて、わたし、普通はわからないけど、その子に言われてうれしかった。

––––それは嬉しいですね。

それに無限大にお金があるとか、人手があるとかいうプロジェクトじゃないからこそ、必要なものはまず何か? 作りたいものはまず何か? が定まってないと進めなくて。それを助けてくれるみんなもいるけど、わたしがいちばんにそれを提案してわかってなきゃいけないから、みんなより先に歩いて、「こういうことが必要だから、じゃああの人に頼もう」とか「この布を買ってほしい」とか。

––––(笑)。そうですね。トータルの責任者ですからね。そういうNeat’sさんが今、気になってることを教えてほしいんですけど。

やっぱティンパニですかね。サーカスっぽいの好きだし、オーケストラも好きだし。王様の扉が開くみたいな。チャッチャラー、ドドドドン! みたいな。

––––ファンファーレ的な?

うん。ああいうのにドキドキするんです。何かが始まる! みたいな。

––––それでティンパニが好きなんですね。

そう。ライブでティンパニを使いたいんですけど、手に入らなかったらフロアタムで代用しようと思ってて。独奏するときに鍵盤の横にティンパニまたはフロアタム、ウィンドチャイムとか小道具並べて、やりたいんですけど、こないだFLORAっていうイスラエルの宅録女子のライブ見に行ったら、その鍵盤の横にフロアタムってセットが組まれてたんですよ。音聴いても「やっぱこれいいわ」と思って。で、帰りに機材見て、写メって。割とやりたいこと似てるなぁと思いつつ、Facebookに上げたら、「最近こういう鍵盤の横にフロアタムとか置くの流行ってますよね」って書き込みがあったんですよ。で、「そういうのが流行ってんだ? どこで、誰が流行らしてんだろ?」と思ってショックだったの。わたしが先にやりたかった。

––––今までもほぼそれに近いことやってるじゃないですか(笑)? 他にも気になってるアーティストやバンドはいますか?

このアルバムに多大に影響を与えてくれたのはサッド・デイ・フォー・パペッツっていうバンドとチーム・ミーですね。チーム・ミーはずっと好きなんですけど、やっぱ共通してるのは、そのファンファーレ感とか何が起こるんだろう? と思わせてくれるワクワク感と、ガッチャガッチャしてるのにすごくポップで突き抜けてる感じだと思って。縮こまってないというか。インディーロックでもちまちまやってるんじゃなくてなんかすごい大きな武道館とかで音鳴らしてるぜ! みたいな。

Team Me“Dear SIster”

Sad day for puppets“Cold hand”

––––心意気がね(笑)?

そうそう(笑)。そこ目指してる感じがいいですね。

––––最初から自分たちのサイズを決めない人たちというか。

うん。スカイ・フェレイラも見た印象はすごいなんかアングラな感じで、音楽もそうかな? と思って聴いたら「武道館目指してます」みたいな(笑)。

––––(笑)。言わないけど。

(笑)。突き抜けてる。80年代、90年代のメロディアスな部分もあるし、その精神は今のわたしと重なってて、興味深かったですね。

––––音楽と関係なしにハマってしまってるものはありますか?

白湯。お湯です。朝起きたときに白湯飲むとすごくいいですね。

––––他に気になってることとかありますか?

なんだろうな……。プラ板を毎晩作ってて。ツアーでガチャガチャを置こうとしてるんですよ。最近、アーティストのツアーグッズで良く売ってるじゃないですか。でもみんなと同じガチャガチャにしてもつまんないなと思って、1点1点手作りのものを入れて、オールレア・グッズがあたるガチャガチャになる予定です。

––––他に気になることは? 映画などでも……。

『グランド・ブダペスト・ホテル』(14年)。大好きなんですよ、ウェス・アンダーソン。あ、あと日本のバンドだと最近、ROTH BART BARONがよかったです。

––––すごくいいですよね。ところで今回もCDはNeat’sさんが発送するんですか?

そうです。注文待ってます。注文入るとiPhoneが鳴るみたいな(笑)。

(interview & text by Yuka Ishizumi)

Event Information

Neatʼ’s Dream Band Tour 「MOA」
2014.08.03(日)@仙台PARK SQUARE
OPEN 17:30/START 18:00

2014.08.09(⼟)@名古屋APOLLO BASE
OPEN 17:30/START 18:00

2014.08.10(⽇)@⼤阪Pangea
OPEN 17:00/START 17:30

2014.08.30(土)@新代田FEVER
OPEN 17:00/START 17:30

Release Information

Now on sale!
Artist:Neat’s
Title:MOA
musica allegra
¥3,000(tax incl.)