それではここから、少しばかりAmPmの当事者にも話を聞いてみよう。AmPmの顔役を務める仮面の2人は、どのような姿勢で音楽を作り、世界に打って出ていったのだろうか?
――デビュー当時、Spotifyを主利用したグローバル展開というものには、どの程度意識的だったのでしょうか?
左 最初は本当に予想すらしていなかったですね。AmPmの楽曲は2015年から温めていて、PLAY TODAYで然るべきプロモーションを継続していくことでブランディングしていかなくてはいけないですから。リリースしてからやれる限りのプロモーションはしたつもりです。それが結果に繋がったのは、たまたま運が良かったんだと思います。
右 元々AmPmというのは、午前/午後という意味で付けた名前なんです。人生の中で面白いことがあって、そこに寄り添う音楽をどう作っていくか。それが一つの大きなテーマとしてあって、その音楽が偶然各国のプレイリストに入って、上手くハマっただけですね。
――デビュー以降、AmPmはほぼ毎月新曲を発表しています。このリリース・プランはどの程度戦略的に行っているのですか?
左 まずは出さないと認知すらされないですから、リリースする楽曲の目標数というのは重要視していましたね。特定の音楽ジャンルに固執し過ぎると、僕たちにとってもマーケットにとっても合っていない方向性に陥ってしまう可能性があったので、幾ばくかの幅を持ちながら、自分達の聴きたい楽曲を選んで作っていきました。かつ、その時々に出会ったアーティストと相性の良い楽曲という点が重要ですね。
右 売れた売れないというところとは関係なく、2017年はほぼ予定通りに進んでいきました。
――音楽性という点で、楽曲制作はどのような観点から進めているのでしょうか?
右 僕たちが今良いと思っているもの、聴きたい音楽を純粋に反映させています。戦略的に音楽を作るというよりも、自分達の感度に合ったものを作ることの方が大事ですね。
左 特に2018年はそれを意識しています。昨年は基礎である認知の部分がないとどうにもならないので、タイミングなどの戦略は意識していましたけど、今年は曲作りに関しては自由度を上げて好きなように作り、プロモーションはプロモーションとして強固にしていこうと思っています。
――AmPmの楽曲は、企画書を元にチームで作っているそうですね。
左 企画書といってもそんなに仰々しいものではなくて、簡単なラフというかイメージ案みたいなものですね。ざっくりとした物語調の文章があって、あとは写真などのビジュアルイメージを添付したようなものです。具体的な音楽性は2・3行くらいで、あとは雰囲気を伝えてチームで作っています。
――2017年の8月には、アジア初開催となった<Spotify On Stage>に招かれ、インドネシアで初めてライヴを披露しました。今年3月にはアメリカのマイアミで開催される<Ultra Music Festival 2018>に出演し、4月に日本での初ライヴも予定するなど、ライヴ活動も少しずつ本格化していますね。
左 インドネシアでのライヴは急に舞い込んだ話だったのですが、それ以降、より海外を意識しなくてはいけないと思い始めて、今も世界中のブッキング・エージェンシーやライヴ制作の会社とコミュニケーションを続けている状態ではあります。ただ、現状のSpotifyにおける私たちの数字はまだ世界で見れば大きなものではないので、実績としてはインドネシアのライヴだけでは次に繋がらないのが現状です。常に壁にぶつかり、その中で課題が見えてきた半年でした。
右 おかげさまで、世界でヒットしたと言って頂けているんですが、実際に世界的に見ればそれほどでもないんですよね。今は数字が目に見えてしまう状況にありますから、どうしてもそこには固執せざるを得ない。数字を作るためには、楽曲全体のクオリティはもちろんのこと、プロモーションやマーケティングを含めた総合力を今よりもアップデートさせて、常に挑戦していかなければいけないという危機感は持っています。
――AmPmは最終的にメディアや箱としての役割を担いたいとよく話されています。それはどういった意味なのでしょうか?
左 まずはAmPmの楽曲に参加してくれているヴォーカリストが、AmPmに参加することで個人の活動にもプラスになればいいと思っています。AmPmがもっと数字を取れるようになれば、参加してくれたアーティストの個人活動にも良いフィードバックが出来るようになるでしょうから。また、楽曲制作についてもチームでやっているので、作詞作曲してくれた人たちがAmPmに参加したことによって仕事が増えるようなきっかけ作りになればいいですね。
右 4月に行う日本でのライヴでは、フィーチャリング・ゲストとしてNao Kawamuraにもステージに上がってもらう予定なんですが、そこでAmPmの楽曲だけじゃなく彼女の曲も歌ってもらおうと考えています。僕たちのステージを通して、ヴォーカリスト自身の新曲のプロモーションもやってもらいたいんですね。それはメディア=AmPmの活動の一環だと思っています。
――AmPmを通して、参加しているチームやアーティストの個々に興味を広げてもらいたいということですね。
右 そういった意味では、今はこういった仮面を象徴として活動していますが、中身は何でもいいんです。我々はブレーンとして存在してはいますが、AmPmという架空の第三者的プロジェクトとして広げられるようになればいいですね。その流れが上手く軌道に乗れば、最終的にはAmPmとして僕たちがその場にいなくてもいいと思うんです。覆面だからこそ、参加してくれているアーティスト全員に貢献できる。例えばAmPmのお面の数が増えていったりだとか、複数の現場に同時多発的に現れたりとか、今まで誰もやっていないようなことが起こせるようになれば面白いと思うんですよね。