初出演の<FUJI ROCK FESTIVAL>、ホワイトステージ。SANABAGUN.が今年あの苗場の舞台に立つことは、彼らのことを深く知る人にとっては「そりゃそうだろ!」と思えるものだったはず。そしてその期待にSANABAGUN.は、最高のパフォーマンスで応えてくれた。

“平成生まれのHIPHOPチーム”と称して地道にストリートから這い上がってきた彼らだが、令和に入ってからもその勢いは増している。6月からはこれまでの軌跡を辿ると同時に今の8人の凄みを提示するマンスリー・ライヴ<2013 – 2018>を敢行し、7月末には前述の<フジロック>に出演。これまでのファンとこれからのファン、そのどちらにも今のサナバを見せつけた上で、10月23日に1年半ぶりとなる4枚目のアルバム『BALLADS』をリリースした。

本作を聴くことで感じ取れる彼らの中にある“変化“を探るため、メンバーである高岩遼、髙橋紘一、岩間俊樹、谷本大河の4人に話を聞いた。このインタビューで、彼らの求めた変化が単なる小手先ではないことを感じ取ってもらえるだろう。そして何より、SANABAGUN.がさらなる高みを目指していることに胸を躍らせるはずだ。

Interview:SANABAGUN.(高岩遼、髙橋紘一、岩間俊樹、谷本大河)

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奇特なSANABAGUN.ファンに一足早く披露したプレビュー・ライブ

──昨日(10月24日)、<TOUR BALLADS>に向けたプレビュー・ライブを観ました。アルバムの話に入る前にその話についてホカホカの状態で心境を知りたいなと。

谷本大河(以下、谷本) 公開ゲネなのでいろいろ試しつつなんですが、良いところもたくさんありました。昨日のライブってSANABAGUN.(以下、サナバ)の1番コアなお客さんが観に来てくれている中で、予想外に「この曲ってこんな盛り上がるんだな」って認識できたり、逆に「この曲のこういう演出はわかりづらいんだな」とかも見えたりした。そういうのも含めて良いライブはできたと思います。

岩間俊樹(以下、岩間) 個人的にライブの完成度はまだ6割程度だなと感じました。セットリストもこれから変わってくるだろうし、本番に向けてもっと詰めていきたいです。

髙橋紘一(以下、髙橋) 昨日はあくまでリハの延長みたいな感じです。普段のライブはあんなふざけないじゃないですか? でもリハのときはあんな感じなんですよね。でもそれを見て楽しんでくれて、お金を払ってくれるお客さんは素晴らしいなと思いました。公開ゲネは1年ぶりなので「あーこれこれ」って思い出しましたね。前回もああいう感じだったので。

高岩遼(以下、高岩) 今までは“黄金セトリ”みたいなのがあって、わりとパワーで押してお客さんを喜ばせるみたいなライブ展開でした。でも『BALLADS』に関しては「あれ? これ意外とお客さん盛り上がるな」みたいな曲もあって、どちらかというと聴かせるエモい曲も多い。だから「これはこういう曲だよ」みたいな感じで、偉そうな言い方ですけどお客さんを俺ら色に染めていくというか。ただお客さんをちゃんと盛り上げるには持っていき方や、曲間の秒数とかそういう細かい部分をもう1回考えて、本番のツアーに臨めたらいいなと思います。

──『BALLADS』がリリースされた翌日のライブでしたが、すでに歌詞を覚えてサビとかも一緒に歌っているお客さんがいて。その光景にファンの“サナバ愛”の強さを感じました。

髙橋 プレビュー・ライブに来てくれるのは奇特な人ですよね。サナバのことをホントに好きでいてくれる人たちで、だからこそ何をやっても受け止めてくれる安心感はあります。

──個人的に岩間さんの急成長を感じていて、どんどん……面白くなってませんか?

岩間 そっち!? 振る舞いとか言われたら「それは見る目が変わったんです、僕は変わってません」って言おうとしてたんですけど。まあ面白さは上がってるかもしれません。……何が1番面白かったですか?

──いろいろありましたけど、もう立ってるだけで面白く見えてきちゃうんですよね。

一同 アハハハハ!

髙橋 芸人として最高の褒め言葉じゃん。

岩間 芸人じゃねーよ。

高岩 何もしなくても笑えるっていう。

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岩間俊樹

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髙橋紘一

SANABAGUN.の“五角形”で欠けている部分を補う外部プロデューサー

──アルバムの話をしましょう。まずタイトルの『BALLADS』、これは誰が決めたんですか?

高岩 みんなで話し合って決めたんですけど、意味は無いんですよね。意味は無いけどそれに意味があるというか。すげーアーティストっぽい発言を今しちゃってますけど。超カッコいい感じなんです。今回は作曲した人がそれぞれ最後まで曲の面倒を見るっていうやり方にしたんですよね。それで蓋を開けてみると、アルバムがオムニバスのようになっていて。これまで出したアルバムのタイトルはわかりやすい意味があったんですけど、今回は作品のタイトルに引っ張られない。引っ張られたとしても音源聴いてみたら「BALLADSってどういうこと?」ってなるというか。あまり意味の無い、無機質なタイトルを付けたいっていう気持ちがみんなの中にあったんです。

──アートワークもこれまでのSANABAGUN.とは違うテイストに仕上がっていますね。

高岩 そうですね、そこはじゃあ俺やるよってことでイラスト含めて担当したんですけど。フロッピーっぽくしたかったですね。輸入盤というか、意味が無い感じの。

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『BALLADS』

──そして今回は、外部のプロデューサーを初めて迎えて制作したというのも大きなトピックですね。

高岩 僕は最初、プロデューサーは一貫して誰か1人にお願いした方がいいと思ってたんですよ。アイデアを含めて、誰かに全部託した方が良いと。ただその案は無くなり……ね?

髙橋 今回は曲を持ってきた人が、ハマるなと思うプロデューサーにそれぞれ投げていった。大河だったら “Stay Strong”を(DJ)UPPERCUTさん、亮三だったら(西寺)郷太さんという感じで。それこそUPPERCUTさんも郷太さんも会ったことは無かったんですが。

SANABAGUN. – Stay Strong(Short Ver.)

谷本 結局、俺らはそれぞれが曲を持ってくるとジャンルもバラバラだし、1人のプロデューサーに頼むのは現実的では無かったんですね。だったらポイントポイントでプロデューサーにお願いした方がいいじゃないかっていうことになりました。

岩間 曲を持ち寄ってブラッシュアップしていく作業は変わらないんですけど、例えばサナバを構成する要素を“HIPHOP”とか“聴きやすさ”とかに分けて五角形にしたときに、8人だけで作ってるとやっぱり欠けている部分があった。そこを埋めるために外部のエッセンスを入れて、今までアプローチできなかった部分や表現しきれなかった部分を補ってもらった感覚です。

谷本 それこそ『OCTAVE』でやり切った感があるというか、あれは自分たちとしても達成感を感じられるような8人の集大成的なアルバムだったので。ただあの作品も俺らのお客さんには届くけど、さらにもっと外に広げたいと思ったときにはやっぱり欠けている部分があるから、それを手助けしてくれる人に今回お願いしました。例えば“Stay Strong”はTHE HIPHOPの曲を作りたかったんですけど、生楽器で演奏するとHIPHOP感がどうしても出にくいんですね。最初プリプロで録ったときはロックっぽい質感だったんですが、UPPERCUTさんにお願いしたことで音の質感がまったく違うものになった。UPPERCUTさんに限らず、今回お願いした人たちの細かな作業を見ることで、五角形をバランス良くすることを生業にする人っているんだなって感じたし、プロデューサーが必要な理由みたいなものがわかった気がします。

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谷本大河

髙橋 中村祐介(Yusuke Nakamura)さんはそれこそJAZZ HIPHOPというか、ああいう質感の曲をずっとやりたかったんです。“Somebody”や“Punch Me Panda”の曲が上がってきたときは「これじゃん!」って思いましたね。あのお洒落さはこれまで出せなかった。

──SANABAGUN.が次に進むために必要な強化というイメージでしょうか。加えて<フジロック>前のインタビュー(“新生”SANABAGUN.の今 ニューアルバム『BALLADS』と初出演の<フジロック>)でDTMの話をしていましたが、その面の変化も大きかったですか?

岩間 DTMである程度の形を組んでおいて、6割完成ぐらいのトラックが事前にあるというのは個人的にラッパーとして1番大きくて。準備にかけられる時間が増えたので、それによってクオリティも上がりました。

谷本 「この音欲しいから入れてくんない?」みたいなことがデータでやり取りできるんで、自分だけでもいろいろ進められるし、その辺りの作業がスムーズになったのは大きかったです。

髙橋 効率的で良かったし、逆に今まですごく非効率的なことをやってたなと。ただその非効率の中から生まれるバンドの面白さもあるので。今回はその両方のいい面が入ってると思います。

高岩 (結果的に)「セッションしてできる曲もいいよね」っていう話になったんだよね。あと俺はリハスタに入らずに俊樹の家に行ってやったりすることも増えました。俺らは人数が多いから、集合が主にスタジオになるんですよ。スタジオって「よし、スタジオワーク今からします!」みたいな感じなので、もっとニュートラルになって俊樹の家でワイン出して……みたいな、そういう空間も実は大事だったりして。もうちょっとラフにやれたのかなと思います。

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高岩遼

リリカルな“Punch Me Panda”と、ネオ歌謡曲“Fever”

──少し細かくリリックに着目すると、例えば“Punch Me Panda”は特に岩間さんの言葉の組み立て方が発揮された曲のように感じました。

岩間 ありがとうございます。あれはBPMを聴いてざっくり乗せ方のフロウを思いついたので、「書いてくるわ」って言ってスタジオに停めてた自分の車に入って30分ぐらいで書けました。名詞で踏むラッパーは多いと思うんですけど、僕は会話の中の流れで踏んでいくのをスタイル的にずっとやっていて。そういうスタイルって基本的に韻も浅く聴こえる。それにリリックを書いてるときに、韻を踏むことと意味を伝えることのどっちかを取らなきゃいけないケースが出てくるんですが、僕は真っ先に意味を取ります。韻はポイントポイントで押さえておけばいいと思ってるので。“Punch Me Panda”のバースは歴代の日本にいたパンダの名前を入れてるんですけど、漢字入れないとわからないなと思って、歌詞カードではああいう表記にしてあります。すごいラップ好きな人じゃないとそういう部分は食いついてくれないかもしれないけど、結局そういうところをやってるかやってないかが、ラッパーとしてのスキルの深さに繋がってくると思うので。

──この曲以外だと、色恋のトピックのリリックへの落とし込み方もお洒落だなと思いました。

岩間 めちゃめちゃ嬉しいです。見た目によらずロマンチストなので。今回の曲の中でも“Punch Me Panda”と“Fever”の表現は特に好きですね。

谷本 “Fever”は僕が曲を作りました。今回は「お客さんがどういうサナバを見たいんだろう?」っていうのを軸に考えて作ってたんですけど、 “Fever”は遼の歌がどっちかというとメインで聴かせるので歌謡曲のようなイメージで。僕はREC中にずっと“ネオ歌謡曲”って言ってました。あと歌詞のアイデアは僕からも投げてて、俊樹が主人公っていう謎の小説を俺が書いて送ったんです。

岩間 すごい量なんですよ。俺のラップと同じかもっと多いぐらい。今回みたいにある程度の世界観やストーリーができていると、自分としてはリリックの表現の方に自分の脳みそを振れる。“Fever”の歌詞がいいって言ってもらえるのは、作曲側が歌詞に寄り添って作ってくれたからだと思います。「足に波が触れるとジュッと音がするほど」とか「1400°Cの灯火」とか、“Fever”のリリックは気に入ってます。

──僕も“Fever”は聴きまくってます。先ほど“ネオ歌謡曲”というワードが出ましたけど、この曲は高岩遼の歌声が存分に発揮された曲だと思います。昨年、ソロアルバム『10』をリリースしましたが、個人での活動を経て本作に生かされた部分はありますか?

高岩 僕は声帯模写とかも得意なので。どの声のパターンになるかストックがあり過ぎてよくわかんないときがあるんですよ。チェストボイスとヘッドボイスは違うし、ファルセットは出せないんですけど、その中にもいろいろジャンルがあるので。

谷本 “Fever”に関しては、レコーディングのときにキャラ設定を細かくしてね。

高岩 6パターンぐらいあったのかな。「じゃあシャ乱Qっぽく」とか。ほかにも「ジャニーズっぽく」とか。「高岩遼……すぎるやつ」とかいろいろあって。それをみんなで聞きながら決めていきました。

──歌とラップ、そのバランスは考えますか?

高岩 うーん、特に。僕は歌の中にラップがあるイメージなので。ちょっとアカデミックな話をすると、ラップの始まりってジャズなんですよ。J-RAPはわからないですけど、ブラックミュージックのラップ自体は、諸説あるんですがジョン・ヘンドリックスがジャズのビーバップに歌詞を乗せたのが始まりとされていて。僕の中ではラップはジャズのスタイルのひとつだと思ってますし、僕にとってはリズムが1番大事。ただ「俊樹がラップで、俺はボーカルの方に振り切った方がいいんじゃないか」っていう話題はけっこう前から出ていて。そのキャラ設定について考えてた時期もあったんですけど、まあ今となればそれもボーカルのひとつのスタイルでいいんじゃないかなと捉えてますけどね。そこに俺なりのジャズ・マナーが生じてればいい。

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SANABAGUN.史上初のコラボ楽曲。藤原さくらとCreepy Nuts

──外部のプロデューサーの起用と同じく話題に上がるのが、SANABAGUN.史上初のコラボ楽曲で藤原さくらさんとCreepy Nutsをフィーチャリングに迎えています。

岩間 “Sweet Dreams”のメロディーがある程度固まった段階で「絶対これ女性だよね」って話に上がって、アコギを持っている姿がいいっていうイメージが先行して。それでさくらさんがいいんじゃないって案が出た。

──新鮮な絡みですよね。SANABAGUN.ファンに届く女性の声は。

髙橋 自分たちもまさか藤原さくらさんとやるとは思ってなかったですし、よく受けてくれましたよね。俺がマネージャーだったら絶対止めますもん。

一同 ハハハハ!

髙橋 でもそのぐらいの振り切り方が良かったのかなと思います。この界隈の人が知ってるようなブラックミュージック寄りのシンガーだったらここまでの意外性は無かっただろうし、声の質とか出方とかを初めて聴いたときは「おお〜」ってなりました。

──この曲に関しては組み合わせを想像してなかった分、ハマり方への驚きが大きかったです。

岩間 さくらさんの曲もそうだけど、生活に近い感じのイメージがあったので、内容的にも合ってたのかなって思います。歌詞は両面があって、例えば「世間って狭いね」ってよく言うけど俺らの行動範囲が狭いだけでしょっていう。聴いた人が「もっと外に出てもいいよね」って思ってもいいし、外を知ってそこにいる人たちは「そうだよね、結局落ち着くところがあるよね」って思うかもしれない。聴く人の立場で意味が変わるようなイメージで書きました。

──そして、もうひとつのコラボ曲のお相手はCreepy Nuts。彼らはSANABAGUN.の対バン企画に登場していますし、逆にCreepy Nutsの全国ツアーの最終日にSANABAGUN.がゲストに出るなど繋がりの深い間柄かと。そしてそのコラボで挑んだのが米米CLUBの“浪漫飛行”と知ったときは驚きました。

岩間 カバーは元々案としては出てて、Creepyとのコラボも案としては出てた。そこからみんなで話し合っていく中で、「自分らの生まれた年ってどんな曲が流行ってたっけ?」っていう話になって調べたら1位がだんご三兄弟? いや違う、なんかNHK系。
※高岩&岩間の両氏が生まれた1990年の1位はB.B.クィーンズの“おどるポンポコリン”

髙橋 だんご三兄弟の案もあったよね。

谷本 アレンジも作って。でもサナバのまんまじゃんってなった。

高岩 さまよってたなあの頃。だんご三兄弟で6パターンぐらいあった。

岩間 で、その年(1990年)の2位が“浪漫飛行”だったんですよね。 

谷本  “浪漫飛行”はお互いキャラじゃないのがいいよねっていうのもあった。

髙橋 プリプロ送ってすぐに誰かのライブで(DJ)松永に会ったんですけど、「絶対ハネる! めちゃくちゃイイ!」って言ってました。でもあれだよね、自分がハネちゃって。
※DJ松永は9月28日にロンドンで開催されたDJの世界大会<DMC WORLD DJ CHAMPIONSHIP FINALS 2019>で優勝

岩間 自分だけハネちゃって。連れていってもらおう……浪漫飛行。

一同 ハハハハハ!

岩間 でも面白かったっすね。R(-指定)くんとはお互い意地の張り合いじゃないですけど、「Rくん、この2バース目は超まくし立ててスキルフルにいった方がいいよ!」って言ったものの、「やべ……次の俺の出方どうしよう……」みたいな。このあと普通にラップしても「負けてる」とかツイートされるわって。「自分の得意な表現でそこは戦えない、じゃあ音楽的にどう戦うか」とかを考えて、けっこう譜割的なところだったり、言葉を落とすタイミングだったりを考えました。

──リリックの一方で、トラックはどうやってあの形に昇華していったんですか?

谷本  “浪漫飛行”って完成されててコード進行もイジりづらいし、ベースラインが印象的なあのテンポ感も難しくて。半分にすると遅くなっちゃうし、HIPHOPのテンポにすると違和感がある。だったら振り切って、HIPHOPの手法でサンプリングしてラップしていく方がいいと考えました。それで歌は原曲のまま。いろいろ試したんですけど、ストレートに遼が歌う方が伝わりやすいかなって。

髙橋 「J-POPのカバーってこんなに大変なんだ」って思いましたけど、ちゃんとパッケージになってる自信はあります。もちろん遼は気にする部分はあるとは思うけど、母ちゃんから「遼くんの浪漫飛行良かった」って連絡来たもん。やっぱ遼は何やってもカッコいいですよ。

──いろいろな意味で難易度は高かったと思いますが、単純に原曲の間にラップを挟むようなカバーではなく、このコラボで作り上げたことに意味がある曲のように感じました。

高岩 “浪漫飛行”ってビッグタイトルじゃないですか。だからその……自惚れたくないんで、歌はもう無理なんですよ、原曲を超えるのは。その時代性もあるし、スモーキーさんがどういう想いで、どの角度でマイクを持って歌ったのか、ソングライティングでどういう絡みがあったのか、そこまでの人生があるじゃないですか。俺らみたいなペーペーが「よし! カバーやるぜー!」ってやってもみんな聴いてた曲だし、俊樹やRのラップもあるけど俺はサビなんで、プレッシャーはあったっすよね。しかも原曲が跳ねないビートなんですよ。それをHIPHOPのビートにしてスウィングのリズムが入ることで跳ねさせてる。これに“浪漫飛行”の歌詞を合わせるのはすげー難しいチャレンジでした。ただ楽曲としてはいいものになったんじゃないでしょうか。仰る通り、このコラボでやることに意味がある曲だと思います。

テレビ、ドーム、金、名声……マスで生きるSANABAGUN.の覚悟

──今回の『BALLADS』はいろいろな意味でチャレンジングな作品ですね。そして”浪漫飛行“のカバー曲が象徴しているのかもしれませんが、SANABAGUN.の存在をより外に向けて発信する、より広く知ってもらうような意識がアルバム全体を通して感じられました。

髙橋 まあでもその中にも“C.$.C”みたいな曲もあって。俺はああいう曲がアルバムに入ってるのはサナバっぽいと思う。もしあれが無かったら、「変わったな」みたいに思う人もいるかもしれないですしね。そういう意味ではバランスの良いアルバムだと思います。

──その意味では“ス・パ・パ・パ・イ・ス 〜想い出のお母さんカレー編〜”も。

谷本 あれは亮三が持ってきた曲なんですけど、「今回出すアルバムは勝負のアルバムで、みんな真剣に曲作ってこよう」って言っている中であいつは、「カレーの曲つくりたいんだよね〜」って言い始めて。頭おかしいと思いました。

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大林亮三

髙橋 あの曲も無かったら、SANABAGUN.エッセンスは失われてたでしょうね。ライブでもガンガンやるだろうし、「カレーのタイアップ来ーい」と思ってます。

──アルバムの話をがっつり聞いてきましたが、<TOUR BALLADS>が終わると、もう年末です。2019年を振り返っていかがですか?

谷本 相変わらず濁流の中というか、毎年何か起こるんですよね。でもやっぱり2019年に関しては嬉しい悲鳴が多かったイメージで、やっぱライブをできる数が増えたっていうのは心が豊かになりました。やっぱり8人が常に一緒にリハできる環境っていうのはいいことだなと改めて思いましたし、バンドっていいなって。それこそ<フジロック>とかいい流れも重なってバンド自体のメンタルも比較的いい感じだったし、自然体でいられたのかなと。あとは終わりよければすべて良しなので、ツアーをしっかり締めていい年にしたいですね。あと来年以降に関しては、もっと下世話に出ていいと思うんですよね。「俺らあんまりテレビとか出ないんですよ」みたいな感じじゃなくて、それこそスカパラとかはバンバン出ててもカッコいいじゃないですか。俺たちみたいな音楽で、ちょっと売れたからそういうのは……みたいのは逆にダサい。この音楽性で日本を代表するようなバンドになるとこまでいかないと意味が無いかなと思ってます。

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澤村一平

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隅垣元佐

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大樋祐大

岩間 (ボソボソと)今までで1番忙しかったイメージはあります。でもその……8人でリハできる……ライブできるのは当たり前じゃないことを忘れずに、生きていきたいですね……。

一同 フフフフフ……。

──……亡くなるんですか?

一同 ハハハハハ!

岩間 大丈夫です。やっぱ内側でいくら作ってても発信しないと意味がないので、それがちゃんと表に向けて弾が打てるようになってるのは素晴らしいなと思います。今年はあとツアーが残っていて結局それもちゃんとアウトプットできないとダメですし、届けるまで受け取るまでがアートだと思うので、そこはしっかり伝えられるようにします。今後に関しては俺の中でサナバに求めているものがあって、それは「フォーマットを変えること」。全部木を切り倒して開拓していくじゃないですけど、そういうところにサナバの魅力があると思ってて。ただもっと力を付けて、賛同してくれる人を増やさないと戦えないので、常に「こいつら売れたら俺らの仕事もっと楽しくなる」って思ってもらえるようなことを企んでいきたい。これから先、規模感とかの目標はスタジアムとかアリーナとかドームとかになるんでしょうけど、どうなっていきたいかだといろいろなフォーマットを覆して、「自分の思ってることを貫き通していいんだ」ってみんなに感じてもらう、人々のマインドを変えることがもうひとつのゴールなのかなと思ってます。

髙橋 俺は……「全然足りない!」みたいな感じですね。今年はこれまでより忙しかったですけど、俺らより忙しい人なんてたくさんいるし、実際に売れたなって感じは無いです。もちろんライブの動員とかの実感はありますし、フジロックの反響もすごかったですけど。

高岩 俺は今年、サナバに対してニュートラルにコミットしてやれたので、来年はもっと危険な思いもしかり、やばいことになんねーかなと思います。メジャーでやってる以上は腹を決めないと。そこはマスで生きていく覚悟を持って、振り切って楽しみたい。ただ俺たちはストリートのやり方で、8人は絶対的に8人なので。どんなにマスに広がろうと、俺たちは俺たちでありたいです。

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Interview&Text by ラスカル(NaNo.works)
Photo by Masanori Naruse

INFORMATION

SANABAGUN. NEW ALBUM『BALLADS』

NOW ON SALE
VICL-65255
税込 ¥3,300

Tracklist

01. Somebody
02. Sweet Dreams feat. 藤原さくら
03. 45
04. Taco
05. Fever
06. Punch Me Panda
07. C.$.C
08. Mystery
09. ス・パ・パ・パ・イ・ス 〜想い出のお母さんカレー編〜
10. move on
11. Stay Strong
12. 浪漫飛行 feat. Creepy Nuts

<参加プロデューサー>

西寺郷太(Track 08)
DJ UPPERCUT(Track 11)
Yusuke Nakamura(Blu-Swing,LastElectro)(Track 01&06)

「BALLADS」リリースツアー <TOUR BALLADS>

2019.11.01(金)神戸 VARIT.
2019.11.04(月・祝)札幌 Sound Lab mole
2019.11.15(金)大阪 CLUB QUATTRO
2019.11.16(土)名古屋 CLUB QUATTRO
2019.11.24(日)仙台 MACANA
2019.11.29(金)広島 CLUB QUATTRO
2019.12.01(日) 福岡 BEAT STATION
2019.12.13(金) 東京 マイナビBLITZ赤坂

全公演共通:OPEN18:15/START19:00
ADV ¥3,780(D代別) 各プレイガイドにてチケット一般発売中

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