––––アルバムのコンセプトがあれば教えてください。
そうだな、思うに……とにかくまあ、色々とあった中でも大きかったのは、ふたつの核になるアイデアと共にアプローチする、というもので。で、それはある意味最初からこのプロジェクトに内包されていたわけだけど……とにかくまあ、まずリズムや空間、ソニックやサウンド、僕達ふたりとも気に入った「声」なんかを見出していくことにしたし、それらをひとつにまとめてみたところで、なんというのか、それこそいちいち話し合う必要もなく互いのスペース、お互いに納得できる共有空間を発見することができるという。だから、最高のコラボレーション作というのは、その結果が双方の妥協によるものとは聞こえない、そういうものだと僕は思うんだ。コラボは妥協の産物ではないし、コラボする者同士がお互いに気に入って同意できる何かを見つけていく、ということであって……要するに、それぞれが妥協し歩み寄った結果の中間点、ではないわけ。それに、2組の異なる耳が存在するわけだし、そうやってそれぞれの耳が異なる問題点をピックアップし、あるいは同じものから別の何かを聴き取り、互いに別の何かに気づき、それぞれ別の事柄に注意を払いながら聴いているわけだよね。ということは、もしもそのコラボレーションが良い内容であれば、結果は必然的によりストロングなものになるだろう、と。
––––『Late Night Endless』というタイトルの意味を教えてください。
僕達が考えていたのは、このアルバム、アルバムの音楽それ自体が……だから僕が想像するに、このアルバムの音楽は様々な文脈の中で聴くことができる、そういうものじゃないかってことで。たとえば僕としても気に入ってるのは、たとえば夜遊びから家に帰ってきて、一緒に家までついて来た友人達ともうちょっとダベりたいって時にまず最初にかけるのがこの音楽、みたいなイメージだし……ああ、それにアルバムの何曲かは、間違いなくクラブの環境でもばっちりハマると思う。だからまあ、僕は深夜のあわいに存在するそうしたインティメイトで親密な空間というのか、そういう概念が好きなんだよね。うん、間違いなく夜更けに聴く音楽ってものだし、ある種の……ムード、あるいは音空間を持つ音楽だし、しかもそれだけじゃなくちょっと奇妙なところもあるっていう。うん、それは僕自身のムードにもぴったりくるものだね。
––––スタジオで彼とはどのように作業をしたんですか? 役割分担的なものがあれば教えてください。
まあ、自然なものだったけどね。多くのパートをふたりで分担したし、それこそ一緒にコントロール・ルームに陣取ってひとつひとつこなしていくって調子だったけど……たとえばの話、大体において僕がコンピュータを使っていくつものリズム群を組んでいって、それを持ち込むってことは多かったね。で、僕達はそれらのリズムをバラバラに壊していくというのかな、リズムをどこかに加えたり、あるいは抜き去ったり、位置を入れ替えたり。で、エイドリアンについては、最終のデスク・ミックスはほとんど彼自身で仕切るって感じだったな。僕達は一緒に取り組んだし、バランスの調整だとか、自分達が聴きたい「これだ」という箇所がどれもちゃんと聞こえるようにあるパートを強調する……なんて風にやっていたわけだけど––––それになんと言ったって、エイドリアンにはアナログ卓が生み出すマジックに関して、35年もの経験があるわけだしね! だから、最終ミックスについてはピッチやディレイといった細かい云々も含めて、彼の経験とスキルに任せる感じだった。そうは言いつつ、作品の音に関して下した決断はどれもすべて、コラボレーションの最初から最後まで一貫して、僕達2名による共同決定ってものだったんだけどね。