——なるほど、ピッタリの曲がいいタイミングで生まれたのですね。続く11月の楽曲“新宿サノバガン(SON OF A GUN)”は、真島さん(真島昌利:クロマニヨンズ)の魅力がストレートに出た曲だと思いました。
言葉の散らばし方も、メロディもそうですよね。
——ライブですごく映えそうな気がします。
本当にそうだと思います。前の(甲本)ヒロトさんの時もそうなんですけど、送られてきたデモがアコギとご本人の声だけで、それ自体がみなさんに聴かせたいぐらいすばらしいんです。そこから大島さんがアレンジしてくださったんですけど、すごくかっこいいものになっていたので、私はそれをいかにいい意味で崩しながら、グルーブ感を持って表現するかを考えていきました。どれだけドライブできるか、ドラムもどれだけ転がっていけるかを意識しましたね。
——そして、このインタビュー時点ではまだリリースされていませんが、12月に配信リリース予定のRIZEとしての活動のみならず俳優としても活躍する金子ノブアキさんとの楽曲“zamza”は、ドラマー2人のコラボでありながら1分30秒頃まで全然ドラムが出てこないことに驚きました。
(笑)。ノブアキさんのソロに近いサウンドですよね。そのなかでも私のイメージも汲んでくださって、特に「カフカ」という名前に着目して色々と考えてくれたそうです。私の名前の由来自体は違うものですけど、「カフカ」→「フランツ・カフカ」ということで、タイトルがカフカの『変身』の主人公の名前なんですよ。
『変身』のザムザは虫になった後、自分の部屋から出ることができずにそのまま死んでしまいますよね。救いのない、いろんなものを風刺している物語で。でも、カフカ自身は、あれをある意味喜劇として書いたそうなんですよ。そういう話をノブアキさんから聞きながら「2人でザムザを外に連れて行こう」と考えているうちに、3部作のような展開になりました。6分ぐらいのなかで構成が変わっていく楽曲ですね。
——もちろん、途中から一気にドラムが鳴りはじめるわけですが、「序盤はドラムを叩かない」というのは、はじめから決めていたことだったんですか?
それはノブアキさんのアイデアでした。あと、最初はノブアキさんの細かいドラムも入っていて、それに合わせて私は大きい波を作ろうと叩いていたら、最終的にノブアキさんが全体のバランスを考えて自分で叩いたドラムを全部消して、曲が大胆に変わったんですよ(笑)。その上で、ドラムを抜いたところにコーラスの層を加えてくださったりもしました。今回の3曲って曲調が全然違うので、三者三様の姿を3ヵ月連続で見せられるのが楽しいですね。
——“zamza”とか、聴いた人はきっとびっくりするでしょうね。
みんな「ライブでどうやるの?」と思うはずです(笑)。
——もう年末ですが、今振り返ってみて、2017年で一番大きかったことというと?
やっぱり、意識改革ができたのが大きかったです。今後いろいろ考えつつ変化していくことを受け入れる覚悟ができた感じですかね。まだなにかがすごく変化したわけではないと思いますけど、「変化を求めていける/認めていける」ような、ベースを作ることはできた気がしていて。
——自信が出てきたということですか?
いや、自信ではないんです。なんというか……これまでの私は「こうでなければいけない/こうなりたい」という自分の中の理想に固執しすぎる面があったんです。でも今は、それをいい意味で「諦められる」ようになったというか。その上で、「じゃあ、実際に自分はなにができるのか」ということを見つけられるように、考えられるようになってきた気がしているというか。そういうことを認めることができるようになってきたのかな、と思っているんですよ。
もちろん、まだやっとスタートラインのところまで来ただけだし、来年早々また同じ殻に閉じこもって、崩れ落ちている可能性もあると思いますけどね(笑)。でも、いろんなことを経験させてもらって、今こう思えるようになったのは、すごくありがたいことで。私は年初めに一年をどう過ごすかを漢字で決めて年賀状にして送るんですけど、今年の初めに送ったのは「整」という文字でした。そういう意味では、整えることができた一年だったかな、と思います。
——そういう日々のなかで、今回話していただいたいろんな出来事があったのが、カフカさんにとっての2017年だったんですね。年末には東名阪ツアー<Live Tour 2017 そうだ、ライブやろう>が控えています。タイトルから想像すると、お芝居を取り入れてコンセプチュアルなステージを展開した<Theatre Kavka 『DO_S』>とは、大きくモードが変わっていそうです。
前回のツアーは本当に作り込んだライブで、それ以降今年一年は音楽以外のお仕事を頑張ったので、ただ純粋に、最後に「ライブがやりたい」と思ったんですよ。「全部終わったんだから『そうだ、ライブやろう!!』」って。本当にそのままなので、楽しいライブにしたいです。
——何も考えずに、思いきりライブをしたい、と。
そうですね。会場でみんなに久しぶりに会えるのも本当に楽しみですし、ミュージシャンたるもの、ライブで音を鳴らすことが一番楽しい瞬間なので。お芝居の仕事をたくさんやらせてもらえたからこそ、今はまた音楽の現場に戻っていける喜びをすごく感じていて、本当に「ただただ楽しみたい」という気持ちですね。ちゃんとクオリティも保って、その上でみんなにもとにかく楽しんでもらえるような——。そんなライブにしたいなと思っています。
EVENT INFORMATION
シシド・カフカ Live Tour 2017 そうだ、ライブやろう
2017.12.02(土)【SOLD OUT】
OPEN 18:00/START 18:30
名古屋 ell.FITS ALL
ADV ¥3,800(1ドリンク別)
2017.12.06(水)
OPEN 18:30/START 19:30
Umeda TRAD
ADV ¥3,800(1ドリンク別)
2017.12.13(水)
OPEN 18:30/START 19:30
渋谷 WWW X
ADV ¥3,800(1ドリンク別)
TICKET:チケットぴあ、ローチケ、イープラス
RELEASE INFORMATION
『zamza』
2017.12.13(水)
シシド・カフカ
『新宿サノバガン(SON OF A GUN)』
2017.11.08(水)
シシド・カフカ
iTunes
『羽田ブルース』
2017.10.04(水)
シシド・カフカ
iTunes
オフィシャルサイト
Twitter
Facebook
Instagram
text & interview by 杉山仁
photo by 瀬田秀行
衣装:トップス・パンツ・シューズ(UN3D.)/イヤリング (ABISTE)/小指リング (agete)/薬指リング (chigo)
取材協力:富士フイルム<チェキ>