それぞれ別々にミュージシャンとして活動していたJuliaYumaが出会い結成されたということ以外にはインターネット上にも情報がなく、その正体不明の佇まいや、民族調も取り入れた匿名性の強いヴィジュアル・イメージ、そして何より北欧シーンなどを連想させる高い音楽性の楽曲で注目を集めつつある音楽グループ「ODEO」が、デビュー・シングル“White Crow”の配信をスタートさせた。

ODEO – White Crow (MV)

2人がアイスランドに赴き、ムームのグンナル・オルン・ティーネスをエンジニアに迎えて録音されたこの楽曲は、いわば今後広がりゆくODEOのスタート地点と言えるもの。グループはメンバーなどを増やしながら、アート・プロジェクトとしての側面も打ち出していくという。メンバーのJuliaとYumaに、グループの成り立ちや“White Crow”の制作秘話、そしてこのグループが目指すアートの形について聞いた。

Interview:ODEO

【インタビュー】謎の音楽グループODEO。北欧シーンを感じる音楽性、関根光才監督MV、匿名性の裏側に迫る odeo-pickup2-700x1049

——JuliaさんとYumaさんは、それぞれが別々に活動していた昨年4月にライブの現場で出会ったそうですね。そのときに意気投合したのがODEOのはじまりだったんですか?

Julia まだ、そのタイミングでは意気投合という感じではなかったです。

Yuma ただ、音楽の話は合いましたし、その3日後にJuliaがアイスランドに行くという話を聞いて。僕の友達にもアイスランドに縁がある人が多いので、「どんなところなのか聞いてみたいな」と思ったんです。

Julia お互い共通の友人もいたので、そのライブを機に話すようになって、「音楽を一緒にやりたいね」という話もしていました。

——それは、お互いの音楽観に共通するものを感じたからですか?

Yuma 抽象的な話になってしまうんですけど、まずはフィーリングが合ったというか。

Julia 「これいいよ」と好きな音楽をお互いに挙げて「ああ、すごくいいね」と言い合ったり、自分の好きな音楽を交換したりする中で、すごく気が合う部分があったんです。

Yuma それに、コミュニケーションの取り方も似ていたんです。Juliaは、僕が知っている人の中でも音楽に対してかなりオープンな人間で、メッセージでやりとりをする中で、色々なことを吸収しようとする姿勢がある人だったので。

——どんな音楽を交換したんですか?

Julia たとえば、私はアイスランドのサマリスの作品を送ったりしましたね。Yumaにはシンガー・ソングライターのモアナを教えてもらったりとか。

Yuma そうそう。 Christian Löfflerとコラボレーションをして作品を出している人なんです。

Julia 私はもともとシンガー・ソングライターとしてリズムがあまり強くない音楽をずっとやってきたので、ダンス・ミュージックとコラボレーションしたらどんなものが生まれるか、ということにも興味が湧きました。

Samaris – R4vin

——お互いが違う要素も持っていたからこそ、可能性を感じた部分があったんですね。

Yuma そうですね。それに、世界的に見ればテクノのようなトラックに北欧的なヴォーカルを乗せることは結構流行っていますが、国内でそういうことをやっている人はなかなかいないので、僕もそれができる人を探していたんです。

——もともと2人が音楽をはじめるきっかけになったアーティストというと?

Julia 私は15歳のときにバンドをはじめて、そのときはR&Bが好きだったので、アリーヤのようなアーティストに影響を受けていました。もう、今とは全然違うスタイルで。その後、クラブ・ミュージックやダブで歌うようになって、自分で音楽をやろうと思ったときに、今のスタイルに落ち着いた形です。色々やってみて、最終的に今の形を見つけた感じでした。

Yuma 僕も似たような音楽を通っているんですが、一番のルーツはクラシックです。そこからジャズに入って、一時はジャズ・ピアニストとして活動して。それからエレクトロや映画音楽に入って、テクノやダンス・ミュージックに出会いました。たとえば、ポストクラシカルのような音楽って、異なる分野をある程度知っていないと成立しないですよね。僕自身も色々な音楽を通ってきていて、Juliaに共通するものを感じたのかもしれないです。

Aaliyah – Rock The Boat

——音楽を好きになるときには、周りのカルチャーにも一緒に惹かれていくことが多いと思います。今の音楽性やカルチャーに感じる魅力はどんなものだと思いますか?

Yuma 僕の場合、それをクラシック以外のものから感じたんだと思いますね。日本のクラシック・カルチャーは習い事文化の側面が強くて、音楽やカルチャーを継承していくという雰囲気ではないんです。その音楽が発展しているような雰囲気を感じられないというか。

——正解が用意されていて、そこに合わせる作業になることが多い、と。

Yuma そうです。でも、今年アイスランドに行かせていただいて、向こうの音楽コミュニティの中に入ってみると、自分たちが今何を思っていて、どんなことを感じているのか、ということをたくさん話し合う雰囲気があったというか。僕がジャズやダンス・ミュージックのカルチャーからもらったものは、そこに「入ってもいいよ」という懐の深さなんだと思います。そのサークルの作り方は、僕らがODEOでやりたいこととも似ているんです。

Julia 私の場合、色々な音楽を聴いて、自分は何を好きなのかを探求していくことで、逆にファッションや考え方も自由になったような気がしています。「いい」と思うものを信じることを重ねて、その結果、自分の中のチャンネルが増えた。すごく広がった感じがします。