––––「楽しい」「踊れる」というのはダンス・ミュージックを連想させるのと同時に、音楽の根本的な魅力=演奏して/聴いて単純に楽しいということに原点回帰していくようでもあります。この辺りについてはどう思いますか?
ファリス 音楽っていうものは結局自己表現に尽きるわけだから、全ての音楽がそういうものだし、僕らのこれまでの作品だってずっとそうだと思う。ただ、そういう意味で言うと、確かにホラーズって、デビューした頃からライヴでの表現を最も重視してるバンドなんだ。ライヴで観客にエネルギーを放出して、またみんなからエネルギーが跳ね返ってくる。そんな感覚が僕らにはあって、これは前作『スカイング』を出してからのツアーでも感じたことだった。「僕らにとってのバンド・サウンド作りって、結局はそのためのものなんだな」ってね。だからこそ、このアルバムに込めるのは、自分たちを突き動かす熱いもの、何か新しいものを見つけた時の興奮じゃないといけなかった。もしかしたら、そういうことがこの作品の雰囲気に関係しているのかもしれないね。
––––このタイミングでダンス・レコードを作るというと、どうしても気になるのですが、昨年UKでは「ビッグ・ビート以来」とも言われるダンス・ミュージックのムーヴメントが起こり、ディスクロージャーやそのゲスト・ヴォーカリストたちが注目を集めました。たとえば、こうしたシーンの雰囲気も、何かしらの形で影響を与えた部分があるでしょうか。
2人 いやぁ、それはどうかな……(考え込む)。
––––必ずしも好意的なものでなくても大丈夫ですよ。
リース その話に唯一賛同できる部分があるとすれば、今の僕らがギター・ミュージックよりもエレクトロニック・ミュージックにバンドの可能性の広がりを感じてる、というのはあると思う。たとえば、DJは曲をどんどん繋げて、トラックごとにオーディエンスの感覚をハイにしていくよね? 彼らは曲ごとに熱をずっと持続させて、それをさらなる高みにもっていくんだ。このアルバムでは、そんな発想に影響を受けた部分はあると思う。
––––では、あなたたちが実際に影響を受けたダンス・ミュージックは、どういうものだったのでしょう?
リース たとえば、ホアン・アトキンス。彼は初期のデトロイト・テクノの人だけど、エレクトロニック・ミュージックを通して「未来を見てる」ことに共感するんだ。でも、こうやって名前を挙げることでは、なかなか僕らの感じていることを正確に伝えられないんだよね……。取材を受けていると、みんな「アーティストを何組か選んでください」って言うんだけど(笑)。ホアン・アトキンスにしたって、テクノだけを聴いてあの音楽をやっていたわけじゃない。ソフト・セルやヒューマン・リーグ、インダストリアルなものからの影響もあったはずだし、ヒップホップ、シュガーヒル・レコード、ジェームス・ブラウンといったブラック・ミュージックからの影響もあったと思う。そして僕らに置き換えてみても、メンバーそれぞれが、そういう影響源の広がりを持っているわけだしね。
ファリス その中にはもちろん、エレクトロニック・ミュージックだけでなくて、サイケデリックなものもある。シド・バレットがいた頃のピンク・フロイドなんてまさにそうで、サイケデリックというキーワードは、デビュー以前から現在までずっとこのバンドにある要素だからさ。
ホアン・アトキンス – “Techno City”