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インターネットを基盤にしたクラブ・シーンから登場し、国内外の様々なアーティストの楽曲提供/プロデュースを担当する他、DJ/アーティストとしても世界を舞台に活動するTeddyLoid。彼の最新作にして、3年間続いた『SILENT PLANET』シリーズの最終章となる2枚のアルバム『SILENT PLANET: RELOADED』と『SILENT PLANET: INFINITY』が完成した。

この2作品には、2015年のアルバム『SILENT PLANET』以降続いてきた壮大なコラボ・プロジェクトの集大成として、シリーズを彩った様々な面々がふたたび集結。そこに新たな仲間も加わって、シリーズを通じて表現されてきた、音楽で感情を解放する戦いの最終決戦がストーリー仕立てで描かれるコンセプト作品。中でも、『SILENT PLANET: RELOADED』の序盤に強烈なインパクトを残してくれるのが、日韓の気鋭ラッパー、SALUとPaloaltoを迎えた“Two Dawgz and The Ape feat. Paloalto & SALU”。その制作背景について、TeddyLoidSALUに聞いた。

TeddyLoid – Two Dawgz and The Ape feat. Paloalto & SALU

Interview:TeddyLoid×SALU

——最初に聞かせてもらいたいのですが、今回“Two Dawgz and The Ape feat. Paloalto & SALU”で2人のコラボレーションが実現した経緯はどんなものだったんですか?

TeddyLoid 僕がKOHHくんの曲を作ったときに、一緒のアルバムに入っていた“If I Die Tonight feat. Dutch Montana, SALU”でのSALUくんにまずは釘付けになりました。MVもSALUくんの演技が、まるで深作監督が撮る映画のような佇まいで「すごいな」と思って。そのとき、同じタイミングで彼の“TOKYO”も聴いて、バースが独特なのにサビはすごくキャッチーなことに惹かれました。

僕はそれまで、SALUくんにはすごくメジャーな印象があったんですけど、そのアルバムで衝撃を受けたんです。フロウもかっこいいし、USよりも先に行っているような独自の魅力を感じて、すごく気になって。ちょうどその頃、僕はモード学園のCM用に15秒ぐらいのトラックを色々と作っていたんですけど、当時のSALUくんのディレクターさんから「それを聞かせてもらえないか?」という話をいただいて、5~6トラック送ったのが最初の繋がりでした。

KOHH – ”If I Die Tonight feat. Dutch Montana, SALU” Official Video

SALU でも、その時点ではお話をしたことはなくて、トラックを聴かせてもらっただけだったんですよ。僕もKOHHくんの曲を通してTeddyくんのことを知って、正直「俺ともやってほしいな」と思っていました。僕は僕で、KOHHくんとはまた違うアプローチでラップを乗せられる自信があったんで、いつか一緒にやらせてもらいたい、と思っていました。

——2人とも、メジャーもアンダーグランドも、ジャンルも横断してクロスオーバーしていくような活動を続けてきた人だと思うので、そういう意味では共感するところがあったのかもしれませんね。

SALU そうですね。もちろん、僕は言葉を使って音楽を表現していて、Teddyくんはトラックを作って音楽を表現していますけど、スタンスがすごく似ているな、というのは感じてました。今回はTeddyくんとPaloaltoさんと3人で曲を作ったわけですけど、外へ外へ広げていこうという気持ちはお互い強いと思うので、僕たちらしい曲になったと感じました。

TeddyLoid 僕も同じように感じていましたね。僕はKOHHくんに曲を提供する一方で、ゆずのアレンジ/ミックスを担当することもあって、SALUくんもJP THE WAVYさんと一緒に東京のトレンドを作る(“Cho Wavy De Gomenne Remix feat. SALU”)一方で、LDHファミリーと一緒に曲を作ったりもしていて。今って、メジャーなものとアンダーグラウンドなもののどっちかしかやらないというのは、僕はかっこよくないと思うんですよ。かっこいいことをやっている人が好きなので、今回一緒にやれてすごく嬉しかったです。

——2015年から続く『SILENT PLANET』シリーズには、音楽や感情が禁止された地球で、音楽の力を使ってそれを解放していくレジスタンスの戦いが描かれた作品になっています。その中で、TeddyさんはSALUさんにどんな役割を担ってほしいと思っていたんですか?

TeddyLoid “頼れるパートナー”じゃないですけど、同年代で、言葉を使ってともに戦ってくれる、頼れる存在としてオファーさせていただいました。あと、僕は『SILENT PLANET』シリーズで色々なアーティストの方々と共作を続けてきましたけど、彼も色々なアーティストと曲を作っているので、お互いの軍勢を引き連れた連合軍みたいな見え方も出来たら面白いな、と思っていたんです。

——ははは、なるほど。実際の制作はどんな風にスタートしたんですか?

TeddyLoid まずは最初、SALUくんからすごくいいアイディアをいただいたんです。実は最初は、2人である曲のリメイクを作ろうという話になったんですよ。

SALU そうなんです(笑)。

TeddyLoid それで一度作ってみたら、めちゃくちゃかっこよくて。ただ、権利関係の問題で、その曲はお蔵入りになってしまったんです。

——“Two Dawgz and The Ape feat. Paloalto & SALU”の前に、実はTeddyさんとSALUさんが2人で作業した曲があったんですね。

TeddyLoid 音楽的にはかなりロックなサウンドの曲でした。そのままSALUくんと2人で曲を作ってもよかったんですけど、ちょうどその頃、僕は最近韓国のラッパーに注目していて、その中でも〈Hi-Lite Records〉が好きだったので、レーベルの誰かと楽曲ができないかと打診してみたら、レーベル主宰のPaloalto氏が「ぜひ一緒にやりたい」と応じてくれたんです。それなら、SALU君と僕とPaloalto氏の3人で、曲を作ろうと思ったんですよ。

——今回の曲は「犬」や「猿」というキーワードが出てきて、このテーマがとても魅力的なものになっていると思います。これはどんな風に出てきたアイディアだったんですか?

TeddyLoid 僕は犬が好きで、Paloalto氏も愛犬家として知られていて、彼の作品やInstagramには頻繁に愛犬が登場しています。ヒップホップでは「Dawgs(ドッグス)」という「仲間」を表わすスラングがありますよね。そこで、SALUくんにも「テーマは『犬』でどうですか?」って訊いてみたんですよ。

そうしたら、SALUくんはやっぱり「猿」だという話になって。それなら、日本にはたまたま「犬猿の仲」って言葉があるけど、「その関係を俺たちの世代で変えて行くんだ」という曲にしようというアイディアをSALUくんが送ってくれたんです。やっぱりこの人はすごいな、と思いました。

SALU まず、僕は犬を飼ったことがないんで、愛犬家としてラップするのは違うよな、と思って(笑)。それならむしろ、「犬」「猿」ということも関係なく、3人で曲が出来ればいんじゃないかと思ったんです。そもそも「犬猿の仲」という言葉だって「誰が決めたんだろう?」と思うし、僕は色んな方と分け隔てなく音楽を作りたいと思っているんで。「犬を飼ってたりしますか?」と聞いてくれたことで、曲がすごくいい方向に向かいました。

——「犬を飼ってますか?」という話から、「犬猿の仲」にアイディアが広がって、日韓のアーティスト3人でそれを越えて行こうという曲になった、と。面白いアイディアですね。

SALU 最初に犬のことを聞かれたときは、ちょっと焦ったんですけどね (笑)。その後、まずは、Teddyくんが用意してくれたトラックにPaloaltoさんがラップを入れてくれたんですよね。

TeddyLoid そうですね。その内容も、韓国と日本を繋ぐことなどをラップした、メッセージ性のあるヴァースで、それを僕がエディットしてSALUくんに聴いてもらいました。僕の方では、曲のテーマに合わせて犬の鳴き声をドロップに入れたり、猿の鳴き声を入れたりして。サウンド的には、SALUくんとPaloaltoさんと一緒にやるなら、とびきり最新のトラックを用意したいと思っていたので、ハイブリッドトラップと呼ばれるような、トラップにエッジの効いたウォブルベースを加えたものにしました。実は最初、Paloalto氏には2種類のトラックを提案していたんですよ。
曲を投げたんですよ。

SALU へええ、そうだったんですか?

TeddyLoid そうしたら Paloalto氏が「ハイブリッドトラップの方はやったことがないから、こっちにトライしたい」と言ってくれて。それでSALUくんにトラックを送りました。

SALU そのトラックが送られてきたのが、確か夜20:00ぐらいだったと思うんですけど、僕は23:00ぐらいにはラップを入れて戻したと思います。一瞬で書けてしまったんですよ。

TeddyLoid そうだった!! すごく早かったんです。

SALU トラックがめちゃくちゃかっこよかったし、その時点でPaloaltoさんのリリックの日本語訳もついていて、彼が何をラップしているのかも全部分かって。それを聴いて、すごく燃えたんです。「すぐ形にしたい」と思って、その場で自分のバースを録りました。自分の場合すぐに形になるときと、何か月もかかるときとの2パターンがあって、どっちがいいというわけではないんですけど、直感で書けたものの方がいいことが多いんです。自分としても、この1年間色々な客演をやらせてもらった中でも気に入っているものになりました。

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——それにしても、2時間でラップが返ってくるというのは、ものすごいスピードですね……!!

TeddyLoid 僕もビックリしたんですよ。すぐに僕の手元にやってきて、その内容も「僕らの世代で変えていくんだ」という深いものになっていて。その時点で、「もうこのままでも出せるぞ」というクオリティで驚きました。

——かなりスムーズに作業が進んだんですね。

SALU もちろん、友達が3人同じ部屋に集まって作業するのとは違って、それぞれの国とそれぞれの立場があって、海を越えて音源を送り合っていたので、そのやりとりには時間はかかったと思うんですけど、音楽に関しては何も大変に思うことはなくて、本当に楽しくやらせていただきました。

TeddyLoid 今、日本と韓国の間には色々な問題もあったりしますけど、音楽を作るうえではまったくそんなことは関係ないし、僕は韓国のことも大好きだし。それに、2人のラップを聴いていて、お互いへの思いのようなものも伝わってきたので、これこそ一緒に作る意味がある曲だな、と思いました。生半可じゃないラップがすごいスピードで返ってきて、改めてすごいなと思いましたね。

SALU こういう国と国との話って、気軽に話題にできることではないのかもしれないですけど、でも、音楽ってそのためにあると思うんですよ。今回“Two Dawgz and The Ape feat. Paloalto & SALU”がスムーズに出来たのは、僕らが直感で一緒に音楽を作れた、この3人でやりたいと思えたということで、それ自体が、この曲で言っていることの証明だったんじゃないかな、と思います。

TeddyLoid そうですね。僕はそれをすぐにPaloalto氏に送ったんですけど、SALUくんが入れてくれたサビのところに、次は彼が2人でユニゾンになるように声を入れてくれて。海を越えての作業でしたけど、本当に3人でセッションしているような感覚でした。

——SALUさん、Paloaltoさんのラップに、Teddyさんのウォブルベースも絡み合っていて、まさに3人が一緒にセッションをしているような雰囲気ですね。

SALU そうですね。Paloaltoさんのラップを受けるときにも、「同じフロウで同じことを言う」「同じフロウで違うことを言う」「違うフロウで同じことを言う」「違うフロウで違うことを言う」と、色んな方法があると思うんですけど、今回はお互い違うフロウで違うことを言っているのに、同じことを表現しているような感覚があって。

サビでもTeddyくんが僕が送った声の素材を使って色々とエディットしてくれて、そこにPaloaltoさんの声も混ぜてくれました。3人が直接会って作業していたわけではないのに、それぞれがそれぞれを音の中で意識して、自分のアプローチで曲に向かっていて。実際に作業をした時間軸や場所はずれているんですけど、音の中では同じところに立っているような感じがすごくしました。

TeddyLoid 『SILENT PLANET』シリーズはコラボレーションに重きを置いているプロジェクトなので、SALUくんもそんな風に感じてくれたことが本当に嬉しいですね。僕は僕で、2人が送ってくれたテイクに色々なエディットを加えていきました。

——完成形は、最初からだいぶ変わっているんですか?

SALU 変わっているというよりも、もっと無駄がなくなって、研ぎ澄まされていった感じですね。完成形を聴いて、Teddyくんが僕が送ったラップに寄り添って、下から押し上げてくれたような感覚がありました。最初の時点でも、ある程度Teddyくんが起伏を作って、ガイドをしてくれていたからこそ僕もリリックを書きやすかったんだと思いますけど、それで僕が「こうだろう」と思って送ったものに、「そうくるならこうしよう」とTeddyくんがさらに音を変化させてくれて。その過程で曲から余計なものがどんどんなくなって、ピュアなものになっていったと思います。

——レコーディングを通して、お互いのどんなところにすごさを感じましたか?

TeddyLoid 僕はこれまで色んな人と曲を作ってきましたけど、まず、SALUくんが提案してくれた曲のテーマにすごさを感じましたし、彼のフロウのオリジナリティが本当に魅力的だと思いました。オートチューンを使ったラップって今はすごくポピュラーになっていると思いますけど、SALUくんのラップには聴いた瞬間に持っていかれる力があって、「何だこれ?!」と思ったんですよ。「このままだとトラックが負けているな」と思って、トラックを作り直したりもしました。

SALU 僕も色んなプロデューサーの方と曲を作ってきましたけど、Teddyくんは柔軟性が高いというか、声を入れる人に合わせるのがすごく上手い人だと思いました。きっとTeddyくんには最初から完成形がある程度見えていて、僕らを導いてくれてると思うんですけど、それを「導いている」と思わせないんですよ。僕が自分でやっていると感じるぐらい、主張を無理やり押し付けたりしないし、存在感をわざと消してくるんです。Teddyくん自身、自分の信念もすごく持っている人だと思うんですけど、いい意味でそれを押し付けない。

たとえば、無理やり手を引かれても、行きたくないところには行きたくないじゃないですか。Teddyくんとの作業の場合は、自分が足を出して「これはすごくいい道だ」と思っていたら、実はTeddyくんがガイドしてくれていた、という感覚でした。だから、今回のリリックも、Teddyくんが早く書かせてくれた、ということだと思います。そういうことってなかなかないんですよ。アーティストの魅力を引き出すのが上手な人なんだな、と思いました。

TeddyLoid トラックを作る段階で、最終形がどんな風になるのかある程度は分かっているんです。でも、SALUくんのように個性があって、セルフプロデュースができる、凄みのあるラッパーにそうやって言ってもらえるのは、本当に嬉しいことですね。

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——三者三様の個性がお互いに引き立て合って、いいコラボレーションになったのですね。今回のコラボレーションが実現したことは、『SILENT PLANET』シリーズにとっても、すごく重要なことだったんじゃないですか?

TeddyLoid そうですね。『SILENT PLANET』シリーズを通じて出会った仲間たちが集結したアルバムに、この3人が垣根を越えて集まったことは、すごく意味のあることだと思います。SALUくんが歌ってくれた「僕らで変える」というリリックも含めて、本当にいいものになったと思っていますね。

——改めて、今回の制作期間を振り返ってもらえますか? 2人にとっては、どんな経験になったでしょうか。

SALU 今回の作業は、余計なことが全然なくて、すごく早かったんですよ。だから、すぐに(アルバム)1枚できちゃいますよ(笑)。

TeddyLoid 僕はコラボレーションするときに、相手に無理やり自分のエゴを押し付けたりするのは嫌なんですよね。それよりも、お互いのよさを引き出しあうような、尊重し合うようなものにしたいと思うんです。実際、SALUくんのラップは素晴らしいものでした。

——最近は、たとえば「88Rising」のように、国境を越えて価値観で繋がる共同体のような場所から音楽が生まれていく機会が増えていますよね。今回のコラボレーションにも、まさに同じような雰囲気を感じました。

TeddyLoid 僕自身、この数年間は1か月に1回ほどDJをするためにアメリカを筆頭に海外の各地に向かうような生活をしていたんですけど、そこで感じたのも同じようなことで、やっぱり、音楽だからこそ場所も言葉も関係ないと思うんです。そういう意味でも、すごくよかったと思いますね。

SALU 自分が普段接している人だけじゃなくて、そうやって色んな人と音楽を共有できることって、単純に「楽しいな」って思うんですよ。たとえば、道を歩いていても、毎日同じ道を歩くだけじゃなくて、色んな道や、知らない街に行きたくなるじゃないですか? だから、そんな感覚で色んな人と音楽をやっていきたいですね。今はインターネットがあって、国境をすぐ越えられる部分もありますけど、きっかけがないとなかなか難しいことでもあるので、今回Teddyくんがこうやって誘ってくれて、すごく楽しかったですね。

photo by Ryoskrr

RELEASE INFORMATION

『SILENT PLANET: RELOADED』

TeddyLoid×SALU対談|Paloaltoを迎えた日韓コラボの経緯と制作背景 music181019_teddyloid_2-1200x1200
11月14日(水)発売 ※配信リリースは11月16日(金)
NKCD-6849/¥2,800+税

『SILENT PLANET: INFINITY』

TeddyLoid×SALU対談|Paloaltoを迎えた日韓コラボの経緯と制作背景 music181019_teddyloid_1-1200x1200

11月28日(水)発売 ※配信リリースは11月30日(金)
NKCD-6850/¥2,800+税

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杉山仁

杉山仁

ライター

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