——自身の原点と辿ってきた道を振り返ることで、変わるための方法を見出せたんですね。

濱田 完成稿書き終わった後に、何かのインタビューでニール・ヤングが「変わり続けることで、変わらずにいられる」みたいなことを言ってるのを見つけたんですよ。言ってることは違うけど、意味は同じだなって思うようなことが台本の中にあったりして驚きましたね。僕たちみたいな仕事は、作品が終わったと思ったらまたすぐ始まって、それを延々と終わりなく繰り返すんですけど、その中では変わりたい気持ちも一生で、だから向き合うしかないんだって。その自分をそのまま投影した感じです。まだ今も稽古しながら変わるって何なのか、難しいなって考えながら作ってます。

古舘 僕が真和さんからお話をいただいたのも、ちょうどそういう時期だったんですよね。バンドが活動休止になって1年経つんですけど、去年1年間は自分のアルバム出してライブやったり芝居の仕事をいただいたりしつつ、海外へ行ったりモツ焼きの仕込みを修行したり(笑)していて、ほぼ遊んでたんです。16歳でバンドを始めてからずっとバンドしかやってなかったから遊べる環境っていうのがすごい新鮮で、遅れてきた青春状態で。でも、周りは働いてるし遊べば遊ぶほど虚しくなってきちゃって。そういうのもあって変わりたいって思ってた時だったんですよね。

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濱田 作品のテーマそのまんまだ。

——はからずも転換期を象徴するような作品ですね。

古舘 でも、オファーをいただいたときは自分が来年どんなふうに仕事をやっていくのか決まってなかったのもあって即答できなかったんです。ただ、自分の好きなことをやっていきたいと考えてたこのタイミングでこの作品に誘ってもらったのには何か意味があるのかなっていう気もしてきて。で、最終的な決め手になったのが、真和さんが僕のライブに来てくれた時にある知人を紹介したんですけど、真和さんはずっと前からその人に憧れていたらしく、すっごい緊張してて。その真和さんを見て「あ、俺と一緒だ!」って、すごい親近感を覚えたんです。

濱田 ……なんかやだな(笑)。

古舘 根っこの部分が似てるって勝手に思って、それが何故かすごいうれしくて「この人と一緒にやりたい」と思えたんで、その場で出演を決めました。

濱田 そうだったんだ、初めて聞いた。じゃあ、それがなければ今もなかったかもしれないですねえ。

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古舘 いやいや(笑)。でも、もし誘ってくれたのが1年前とかだったら今とは違う気持ちだから断ってたかもしれないです。しかしまあ、その後は台詞の多さにビビり迷い……真和さんにはだいぶ支えてもらってます。

濱田 僕の脚本はただでさえ台詞が多いから、主演ってなると余計に。ただ、芝居の経験が少ないというのもわかったうえで主演をお願いしてるし、うまい役者を選ぶなら他にもたくさん候補はいるけど、この作品にハマって、「面白いだろうな」って思えたのは彼しかいなかったから。今回は、ミュージシャンの匂いを残したまま俳優としての古舘佑太郎の魅力をどうお客さんに伝えるかっていうのがテーマでもあって。共演者のみんなもその魅力には気づいてると思うんですよね。実際、年末にあった古舘さんのライブを観て出演を決めたっていう役者もいたんで。みんなきっと古舘さんの放つエネルギーに直に触れたからだと思う。

古舘 えー! それはすごく嬉しいですね。

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——今回の作品はミュージシャンを主人公に描いたものですが、そういう点で古舘さんは自身の経験に重なるところも多いのでは?

古舘 バンドやってたときの自分とリンクするというか、役の性格も自分と似てるし会話とか生々しいんですよ。真和さんはバンドやってたわけじゃないのに。一部、僕の実体験みたいだなと感じるところもあるし。

——演じることで過去の自分自身を追体験するというのはおもしろいですね。具体的な台詞や人物像は古館さんを想定して描いたんですか?

濱田 いえ、まったく。モデルは自分ですね。だから、やっぱり僕と古舘さんは似てるのかもって、今話聞いてて思いました。あと、バンドも舞台作品作りも一緒なのかなって思ったことがあって、やってることは全然違うけど悩みが似てたりするのかもしれななって。だから、自分を落とし込んだ役を共感して演じてくれているのは、うれしいです。

古舘 最初は手探りだったんですけど、やっとちょっとずつ見えてきてて。真和さんから「心の奥の自分を深く深く汲み取って演じてほしい」って言われたんですけど、最初それがわかんなかったんです。でも今回は、嘘つかないで本当の自分のまま生身の自分で最初から最後まで集中してアウトプットできたら、それが多分正解なんだなって。そんな気がしました。

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