もし紗倉まなが『カップ焼きそばの作り方を書いたら』
では最後に……僕が書いた紗倉まなさん文体のカップ焼きそばの作り方を読んで一言感想をいただきたいのですが。
紗倉「マジですか! 私、本も読んでいたので光栄です! 楽しみです……!」
ホントですか、それは恐縮です。文体模写は以下になります。
「そろそろお湯が沸いてもええねんけどなあ」
一平は自分の名前のついた一平ちゃんソース焼きそばに、待ちきれずお湯を注いだ。
――かやくとソース、取り出して、ない。
彩乃はなめるように日本酒を飲みながら、そう囁いた。
一平とはスーパーのインスタント食品売場で知り合った。私の大好物のカップ焼きそばの一平ちゃんと同じ名前だったので、即打ち解けた。
彩乃はソースとかやくを取り出し、かやくを丁寧にふりかけた。
「おお、ありがとう、あとでおカネ払うから」
――3分待った。湯切りをしなければ。
なぜか下腹部に力が入る。子宮に力がはいらなければ、湯切りは失敗する。
そしてはじめから用意されていたようなポンというシンクの弾ける音。
一平とはわかりあえ、ない。思わず本音が出た。
紗倉「似てる! ほんとすごいです。超最高です。何も言うことないです。おもしろすぎてどうしよう。」
紗倉まな「句読点がへんだとも言われます。」
実際、紗倉さんが『最低。』を書かれたときに、影響された作家さんとかいらっしゃいますか?
紗倉「影響された作家さんは、桜庭一樹さんという方です。あの方も特徴的な文体で、それをずっと読んでたので、けっこう影響されてるなって思ってたんです。私の本でいうと、『おざなりに』という言葉を無意識のうちにたくさん使っていたり、心理描写よりも情景描写を書く癖がすごくあって、だから風景をよく書きますねとか言われたり。ほかは、句読点がへんだとも言われます。『めんどくさ、い』とか。」
僕は、『もしそば』で、計220人の作家の文体を見てきたが、誰にもないオリジナルの文体を紗倉さんの文章には感じた。だいたい気を抜くと、村上春樹の文体になるものだ。それくらい、村上春樹文体の感染力は強い。
紗倉「僕はそこにいたかもしれないし、そこにいなかったかもしれない。それは誰にもわからないけど、きっと○○は知ってるみたいな……。」
ジョニーウォーカーかもしれないし、カーネルサンダーズかもしれないみたいな(笑)、そんな感じなんすよ。
紗倉「どっちなんだ…と思いながらも、結局、村上さんのワールドに入り込んじゃうんですよね……。」
最後、国民的作家へのツッコミになっちゃいましたが、えーっと、何の話してたんだっけ、「BONX」よろしくお願いします!
もし紗倉まなが『カップ焼きそばを作ったら』
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INFORMATION
『凹凸』
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『最低。』
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text & interview by 神田桂一
photo by 横山マサト