——他のインタビューで皆さん共通してキリンジが好きっていうのを読んで。
fanamo’ キリンジは結構、ここの二人(fanamo’とTondenhey)がシンパシーを感じてて。歳は9個離れてるんですけど、Tondenheyはお父さんがキリンジのアルバムを全部持っててその影響で聴いてて、僕はもともと好きで。Tondenheyが車で“エイリアンズ”かけながら、僕が働いてるスタジオにやってきた時、僕がたまたま外にいて、「“エイリアンズ”じゃん」みたいな感じで話しかけて。
Tondenhey そこで仲良くなった。
Fanamo’ 多摩のスタジオでキリンジの話できる人なんてそうそういないんですよね。
Tondenhey コード進行とか結構参考にしてるというか、普通に聴いて「いいな」と思ったところをちょっと真似したりすることあるんですけど。ちょっとジャズ的だし。
——オドフットでジャズ的なものを求心的にやるわけじゃないですもんね。
三宅 あくまでポップスとしてどう落とし込むかが最初から念頭にあるんだと思う。僕は現代的なAORとしてオドフットを聴いてるところがあって。で、現代的なAORにラップがあるのは必然でしょ、ぐらいの感じがオドフットの魅力としてあるな、と。
そこのAORを構築するのにはもちろんジャズもあるし、いろんなブラックミュージックもある。「アダルト・オリエンテッド・ロック」ですから、ロックの要素もあるし、それを担保してるのが実はSunBalkanのベースだったりとか。なんか全部あるのが……好きなんですよねぇ。
——(笑)。でも「好きなんですよねぇ」って人がやってるのっていいじゃないですか? 例えばbayonの北澤さんとか。(※never young beach、Yogee New Waves、D.A.N.らが所属するbayon PRODUCTIONの北澤学氏)
三宅 間違いないっす。僕、ちょうど一昨日ぐらいにbayonの北澤さんとSUMMIT(PUNPEE、SIMI LABらが所属するレーベル)の増田さんとお酒飲んでたんですけど、もうほんとにそういう会話しかしないっていうか、所属してるアーティストがほんと好き、音楽が好きっていう、そこの本質は揺らいでないから。
角張(渉)さんとかもそうだと思うんですよね。あと、僕の友人でペトロールズ所属のレーベル・ENNDISCの出口氏もそうですし。それはすごく勇気付けられるし、ロールモデルにもなってるなっていうのがあって、ありがたいです。
——そしてあらゆる現代のポップネスが凝縮してる印象で言えば、オドフットはヴェイパーウェイヴなんじゃないかとも思うんです。
Pecori そうすね。
Tonenhey さすが。
三宅 ヴェイパーウェイブってワード出してくれたの初めてですね。
Tondenhey まじで今回の“NDW”ってヴェイパーウェイブの名作って言いたいぐらい(笑)。
——(笑)。もはや聴かないとどんな音楽なのかわからない会話になってきましたが。
三宅 でも不思議なんですけどね。別に地元が一緒なわけでもないし、fanamo’が働いてた聖蹟桜ヶ丘のスタジオで出会って、たまたま、ね? 感覚共有できるっていうのは、最初にスタジオ入った時から感じたものはあったわけでしょ?
Tondenhey 会った時「どんな音楽聴くの?」とかっていう初対面でする会話をしたら、ここ最近でいちばん趣味合うなぐらいの感じから。
fanamo’ 飲みに行ったりとか、フェスだけ一緒に行ったりとかっていう関係を経つつ。
SunBalkan 俺はそんなにジャズとか日本語ヒップホップ知らないんですけど、それを教えあうんです。みんなちゃんと聴いてくれるし俺も聴くし。自分の世界以外のものを知らない人っていっぱいいるけど、そこはちゃんと吸収してくれる。
——誰しも「ここ!」ってツボがあるはずなんですよ。
三宅 今まで出会ったミュージシャンからいろんな意見を頂戴するんです、オドフットにはどうなってほしいとか。なんかその人の音楽を聴く上で何を大事にしてるかっていうのを照らすような、リトマス紙みたいな感じになれるのは面白いなと。いろんな意見があってしかるべきだし。まだね、エゴサしても批判みたいなのがないのが不思議っていうか。
Tondenhey 批判待ちみたいなところは……。なんかツッコめないように作ってるというか。「こっちの方が音楽通」みたいなのはダサいこと知ってるじゃん? 「お前言ってるのもわかるけど、それもわかって作ってるから」みたいな(笑)。言われたら「それ全部逆」って言えるように作ってる。
——まぁラップをメインでやってる人はオドフットが知名度上げてきたら「何これ?」って言うかもしれませんけど。
Tondenhey や、でも「フリースタイルで返せ」みたいなの練習してるよね。
——みんなで練習してるのもいいですね。
Tondenhey かわいいでしょ?(笑)
——その感覚には勝てないですよ。この4人の絶妙にバラバラなキャラと仲の良さは。
三宅 ちなみにPecoriは役者も本気でやりたいって言ってるんで、何かありましたらよろしくお願いします。みんなそれぞれでSunBalkanは去年、Ryohuのバンドにすごいツワモノメンバーたちと参加していい経験できたと思うし。
SunBalkan いやそれです、今回のアルバムは個人的には。もうずっとそのメンバーが「お前そんなんでいいの?」って言ってるのを頭の中で聞いて、泣きながら叫びながら録った9曲。
——オドフット以外のところからの刺激とか自問自答する部分もあると。
SunBalkan はい。オドフットに入ったからこそ出会った人たちからの影響みたいなものはすごい大きいですね。
——やっぱりすごいスピード感ですね。この夏以降も楽しみにしてます!