2018年4月28日(土)「シブヤの日」に、入場無料のビアガーデンフェス<シブヤスカイフェス>が開催される。本イベントは渋谷発のエナジービール「シブヤビール」の3周年を記念し、東急百貨店本店の屋上という開放的な空間でライブ、トークショー、フィットネス、アートなどさまざまなコンテンツを提供する。今回はイベントを企画・運営する株式会社LD&Kの“わんぱくプロデューサー”こと水野直人氏と、出演予定のヒップホップMC・ACE氏に、渋谷の魅力と本イベントの見どころを語ってもらった。

Interview:ACE × 水野直人

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左:水野 直人 右:ACE

——渋谷を拠点に活動するお二人の、渋谷の印象を教えてください。

水野直人(以下、水野) 株式会社LD&Kは25年前に音楽レーベルとして渋谷で創立し、その10年後に「宇田川カフェ」などのカフェ業態を展開しました。この街の移り変わりをずっと見てきたと思います。僕の青春時代でもある90年代初頭には、“渋谷系”っていう言葉がありました。ピチカート・ファイブや、フリッパーズ・ギター、コーネリアスといったグループの音楽がそう呼ばれていて、渋谷はめちゃくちゃ元気でしたね。

90年代後半、2000年代前半頃から、渋谷はヒップホップで有名になります。 “世界一のレコードショップ”とも言われていた「シスコ」や、現存する「フェイスレコード」が人気でしたね。弊社ではすでにカフェ業態を始めていたので、カフェに来たお客さんがレコードに興味を持ってくれるようレコードマップなんかも作っていました。

いまはレコードよりもMP3などが主流ですが、デジタル社会だからこそ“ライブ感”が大切だと思っています。SNSでの交流が盛んな現代では、リアルな触れ合いが乏しくなっているんです。シブヤビールを開発したのも、“そこにビールがあれば人間同士の距離がもっと縮まりそうだな”と思ったからなんですよ。

ACE ラップをやっている僕らにとって、渋谷はあこがれの街でもあります。渋谷は、都会の中心。みんな、「渋谷でライブするなんて、ヤベーよな!」って言いながら頑張ってるんですよ。小さい頃から遊びに来ていた街ですけど、当時から“音楽の街”というよりも、“ヒップホップの街”っていう印象が強かったですね。クラブ遊びをするなら、六本木よりも渋谷が多かったですし。

渋谷に通うようになると、ラッパーの仲間が増えました。僕はよくSHIBUYA TSUTAYA前で「渋谷サイファー」というフリースタイルバトルをやっていたんですけど、それもラッパー仲間が増えたことで自然と生まれたものです。

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——渋谷にはどんな人が集まっていますか?

ACE 昔は、夜の時間帯に渋谷に来ることが多かったんです。でも、路上でラップをして長時間そこにいると、渋谷に来る人の層が時間帯によって違うことに気付きました。たとえば日曜日の昼なら、学生が多いですよね。夜は10代後半から、20代前半のパリピが多い気がします(笑)。

水野 平日の昼間なら、外国人旅行客が多いですよね。

ACE 確かに、ハチ公がめちゃくちゃ人気ですもんね!

水野 最近は再開発がきっかけで、大手企業が渋谷に拠点を移すような動きがあります。それを考えると、これからは多様な人がもっと集まる街になるんじゃないでしょうか。移り変わりの激しい渋谷ですが、僕らの会社や店がある宇田川町周辺はいつまでも雑多なエリアでいてほしいな、という希望があります。それこそが“都会の醍醐味”だと思うんですよ。綺麗に整備された街の中に、庶民的な区画があるって良いじゃないですか。

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ACE 僕もそう思います。都会の中にも落ち着ける場所が欲しい。アンダーグラウンドな場所があった方が良いです。宇田川町もそうだし、道玄坂もそうですけど、渋谷の明け方って同窓会っぽい雰囲気があるんですよ。人がたむろしては帰る気分にもなれなくて、「もう一軒、飲みに行くぞ!」みたいな。その感覚を持っている人が集まるっていうのが、渋谷の面白いところです。

水野 それも含めて、渋谷って居心地の良い場所ですよね。仮に地方でご当地ビールを開発しても、形にするのには時間がかかると思います。でも渋谷で1,000人に1人が「シブヤビールって美味しいね」って言ってくれたら、ニッチでも成り立つんですよ。いろんな人たちが入り乱れる街だからこそ、成立する。可能性と多様性がある街ですね。

ACE 渋谷では、自分自身を再確認できる。ライブを観たり、クラブに行ったりして、観客だった当時の自分を思い出す。そうすると、エネルギーが湧くんですよね。それに、渋谷が元気なことに安心する。「あ、まだ渋谷は死んでねーな」って。渋谷の街中では、とにかくいろんなことが起こる。そういった意味では、「ワンチャン(=ワンチャンス)ある街」です。

水野 それ、すごく良い表現ですね!(笑) 僕が言いたかったことも、“ワンチャン”ですから。

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——ACEさんが渋谷でラップをしていて面白かったエピソードはありますか?

ACE 僕は渋谷のラップスクールで講師もしているんですけど、生徒の中には60代半ばの男性もいます。お孫さんと観に行った映画がきっかけで、ラップに興味を持ったらしくて。その映画の内容を訊いてみると、どうもエミネムが主演の『8 mile』のようなんですけど……映画が公開されたのって、だいぶ前ですよね(笑)。しかも、その生徒は昔、小学校の教頭先生だった。教育機関に勤めて、子どもたちの指針となる言動や行動を徹底してきた人間が、いまやラッパーですよ。しかも、ラップが結構上手いんです。

水野 「60代の男性がラップ」と聞くと意外ですが、ラップも俳句・短歌も、韻を踏んだり、言葉遊びを楽しんだりするといった点では似ていますもんね。

ACE まさにそうなんです。去年は「代官山ティーンズクラブ」というところで、小学生にラップの技術を教えました。ラップは、年齢問わずに楽しめるもの。僕は今後も、渋谷からラップの楽しさを発信していけたら良いなと思っています。

——<シブヤスカイフェス>を開催する4月28日(土)に3周年を迎える、シブヤビールについて教えてください。

水野 シブヤビールは、ペルー産のオーガニックマカを配合したエナジービールです。“渋谷から日本を元気に”というモットーを掲げて、2015年に発売しました。シブヤビールを発売してから気づいたことですが、音楽とビールは密接な関係を持っています。両方とも場を盛り上げてくれるツールですし、人と人との距離感を狭めてくれます。そこで数年前から<宇田川ハーフタイムショー>というイベントを開催し、多くのアーティストを招致しながら、シブヤビールを提供したんです。今回の<シブヤスカイフェス>はその延長ともいえます。

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——本イベントは東急百貨店本店で開催されますが、開催決定までの経緯を教えてください。

水野 これまで僕らは、自社のカフェやライブハウスなどを中心にイベントを行ってきました。今回、東急百貨店本店さんの屋上で開催することになった背景には、僕らと東急さんに共通した“渋谷を盛り上げたい”という想いがあります。渋谷といえば東急百貨店が有名ですし、東横線や田園都市線などといった路線も運行しています。意外かもしれませんが、東急百貨店本店さんの屋上では無農薬のはちみつが作られていたり、近隣の神南小学校の生徒を招き、食育の一環で田植えをおこなっていたりするんです。環境保全や、地域連携にも力を入れているんですよね。

ACE 東急百貨店本店の屋上ではちみつも作ってるんですか? すごいッスね(笑)。

水野 そうなんです。そんな東急百貨店さんがシブヤビールの販売や、僕らが渋谷で開催しているイベントに共感してくださり、一緒に渋谷を盛り上げることになりました。実は弊社も東急百貨店の屋上スペースを借りて、シブヤビールの大麦を栽培しているんですよ。<シブヤスカイフェス>には渋谷を愛し、活動をおこなうイベントメーカー、アーティスト、飲食店が集結します。渋谷のストリートで実力を発揮してきたACEさんともぜひ一緒になにかできたらという想いで、今回のオファーさせてもらったんです。

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——とても充実したイベントになりそうですね。ACEさんは当日どんな形で参加をするのですか?

ACE ストリートでおこなってきた「渋谷サイファー」を、特別に東急百貨店本店さんの屋上でやらせてもらいます。当日は僕やいつものメンバーに加えて、来場者の飛び入り参加も歓迎です。とにかく楽しむしかないッスね。<シブヤスカイフェス>では、ギャルがパラパラを踊るステージもあるらしいですよ。個人的にすごく楽しみにしています(笑)。

渋谷を愛する人々によって実現する、<シブヤスカイフェス>。ゴールデンウィークの初日はシブヤビールを片手に、渋谷に新たなカルチャーが生まれる瞬間を楽しんでみては。

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EVENT INFORMATION

シブヤスカイフェス

2018.04.28(土)
OPEN 12:00/START 20:00
東急百貨店本店屋上スペース
入場無料(飲食代、グッズ購入代など別途必要)

詳細はこちら

text by Tamo Inai
photo by Yoshikawa Yoshihiro