本作に登場する役者たちは両監督の友人たちで、映画撮影時は実際にバンド活動を行っていた(残念ながら撮影後に解散)。またカート・ヴォス自身がハンディカムで撮影を担当し、アリソン・アンダースの子供たちがBカメラと音楽の統括を担うなど徹底した低予算で製作された本作には、独特のドキュメンタリー映画のような肌触りがある。それはジョン・カサヴェテスらインディーズ映画の巨匠たちが活用してきた製作方法でもある。
しかし、それだけでなく、本作のガレージ・ロックや60~70年代のロックカルチャー、カントリー、グラム・パーソンズといったロックへのオマージュも見逃せない。何せ、主人公のブレットが働く楽器店の店主役に80年代に活躍した伝説のL.A.パンクバンド、ガン・クラブのドラマー、テリー・グレアム、中古レコード店のお客として L.A.ミュージック・シーンの異端児アリエル・ピンクが出演している。さらに劇中を彩る音楽も最高で、ガレージ・ロックやグラム・パーソンズの奏でるカントリー、ダイナソーJr.のJ・マスシスによるスコア(マスシスは何とカメオ出演までしている!)など、L.A.ロックシーンの過去と現在(いま)が体感できるものになっているのだ。
そんなインディペンデント精神で描かれた普遍的なビターでスイートな青春ロックン・ロード・ムービーを独特のタッチで描写したアリソン・アンダース監督のインタビューが到着! J・マスシスのカメオ出演の背景から、表現するということまで沢山答えてくれました。とくと御堪能あれ!
Interview:アリソン・アンダース監督
――タイムレスなタッチと普遍的なテーマ。映画とロックへの愛溢れるストーリーにとても魅せられました。まずは本作をこのタイミングで制作に至った経緯を教えて下さい。
我々の映画とロックン・ロールへの愛を、フィルムを通じて伝えたい、それが、『ストラッター』の物語をつくる一番の動機でした。
――アメリカン・ニュー・シネマなどのような空気感がありながらも、現代的なキャラクター描写やドキュメント的な不思議なタッチも魅力的でした。その中でも本作にはご自身の実体験はどれ位、反映されていますか?
この作品には、我々と俳優たちが体験してきた様々なことが、たくさん詰まっています。多くの人が、『ストラッター』に初期のアメリカのインディペンデント映画のようなレトロな感覚を持ったかもしれません。しかし設定は現代。その事がとてもクールなアイデアだと思ったんです。本作は我々が狙って作ったものではなく、体験を元に作った映画です。80年代の映画の感覚で見ていた人は、劇中に携帯電話が出てきた時にショックをうけてしまったかもしれません。